ココロ・コネクト/Joshua・Lieben
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またオニギリショップに行こうと約束をしておきながら、城から出られない日々が続くことになろうとは予想だにしなかった。
頻繁に外出をする俺たちを狙う動きがあるというのだ。
極秘に調べさせたところ、どうやらネルヴァンとドレスヴァンの友好関係を快く思わない一味がいるらしい。
Princessのレンタルの期限……いや、この言い方はやめよう。
Princessとの別れの日が近づいているのに、無為に城にいるだけの週末が続いて、俺は少し焦っていた。
やがて来るその日のために、Princessにたくさんの思い出を残したかった。
たとえ、忘れ去られたとしても、ほんのひとかけらでも、彼女の記憶に俺という人間の一片が残せたらと、強く願った。
城の中でのほとんどの時間を、Princessは図書室で過ごすようになった。
彼女が自室にいないとき、俺はその足で図書室に向かう。
その日もPrincessは、図書室のソファに腰掛けて、本に視線を落としていた。
「勉強熱心だな」
俺が声をかけると、Princessは顔を上げて花が咲いたように笑った。
「ジョシュア様! もう、ご公務はおわったんですか。一緒にいられますか」
最近のPrincessは、留守番をしている子どもみたいに、ひどく俺を求める。
残された時間が少ないことを、彼女もわかっているのだ。
そんなPrincessが、とてつもなく……愛おしい。
Princessは、腰を浮かせてソファの片側によると、空いた側をポンポンと叩いて俺に座るようにと促してくる。
「外に出られなくてつまらないだろう」
そっとPrincessの髪に手を伸ばしてなでると、彼女は首を横にふった。
「いいえ。本がとても楽しくて」
「そうか。本を読むとは感心だな。勤勉さはドレスヴァンで生きるうえで最も重要だといわれている資質のひとつだ」
「ありがとうございます。私、記憶は消去されてしまうのですが、学習機能は蓄積されるんですよ。次にも活かせ……あ……」
Princessは、自ら放った「次」という言葉に驚いたように目を見開いて、すぐに唇を噛みしめた。
「……」
「……」
俺たちは、黙りこくった。
悲しみに震える胸の内は、きっとふたり同じと、信じたい。
「ところで、今日は何を読んでいる」
刹那な空気を振り払いたくて、無理やり話題を変える。
時間は過ぎるものだ。望もうと、望むまいと。
Princessもまた、変えた話題にするりと乗ってきた。
それも、利口な彼女の俺への気遣いなのだろう。
Princessは、もったいぶるみたいに咳払いをし、深く座りなおすと同時に閉じた本を背中に隠した。
「何を読んでいるかは、恥ずかしいから秘密です」
「恥ずかしい?」
「あ、でも、ジョシュア様の持ってる恥ずかしい本とは違いますよ」
Princessが、キリリと五指をそろえた否定の手のひらを俺に向ける。
「なっ……お、俺は、恥ずかしい本など持っていない!」
「どうでしょうか、ジャンさんに聞いてみようかな」
ツンと唇をとがらせて顎をあげるPrincessの得意げな顔は、いつもの優しい彼女とは違う魅力があった。
どんなPrincessにも惹きつけられる。
「お前まで俺をからかって。その本を見せろ!」
俺はPrincessの肩を軽く引いて、本に手を伸ばした。
Princessも負けじと本を守ろうとする。
「きゃっ、やめてください、ジョシュア様!」
笑いながら見せろ、嫌だを繰り返し、もみ合った俺たちはやがて、ソファに俺がPrincess組み敷く格好で止まった。
「俺の勝ちだぞ、Princess。さあ、本を見せてみろ」
「もうっ、
くすくすと笑うPrincessの顔が、至近にあった。
互いにひとしきり笑ったあとの、沈黙。
「Princess……」
「ジョシュア……さま……」
俺たちはまなざしを交し合った。
両手でPrincessの頬を包むと、そっと、唇を重ねる。
甘やかな唇は、ついばむキスを落とすごとに次第にひらき、俺の深い口づけを求めてくる。
Princessが望むどんなものでも、与えてやりたい。
キスが欲しいのならば、夜明けまで――
遠く、森のふくろうが、更ける夜のしじまを縫って鳴く。