ココロ・コネクト/Joshua・Lieben
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目覚まし時計が鳴り始めるきっかり8分前に目が覚めるのは、いつもの習慣だった。
別に、眠っている間も気が張っているわけではない。
驚きのメカニズムで、俺の身体が時計並みに正確な時を刻んでいるだけのことだ。
けれど。
今日の寝覚めだけは違った。
寝返りを打った拍子に、肌に触れた柔らかい感触で、俺はゆっくりと重いまぶたを上げた。
視界には何かが映るものの、まだ意識は眠りの世界をさまよっている。
次第に、脳が映像が何たるかを認識し始めた。
白い肌、こぢんまりとした鼻、緩やかにカーブを描く長いまつ毛、肩で軽く巻く黒髪、ぷっくりとした唇は、少しひらいて。
……なんだ。女か。
俺は、もう一度寝返りをして女に背を向けた。
眠気の具合から、時計が目覚めのときを知らせるまであと12分はある。
朝のペースを女に乱されるとは、今日は出だしから冴えない一日だ。
俺は、ブランケットを鼻先まで引き上げる。
が、次の瞬間、跳ね起きた。
「……は? お、おんな!?」
見開かれた俺の目は、まっぴるまよりも全開になった。
何しろ、見知らぬ女がベッドの右半分に横たわって静かな寝息をたてているのだから。
誰だ、コイツは?
俺は慌てて昨夜の記憶を巻き戻した。
早く、早く、思い出せ。
だが、焦れば焦るほど、頭の回路は無駄に回って思い出せない。
とりあえず自分の下半身に手を伸ばして、下着をきちんとつけているのを確認してから息を整えた。
酔って女を連れ込んだ?
いや、酒なんか、いくら飲んだところで酔わない。
ましてや、酒のせいで理性が吹き飛んだ経験は一度もない。
それどころかゆうべは、パーティーすらない、静かな夜だったではないか。
山積みの書類にサインをし、寝室に戻ったのは午前2時を回っていたように思う。
そのあと、俺は寝支度をして、確かに、ひとりでベッドにもぐりこんだ。
確かに、だ。
じゃあ、この女は、どこから降って湧いてきたのだ。
……皆目 わからん。
とにかく、城の者が本格的に動き出す前に、裏口からでも追い出さないと大変なことになる。
「ジャン! ジャンはどこだ!」
俺はガウンを羽織ると部屋を飛び出した。
右に左にと顔を向けながら、ジャンの名を呼んで、長い廊下を行く。
それにしてもジャンは、隠れて笑いながら俺の様子を伺っているのではないかと思うくらい、肝心なときに限って見当たらない。
「はい。お呼びでございますか、ジョシュア様」
ようやく姿を現したジャンは、あくまで冷静だ。
俺は、今来た廊下の奥の、自室を指差した。
「アレはなんだ!」
「アレ?」
城の廊下は、メイドや執事が行き交い、次第に朝の慌しさをみせはじめている。
俺はいくぶん声を抑えた。
「ベッドに寝ている女だ。俺は、まったく身に覚えはないぞ」
「ああ、彼女ですね!」
「おいっ、声がでかい」
俺は危うくジャンに飛びかかって口を押さえるところだった。
なんでコイツはデリカシーがないんだ。それともわざとか?
俺がこんなに焦っているのが、わからぬはずはあるまい。
混乱しっぱなしの俺を前に、ジャンは、淡々と説明をはじめた。
「彼女は、恋愛型ヒューマノイドです。極秘裏に今日から3ヶ月のレンタル契約をしました」
レンアイガタ? ヒューマノイド?
なんのことだ。
俺は目をしばたたかせた。
「ジョシュア様」
ジャンが俺の正面に立って、真顔になる。
「国民の間で、ジョシュア様が女性に興味がない、と言われているのをご存知ですか。
このままでは、ジョシュア様の直系にあたる子どもが生まれず、弱体化したリーベン家の治めるドレスヴァンとネルヴァンの関係が対等ではなくなるのではないか、とまで」
「バカな! 女に、その……興味がないわけではない。公務に追われて恋だの愛だのに気がまわらないだけだ。お前だってわかっているだろう」
俺は、つい、声を荒げた。
たかだか国民の根拠のないうわさに、なんでロボットの恋人をあてがわれなくてはならないのだ。しかし、ジャンは引かない。
「私がわかっていたとしても無意味です。せめて女性には興味があると、国民に思い込ませ、皆を安心させてくれればいいのです。それだけではありません。ジョシュア様は」
ジャンは、間合いを詰めた。
「大変申し上げにくいのですが、ジョシュア様は、男性が好きなのだとも言われているんですよ。しかも、その相手は……私です」
「…? な、なにっ?」
別に、眠っている間も気が張っているわけではない。
驚きのメカニズムで、俺の身体が時計並みに正確な時を刻んでいるだけのことだ。
けれど。
今日の寝覚めだけは違った。
寝返りを打った拍子に、肌に触れた柔らかい感触で、俺はゆっくりと重いまぶたを上げた。
視界には何かが映るものの、まだ意識は眠りの世界をさまよっている。
次第に、脳が映像が何たるかを認識し始めた。
白い肌、こぢんまりとした鼻、緩やかにカーブを描く長いまつ毛、肩で軽く巻く黒髪、ぷっくりとした唇は、少しひらいて。
……なんだ。女か。
俺は、もう一度寝返りをして女に背を向けた。
眠気の具合から、時計が目覚めのときを知らせるまであと12分はある。
朝のペースを女に乱されるとは、今日は出だしから冴えない一日だ。
俺は、ブランケットを鼻先まで引き上げる。
が、次の瞬間、跳ね起きた。
「……は? お、おんな!?」
見開かれた俺の目は、まっぴるまよりも全開になった。
何しろ、見知らぬ女がベッドの右半分に横たわって静かな寝息をたてているのだから。
誰だ、コイツは?
俺は慌てて昨夜の記憶を巻き戻した。
早く、早く、思い出せ。
だが、焦れば焦るほど、頭の回路は無駄に回って思い出せない。
とりあえず自分の下半身に手を伸ばして、下着をきちんとつけているのを確認してから息を整えた。
酔って女を連れ込んだ?
いや、酒なんか、いくら飲んだところで酔わない。
ましてや、酒のせいで理性が吹き飛んだ経験は一度もない。
それどころかゆうべは、パーティーすらない、静かな夜だったではないか。
山積みの書類にサインをし、寝室に戻ったのは午前2時を回っていたように思う。
そのあと、俺は寝支度をして、確かに、ひとりでベッドにもぐりこんだ。
確かに、だ。
じゃあ、この女は、どこから降って湧いてきたのだ。
……
とにかく、城の者が本格的に動き出す前に、裏口からでも追い出さないと大変なことになる。
「ジャン! ジャンはどこだ!」
俺はガウンを羽織ると部屋を飛び出した。
右に左にと顔を向けながら、ジャンの名を呼んで、長い廊下を行く。
それにしてもジャンは、隠れて笑いながら俺の様子を伺っているのではないかと思うくらい、肝心なときに限って見当たらない。
「はい。お呼びでございますか、ジョシュア様」
ようやく姿を現したジャンは、あくまで冷静だ。
俺は、今来た廊下の奥の、自室を指差した。
「アレはなんだ!」
「アレ?」
城の廊下は、メイドや執事が行き交い、次第に朝の慌しさをみせはじめている。
俺はいくぶん声を抑えた。
「ベッドに寝ている女だ。俺は、まったく身に覚えはないぞ」
「ああ、彼女ですね!」
「おいっ、声がでかい」
俺は危うくジャンに飛びかかって口を押さえるところだった。
なんでコイツはデリカシーがないんだ。それともわざとか?
俺がこんなに焦っているのが、わからぬはずはあるまい。
混乱しっぱなしの俺を前に、ジャンは、淡々と説明をはじめた。
「彼女は、恋愛型ヒューマノイドです。極秘裏に今日から3ヶ月のレンタル契約をしました」
レンアイガタ? ヒューマノイド?
なんのことだ。
俺は目をしばたたかせた。
「ジョシュア様」
ジャンが俺の正面に立って、真顔になる。
「国民の間で、ジョシュア様が女性に興味がない、と言われているのをご存知ですか。
このままでは、ジョシュア様の直系にあたる子どもが生まれず、弱体化したリーベン家の治めるドレスヴァンとネルヴァンの関係が対等ではなくなるのではないか、とまで」
「バカな! 女に、その……興味がないわけではない。公務に追われて恋だの愛だのに気がまわらないだけだ。お前だってわかっているだろう」
俺は、つい、声を荒げた。
たかだか国民の根拠のないうわさに、なんでロボットの恋人をあてがわれなくてはならないのだ。しかし、ジャンは引かない。
「私がわかっていたとしても無意味です。せめて女性には興味があると、国民に思い込ませ、皆を安心させてくれればいいのです。それだけではありません。ジョシュア様は」
ジャンは、間合いを詰めた。
「大変申し上げにくいのですが、ジョシュア様は、男性が好きなのだとも言われているんですよ。しかも、その相手は……私です」
「…? な、なにっ?」
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