Heart to Heart/Edward=Levainçois
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もやもやする胸を持てあましたまま、Princessはポスンとソファに座った。
賑やかしにつけたテレビの音がやっぱり耳障りで、リモコンのオフスイッチを押し込む。
とたんに広がる、深夜の静寂。
Princessは宙を見上げた。
低い天井。
シャンデリアなんか、どこにもない。
これが、育ちの違いというものなのだろう。
場違いのオペラハウス、場違いのレストラン。
まぶしいほどのナタリーの美しさと教養の高さを思い浮かべれば、
何もかも自分はエドワードに不釣り合いで惨めだった。
好きな気持ちだけではどうにもならない、厚い壁を感じていた。
テーブルのマグカップの縁にかけたティーバッグを、上下に揺らす。
香りすらしない安っぽい色水を口に流し込むと、笑いたくなった。
こんな紅茶をエドワードに出したら、さぞ驚くだろう。
……私がどこかのプリンセスだったら、よかったのに。
そうしたら、もっと堂々と彼を好きと言える。
けれど現実は願いもむなしく、自分は自分でしかない。
ふいに鳴った着信音にスマホを手にとってみれば、エドワードだった。
引き止めるエドワードの声を背に、勝手にレストランを出てしまったさっきを思い出すと、すぐには電話にでられなかった。
何回目かのコールのあとに、人差し指を滑らせる。
「Princess? 僕だよ。今日は本当に申し訳なかった。キミをひとりにしてしまって」
愛する人の甘い声に、まぶたの奥がじわりと熱くなる。
「エド……」
わだかまりは、早いうちになくしてしまったほうがいい。
「……エドと会うのが久しぶりだったので、もっと一緒にいたかったです」
Princessは正直な気持ちをエドワードに告げた。
もうひとつ、気がかりだったことも。
「あの、このところ、エドがお休みの時に用事があるっておっしゃっていたのは」
Princessの心臓がどきどきと音をたてる。
一呼吸をおいた。
「ナタリーさんと過ごしていたから、ですか」
非難していると受け取られないように、できるだけ穏やかに尋ねる。
「ああ、そうだよ」
「……!」
ためらいもなく、さらりと答えたその言葉が何を意味しているのか、エドワードはわかっているのだろうか。
予測していた返事が返ってきたに過ぎないと、自身を落ち着かせながらPrincessは続けた。
「どうして……ですか」
少しだけ声が震える。
問いかけが、彼の恋人としておかしいとは思えない。
時間ができれば会いたいとエドワードに思われるのは、自分のほうではないのか。
エドワードは自分より、ナタリーに会いたいと思うのだろうか。
それなら、もう、私たちの結論はでている。
「どうして? ……うん、ナタリーから頻繁に電話をもらってね。用事もないのに断るのも失礼だと思っていたら、結局、休みの日は一緒にいることになってしまった」
Princessの質問に、きょとんとした表情で話すエドワードが目にうかぶ。
彼の優しさを、穏やかさを愛していた。
でもそれは、決してPrincessだけに与えられるものではなかった。
はじめからわかっていたことだ。
だれにでも等しく向けられる笑みと、優しい言葉。
わかっていたけれど。
恋人から与えられる「特別感」をエドワードに望むのは我がままなのだろうか。
エドワードの気持ちが自分にあると知ってしまったから、欲張りになってしまったのだろうか。
Princessは混乱した。
マグカップのふちをゆっくりと指先でなぞる。
「エド、2月14日、平日ですけど夜、会えませんか。」
Princessは、ためらいがちに誘った。
このままでは、苦しすぎる。
エドワードの言っていることは、間違いではない。
彼にだって男女問わず、付き合いはあるだろう。
でも、恋はどちらかの我慢で成り立たせてはいけないのだ。
その先には必ず別れが待ち受けていることをPrincessは知っている。
きちんとエドワードに話をすれば、胸に積もる[#ruby=澱_#おり]を取り除く何かが見つかるかもしれない。
「14日? 夜ならかまわないよ。仕事が終わったら連絡するね」
……私たちは大丈夫。彼は、自分を愛していると言ってくれた。
エドワードの真摯な想いに賭けると決めて、Princessはスマホを握り締め、深く、うなずいた。
賑やかしにつけたテレビの音がやっぱり耳障りで、リモコンのオフスイッチを押し込む。
とたんに広がる、深夜の静寂。
Princessは宙を見上げた。
低い天井。
シャンデリアなんか、どこにもない。
これが、育ちの違いというものなのだろう。
場違いのオペラハウス、場違いのレストラン。
まぶしいほどのナタリーの美しさと教養の高さを思い浮かべれば、
何もかも自分はエドワードに不釣り合いで惨めだった。
好きな気持ちだけではどうにもならない、厚い壁を感じていた。
テーブルのマグカップの縁にかけたティーバッグを、上下に揺らす。
香りすらしない安っぽい色水を口に流し込むと、笑いたくなった。
こんな紅茶をエドワードに出したら、さぞ驚くだろう。
……私がどこかのプリンセスだったら、よかったのに。
そうしたら、もっと堂々と彼を好きと言える。
けれど現実は願いもむなしく、自分は自分でしかない。
ふいに鳴った着信音にスマホを手にとってみれば、エドワードだった。
引き止めるエドワードの声を背に、勝手にレストランを出てしまったさっきを思い出すと、すぐには電話にでられなかった。
何回目かのコールのあとに、人差し指を滑らせる。
「Princess? 僕だよ。今日は本当に申し訳なかった。キミをひとりにしてしまって」
愛する人の甘い声に、まぶたの奥がじわりと熱くなる。
「エド……」
わだかまりは、早いうちになくしてしまったほうがいい。
「……エドと会うのが久しぶりだったので、もっと一緒にいたかったです」
Princessは正直な気持ちをエドワードに告げた。
もうひとつ、気がかりだったことも。
「あの、このところ、エドがお休みの時に用事があるっておっしゃっていたのは」
Princessの心臓がどきどきと音をたてる。
一呼吸をおいた。
「ナタリーさんと過ごしていたから、ですか」
非難していると受け取られないように、できるだけ穏やかに尋ねる。
「ああ、そうだよ」
「……!」
ためらいもなく、さらりと答えたその言葉が何を意味しているのか、エドワードはわかっているのだろうか。
予測していた返事が返ってきたに過ぎないと、自身を落ち着かせながらPrincessは続けた。
「どうして……ですか」
少しだけ声が震える。
問いかけが、彼の恋人としておかしいとは思えない。
時間ができれば会いたいとエドワードに思われるのは、自分のほうではないのか。
エドワードは自分より、ナタリーに会いたいと思うのだろうか。
それなら、もう、私たちの結論はでている。
「どうして? ……うん、ナタリーから頻繁に電話をもらってね。用事もないのに断るのも失礼だと思っていたら、結局、休みの日は一緒にいることになってしまった」
Princessの質問に、きょとんとした表情で話すエドワードが目にうかぶ。
彼の優しさを、穏やかさを愛していた。
でもそれは、決してPrincessだけに与えられるものではなかった。
はじめからわかっていたことだ。
だれにでも等しく向けられる笑みと、優しい言葉。
わかっていたけれど。
恋人から与えられる「特別感」をエドワードに望むのは我がままなのだろうか。
エドワードの気持ちが自分にあると知ってしまったから、欲張りになってしまったのだろうか。
Princessは混乱した。
マグカップのふちをゆっくりと指先でなぞる。
「エド、2月14日、平日ですけど夜、会えませんか。」
Princessは、ためらいがちに誘った。
このままでは、苦しすぎる。
エドワードの言っていることは、間違いではない。
彼にだって男女問わず、付き合いはあるだろう。
でも、恋はどちらかの我慢で成り立たせてはいけないのだ。
その先には必ず別れが待ち受けていることをPrincessは知っている。
きちんとエドワードに話をすれば、胸に積もる[#ruby=澱_#おり]を取り除く何かが見つかるかもしれない。
「14日? 夜ならかまわないよ。仕事が終わったら連絡するね」
……私たちは大丈夫。彼は、自分を愛していると言ってくれた。
エドワードの真摯な想いに賭けると決めて、Princessはスマホを握り締め、深く、うなずいた。