坂田家の日常
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十月十日なんていうけれど、実際そうかというと、そうでもない。
十カ月足らずの月日が経ち、なまえと銀八の間に男の子が誕生した。
毎日お腹に向かって「天然パーマにだけはなるなよ」と銀八が声をかけていた甲斐もなく、生まれた子の髪はまだそれほど濃くないのにゆるく跳ねていた。
生まれて間もない我が子を抱きながら「お前はかーちゃんのどこを引き継いだわけ?」なんて尋ねている。
あまりにも予想通りの展開に周囲も笑っていた。
もちろん、なまえも。
息子が生まれて1カ月。
検診でも母子共に至って健康。息子の手足も以前に増してむちむちしてきた。
小さな息子の一挙一動に二人してカワイイ可愛いとはしゃいでいた。
ある日、銀八は風呂から上がると、なまえは息子の授乳を終えて寝かしつけるところだった。
濡れた髪をタオルで拭きながらなまえのそばに近づくと、銀八の気配に気づいたなまえは振り返った。
「息子寝た?」
「うん…」
なまえの顔を覗き込むと、何やら浮かない顔をしている。
まさか、息子のことで何かあったとか?
もしかしてコレ、産後鬱とかそういうアレか?
…いやいやいや。だって息子もなまえも健康だって言ってたしィ?
…まさかどっちかの身体に何かあったとか!?
そんなことを考え、なまえに確かめた。
「…何か悩みでもあんのか?」
なまえは「うーん」と唸りながら腕に抱いた息子の顔を見つめた。
「………この子、私とどこが似てると思う?」
「……………はァ?」
顔はさも深刻そうな表情をしているのに、質問の内容は全然深刻じゃなかった。
そのくだらなさに銀八は呆気にとられ、気の抜けた返事をしてしまった。
何を言ってるんだ、とでも言いたげな声になまえは少し気分を害したようだった。
「だってこの子、銀八そっくりでしょ」
そう。
息子を一目見た人たちは皆口を揃えて「パパそっくりねえ~」と言う。
銀髪、天然パーマ。
パッと見れば明らかに銀八の子だとわかる見た目だ。
しかしあまりにもその台詞を言われすぎて、なまえは自分の要素を息子に見つけられないことを気にし始めていたのだ。
「ま…まァ、お前がコイツ産んだってのははっきりしてんだから、そんな気にしなくても…」
「銀八は一目見ればすぐわかるからいいよねー」
「だからそんな不貞腐れんなって」
「不貞腐れてませんー」
そりゃあ、コイツは俺にソックリだけどさ。
そんなことを言おうものなら、なまえはますます臍を曲げてしまうだろう。
なまえをどうなだめようか、銀八が思案していると、ふと視線を感じた。
下を見ると、なまえに抱かれて眠っていたはずの息子が目を開いてこちらを見ていた。
―――そういえば、ちゃんと起きている息子って珍しいな。
普段はほとんど起きることがなく、眠るか泣くところしか見たことが無かったのに。
そんなことを考えていると、あることに気付いた。
「あれ、息子が泣かないで起きるなんて」
小さな目を大きく開く息子を見てなまえも驚いていた。
「…はっきりわかるじゃねーか。コイツはお前の子だよ」
「え?」
銀八は息子の目じりに触れた。
ぱっちり開かれたその眼は、銀八ではなくなまえと同じ色をしていた。
「あ……」
そのことになまえも気付いたようだ。
なまえは唇を噛みしめ、泣きそうな顔をしながら息子をぎゅっと抱きしめた。
息子の小さな手がなまえの頬に触れた。
「かーちゃん泣くなってさ」
「ん……。…ありがとう、息子。…銀八」
十カ月足らずの月日が経ち、なまえと銀八の間に男の子が誕生した。
毎日お腹に向かって「天然パーマにだけはなるなよ」と銀八が声をかけていた甲斐もなく、生まれた子の髪はまだそれほど濃くないのにゆるく跳ねていた。
生まれて間もない我が子を抱きながら「お前はかーちゃんのどこを引き継いだわけ?」なんて尋ねている。
あまりにも予想通りの展開に周囲も笑っていた。
もちろん、なまえも。
息子が生まれて1カ月。
検診でも母子共に至って健康。息子の手足も以前に増してむちむちしてきた。
小さな息子の一挙一動に二人してカワイイ可愛いとはしゃいでいた。
ある日、銀八は風呂から上がると、なまえは息子の授乳を終えて寝かしつけるところだった。
濡れた髪をタオルで拭きながらなまえのそばに近づくと、銀八の気配に気づいたなまえは振り返った。
「息子寝た?」
「うん…」
なまえの顔を覗き込むと、何やら浮かない顔をしている。
まさか、息子のことで何かあったとか?
もしかしてコレ、産後鬱とかそういうアレか?
…いやいやいや。だって息子もなまえも健康だって言ってたしィ?
…まさかどっちかの身体に何かあったとか!?
そんなことを考え、なまえに確かめた。
「…何か悩みでもあんのか?」
なまえは「うーん」と唸りながら腕に抱いた息子の顔を見つめた。
「………この子、私とどこが似てると思う?」
「……………はァ?」
顔はさも深刻そうな表情をしているのに、質問の内容は全然深刻じゃなかった。
そのくだらなさに銀八は呆気にとられ、気の抜けた返事をしてしまった。
何を言ってるんだ、とでも言いたげな声になまえは少し気分を害したようだった。
「だってこの子、銀八そっくりでしょ」
そう。
息子を一目見た人たちは皆口を揃えて「パパそっくりねえ~」と言う。
銀髪、天然パーマ。
パッと見れば明らかに銀八の子だとわかる見た目だ。
しかしあまりにもその台詞を言われすぎて、なまえは自分の要素を息子に見つけられないことを気にし始めていたのだ。
「ま…まァ、お前がコイツ産んだってのははっきりしてんだから、そんな気にしなくても…」
「銀八は一目見ればすぐわかるからいいよねー」
「だからそんな不貞腐れんなって」
「不貞腐れてませんー」
そりゃあ、コイツは俺にソックリだけどさ。
そんなことを言おうものなら、なまえはますます臍を曲げてしまうだろう。
なまえをどうなだめようか、銀八が思案していると、ふと視線を感じた。
下を見ると、なまえに抱かれて眠っていたはずの息子が目を開いてこちらを見ていた。
―――そういえば、ちゃんと起きている息子って珍しいな。
普段はほとんど起きることがなく、眠るか泣くところしか見たことが無かったのに。
そんなことを考えていると、あることに気付いた。
「あれ、息子が泣かないで起きるなんて」
小さな目を大きく開く息子を見てなまえも驚いていた。
「…はっきりわかるじゃねーか。コイツはお前の子だよ」
「え?」
銀八は息子の目じりに触れた。
ぱっちり開かれたその眼は、銀八ではなくなまえと同じ色をしていた。
「あ……」
そのことになまえも気付いたようだ。
なまえは唇を噛みしめ、泣きそうな顔をしながら息子をぎゅっと抱きしめた。
息子の小さな手がなまえの頬に触れた。
「かーちゃん泣くなってさ」
「ん……。…ありがとう、息子。…銀八」