ココロ・コネクト/Joshua・Lieben
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返す言葉が見つからない。
俺とジャンの間に、突然、奇妙な空気が流れた。
もちろん、俺たちは……いや、俺たちってなんだ?
そのような関係ではない。
思考回路がショート寸前にまで熱をもつ。
俺は短く息を何度も吐いて、目覚めたときからこの瞬間までの出来事のわけを整理しようと努めた。
メイドたちが、向かい合って熱く……メイドが想像しているより別の意味でなのだが……見つめあう俺たちを見ないフリをして、そそくさと脇を通り抜けていく。
「そういうことか。わかったぞ。お前は『お前の』誤解をときたくて、俺にロボットをつけたわけだな」
俺はジャンにきっぱりと言った。
誰にでも公平で偏見のない国を目指しているが、それでも同性愛はまだまだマイノリティだった。
後ろ指をさされ、誹謗中傷の対象になるのも珍しくない。
「いえ、そうとらえられてしまうと、私もつらいのですが……」
複雑な感情をいり混ぜたジャンの顔がかえって信用ならなかった。
……ウソつけ。俺はだまされないぞ。
お前はメイドにモテるからな。
男が好きだとうわさがたったら不都合なんだろ?
だったら、俺でなくともお前がロボットと付き合っているふりをすれば、ことがすむではないか。
「で、俺は? 3か月間、そのロボットといちゃいちゃして世間を安心させればいいのか? 3か月後はどうなるんだ」
やぶれかぶれで俺は尋ねた。
別に、ロボットとの恋愛ごっこを承諾したわけじゃないのに、ジャンはパッと笑顔を見せた。
「心配要りません。レンタル期間が過ぎた午前0時に、メモリは自動消去となります。
ジョシュア様との毎日も、ジョシュア様の名前さえも忘れます。付きまとわれることもございませんし、ジョシュア様にご迷惑がかかることは一切ありません」
「……ふん。にしても、突然女を隣に寝かせることはあるまい。事前に報告するなりなんなり……」
「いえいえ、そこ、重要なんです」
ジャンが、人差し指を立てて見せた。忌々しいことに、主導権をジャンに握られつつある気がする。
「彼女は、目覚めて最初に目に入った動くものを主人として認識します。ですから、ジョシュア様のベッドに寝かさざるを得なかったのです」
ジャンの説明と弁解に、俺は片方の口角を上げた。
「まるで、鳥の刷り込みだな」
嫌味しか出てこないこの口は、ジャン、お前の企みのせいだ。
「そういえばそうですね」
楽しそうにさえ見えるジャンの顔が気に食わない。
俺のほうは、すこぶる不愉快だ。
その時ジャンが、腕時計を確認して、小さく「あっ」と声を上げた。
「いけません。もう彼女が起きます。6時ちょうどから23時59分59秒までの意識設定になっていますから。
早くお部屋にお戻りください。他の者が先に視界に入ってしまったら面倒です。そうだ、それから」
ジャンは言葉を区切ると、さっきまでさんざん声高に話していた声音を低く抑えて、身をかがめるようにした。
「ジョシュア様、念のため、お知らせしておきますが、彼女の『穴』は3箇所ですから」
「???」
ジャンは右手の指を親指、人差し指、中指と、一本ずつ立ててみせた。
「鼻と、耳と、口のみです。他はありません。よろしいですか、ありませんよ?
あ、でも、どうしてもでしたら、口はよろしいかと。口腔内はかなり精巧、かつ、清潔に作られているらしく……」
ジャンの言わんとすることがじわじわとわかってくると、俺は耳までを熱くした。
なんで俺は、朝っぱらから卑猥な忠告を真顔でふんふん聞いているのだ。
バカにするのも大概にしろ。
「くだらん! 相手はロボットだ。万にひとつでも、ソノ気になるわけがなかろう」
俺は言い捨て、くるりとジャンに背を向けると、足早に自室へと向かった。
さすがに、扉を開けるのには勇気が必要だった。
俺は、廊下を数回行きつ戻りつしてから、ドアレバーに手をかけ、押し下げ、音をたてないように扉を引き、隙間から部屋をのぞいた。
すると女がちょうど起きだし、窓際に寄ってカーテンを開けたところだった。
初夏のドレスヴァンは晴天率が高く、朝であっても陽射しは十分に明るい。
「ん、ん~! いい天気!」
女は、両手指を組んだ腕を頭の上に上げると、爪先立ちになって伸びをする。
俺は、俺の部屋にいる女という存在に、違和感を覚えざるをえなかった。
かける言葉が見つからず、無言で扉を全開にすると、気配を感じたのか、女がゆっくりと振り向く。
「あ、失礼しました。貴方様が私のご主人様ですね?」
女は俺を視界にとらえてからすぐに、うつむきがちになって頬を染めた。
「いろいろと至らないところもあるかとは思いますが、よろしくお願いします」
俺は返事もせず、あっけに取られたまま、ただ、瞬きばかりをしていた。
コイツが本当にロボット?
外見はもちろん、しぐさのなめらかさといい、声の質感といい、女は、生身の女と寸分違わなかった。
俺とジャンの間に、突然、奇妙な空気が流れた。
もちろん、俺たちは……いや、俺たちってなんだ?
そのような関係ではない。
思考回路がショート寸前にまで熱をもつ。
俺は短く息を何度も吐いて、目覚めたときからこの瞬間までの出来事のわけを整理しようと努めた。
メイドたちが、向かい合って熱く……メイドが想像しているより別の意味でなのだが……見つめあう俺たちを見ないフリをして、そそくさと脇を通り抜けていく。
「そういうことか。わかったぞ。お前は『お前の』誤解をときたくて、俺にロボットをつけたわけだな」
俺はジャンにきっぱりと言った。
誰にでも公平で偏見のない国を目指しているが、それでも同性愛はまだまだマイノリティだった。
後ろ指をさされ、誹謗中傷の対象になるのも珍しくない。
「いえ、そうとらえられてしまうと、私もつらいのですが……」
複雑な感情をいり混ぜたジャンの顔がかえって信用ならなかった。
……ウソつけ。俺はだまされないぞ。
お前はメイドにモテるからな。
男が好きだとうわさがたったら不都合なんだろ?
だったら、俺でなくともお前がロボットと付き合っているふりをすれば、ことがすむではないか。
「で、俺は? 3か月間、そのロボットといちゃいちゃして世間を安心させればいいのか? 3か月後はどうなるんだ」
やぶれかぶれで俺は尋ねた。
別に、ロボットとの恋愛ごっこを承諾したわけじゃないのに、ジャンはパッと笑顔を見せた。
「心配要りません。レンタル期間が過ぎた午前0時に、メモリは自動消去となります。
ジョシュア様との毎日も、ジョシュア様の名前さえも忘れます。付きまとわれることもございませんし、ジョシュア様にご迷惑がかかることは一切ありません」
「……ふん。にしても、突然女を隣に寝かせることはあるまい。事前に報告するなりなんなり……」
「いえいえ、そこ、重要なんです」
ジャンが、人差し指を立てて見せた。忌々しいことに、主導権をジャンに握られつつある気がする。
「彼女は、目覚めて最初に目に入った動くものを主人として認識します。ですから、ジョシュア様のベッドに寝かさざるを得なかったのです」
ジャンの説明と弁解に、俺は片方の口角を上げた。
「まるで、鳥の刷り込みだな」
嫌味しか出てこないこの口は、ジャン、お前の企みのせいだ。
「そういえばそうですね」
楽しそうにさえ見えるジャンの顔が気に食わない。
俺のほうは、すこぶる不愉快だ。
その時ジャンが、腕時計を確認して、小さく「あっ」と声を上げた。
「いけません。もう彼女が起きます。6時ちょうどから23時59分59秒までの意識設定になっていますから。
早くお部屋にお戻りください。他の者が先に視界に入ってしまったら面倒です。そうだ、それから」
ジャンは言葉を区切ると、さっきまでさんざん声高に話していた声音を低く抑えて、身をかがめるようにした。
「ジョシュア様、念のため、お知らせしておきますが、彼女の『穴』は3箇所ですから」
「???」
ジャンは右手の指を親指、人差し指、中指と、一本ずつ立ててみせた。
「鼻と、耳と、口のみです。他はありません。よろしいですか、ありませんよ?
あ、でも、どうしてもでしたら、口はよろしいかと。口腔内はかなり精巧、かつ、清潔に作られているらしく……」
ジャンの言わんとすることがじわじわとわかってくると、俺は耳までを熱くした。
なんで俺は、朝っぱらから卑猥な忠告を真顔でふんふん聞いているのだ。
バカにするのも大概にしろ。
「くだらん! 相手はロボットだ。万にひとつでも、ソノ気になるわけがなかろう」
俺は言い捨て、くるりとジャンに背を向けると、足早に自室へと向かった。
さすがに、扉を開けるのには勇気が必要だった。
俺は、廊下を数回行きつ戻りつしてから、ドアレバーに手をかけ、押し下げ、音をたてないように扉を引き、隙間から部屋をのぞいた。
すると女がちょうど起きだし、窓際に寄ってカーテンを開けたところだった。
初夏のドレスヴァンは晴天率が高く、朝であっても陽射しは十分に明るい。
「ん、ん~! いい天気!」
女は、両手指を組んだ腕を頭の上に上げると、爪先立ちになって伸びをする。
俺は、俺の部屋にいる女という存在に、違和感を覚えざるをえなかった。
かける言葉が見つからず、無言で扉を全開にすると、気配を感じたのか、女がゆっくりと振り向く。
「あ、失礼しました。貴方様が私のご主人様ですね?」
女は俺を視界にとらえてからすぐに、うつむきがちになって頬を染めた。
「いろいろと至らないところもあるかとは思いますが、よろしくお願いします」
俺は返事もせず、あっけに取られたまま、ただ、瞬きばかりをしていた。
コイツが本当にロボット?
外見はもちろん、しぐさのなめらかさといい、声の質感といい、女は、生身の女と寸分違わなかった。