ココロ・コネクト/Joshua・Lieben
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「あれはなんだ? 黒い石のようなものを持っていたが」
「たぶん、ライスボールですね。オニギリといわれている東洋の食べ物です。
ライスの中に具を入れて握ってから、海草を干した、ノリという名前の黒いシートでくるむものが一般的なようです」
「なるほど。お前は、物知りだな」
「百科事典、20か国の語学辞典、他にもいろいろな分野の最新の論文がここに」
女は、苦笑いで自分のこめかみを指差した。
機械の自分を好いていない様子の女に、データとして詰め込まれた知識の量を褒めるのも何か違う気がして、俺は口をつぐんだ。
「あ、ジョシュア様、あそこのオニギリショップで買えるようですよ。買ってみますか」
女が数メートル先のこぢんまりとしたオリエンタル風の店を指差した。
行列ができているものの周りが早いようで、次々と小さな袋を抱えた客が軒先から離れていく。
「そうだな。並んでみるとしよう」
俺と女はひとつずつのオニギリを買って、公園のベンチに並んで腰掛けた。
昼に近い太陽は高く、汗ばむほどの陽気だったが、緑の葉を広げた大樹の木陰は涼やかだった。
「いただきます!」
女がパチンと両手を合わせてから袋をまさぐり、オニギリを取り出した。
「んっ、おいしーっ」
ためらわず、一気に黒いかたまりにかぶりつき、もぐもぐと口を動かしている女の様を見つめる。
それにしても、不思議なことだらけだ。
「味覚はあるのか?」
「あります。おいしいですよ、ジョシュア様も、ほら、食べてみてください」
女が俺に、もうひとつのオニギリを差し出した。
「あ、ああ」
黒い食べ物というのは、若干、抵抗を感じる。
しかし、一口、口に入れると、ふたくち、みくちと止められなくなり、あっという間に食べ終えてしまった。
「これはうまい。絶妙な塩加減と、海の香りがするノリと、それにこのウメという実。くせになりそうだ」
「ですよね」
女がうなずいた。
「ところでお前、食べ物など口にいれていいのか」
おいしそうにオニギリをほおばる女を眺めて、ふと、ジャンに、「身体に穴は3つ」と言われたことを思い出した。
要するに、出どころがない、ということだ。
「ご心配には及びません。私たちヒューマノイドはどうしても人間と食事をする機会が多いですからね。
食べる機能はあります。お腹に小さい圧縮パックがあって、いっぱいになると取りだして捨てます」
「ほう。興味深い。見せてみろ」
「い、いやですよ。身体の中を見せるなんて! ジョシュア様って、案外エッチですね」
「な、なにっ!」
女が腕で身を包むようにして、俺から視線をそらした。
俺もきっと、顔が赤い。
「すまん。そんなつもりでは……」
「もう。ジョシュア様ったら」
ゆっくりと俺に目線を戻した女の瞳が、笑いを含んでいる。
俺たちはいつの間にか視線を絡ませ、微笑みあっていた。
そよかな風が渡る。
初夏の陽は木々の葉を通り抜けて、女の頬に光の水玉模様を作った。
「肌が白いのに、日焼けをしてしまいそうだな」
自然に頬に手が伸び、あと数ミリで指先が触れる距離になって俺は慌てて指をひっこめた。
何を言っているんだ、俺は。
コイツは、ロボットだ。
そんなもの、塗装次第でいくらでも……
急に押し黙った俺を、女がくるくると丸い瞳を向けて覗き込んでくる。
まなざしは、俺のいだく警戒をまったく疑わない無垢さ。
「ジョシュア様? どうしました、大丈夫ですか」
「あ、ああ。なんでもない。ところで、お前に名前はあるのか?」
「はい、Princessと申します」
Princessは名前を聞かれたのがよほど嬉しいのか、空に細い指を伸ばしてアルファベットを綴ってみせた。
「たぶん、ライスボールですね。オニギリといわれている東洋の食べ物です。
ライスの中に具を入れて握ってから、海草を干した、ノリという名前の黒いシートでくるむものが一般的なようです」
「なるほど。お前は、物知りだな」
「百科事典、20か国の語学辞典、他にもいろいろな分野の最新の論文がここに」
女は、苦笑いで自分のこめかみを指差した。
機械の自分を好いていない様子の女に、データとして詰め込まれた知識の量を褒めるのも何か違う気がして、俺は口をつぐんだ。
「あ、ジョシュア様、あそこのオニギリショップで買えるようですよ。買ってみますか」
女が数メートル先のこぢんまりとしたオリエンタル風の店を指差した。
行列ができているものの周りが早いようで、次々と小さな袋を抱えた客が軒先から離れていく。
「そうだな。並んでみるとしよう」
俺と女はひとつずつのオニギリを買って、公園のベンチに並んで腰掛けた。
昼に近い太陽は高く、汗ばむほどの陽気だったが、緑の葉を広げた大樹の木陰は涼やかだった。
「いただきます!」
女がパチンと両手を合わせてから袋をまさぐり、オニギリを取り出した。
「んっ、おいしーっ」
ためらわず、一気に黒いかたまりにかぶりつき、もぐもぐと口を動かしている女の様を見つめる。
それにしても、不思議なことだらけだ。
「味覚はあるのか?」
「あります。おいしいですよ、ジョシュア様も、ほら、食べてみてください」
女が俺に、もうひとつのオニギリを差し出した。
「あ、ああ」
黒い食べ物というのは、若干、抵抗を感じる。
しかし、一口、口に入れると、ふたくち、みくちと止められなくなり、あっという間に食べ終えてしまった。
「これはうまい。絶妙な塩加減と、海の香りがするノリと、それにこのウメという実。くせになりそうだ」
「ですよね」
女がうなずいた。
「ところでお前、食べ物など口にいれていいのか」
おいしそうにオニギリをほおばる女を眺めて、ふと、ジャンに、「身体に穴は3つ」と言われたことを思い出した。
要するに、出どころがない、ということだ。
「ご心配には及びません。私たちヒューマノイドはどうしても人間と食事をする機会が多いですからね。
食べる機能はあります。お腹に小さい圧縮パックがあって、いっぱいになると取りだして捨てます」
「ほう。興味深い。見せてみろ」
「い、いやですよ。身体の中を見せるなんて! ジョシュア様って、案外エッチですね」
「な、なにっ!」
女が腕で身を包むようにして、俺から視線をそらした。
俺もきっと、顔が赤い。
「すまん。そんなつもりでは……」
「もう。ジョシュア様ったら」
ゆっくりと俺に目線を戻した女の瞳が、笑いを含んでいる。
俺たちはいつの間にか視線を絡ませ、微笑みあっていた。
そよかな風が渡る。
初夏の陽は木々の葉を通り抜けて、女の頬に光の水玉模様を作った。
「肌が白いのに、日焼けをしてしまいそうだな」
自然に頬に手が伸び、あと数ミリで指先が触れる距離になって俺は慌てて指をひっこめた。
何を言っているんだ、俺は。
コイツは、ロボットだ。
そんなもの、塗装次第でいくらでも……
急に押し黙った俺を、女がくるくると丸い瞳を向けて覗き込んでくる。
まなざしは、俺のいだく警戒をまったく疑わない無垢さ。
「ジョシュア様? どうしました、大丈夫ですか」
「あ、ああ。なんでもない。ところで、お前に名前はあるのか?」
「はい、Princessと申します」
Princessは名前を聞かれたのがよほど嬉しいのか、空に細い指を伸ばしてアルファベットを綴ってみせた。