坂田家の日常
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ある日曜日のこと。
銀八となまえは近くのショッピングモールに来ていた。
なまえの友人に渡す出産祝いを用意するためだった。
「うーん…オモチャなんてきっとたくさん貰ってるよねぇ…」
訪れたベビー用品店の店頭に並んだ商品を睨んでは、なまえはうんうん唸っている。
「テキトーに服とかでよくね?何枚あっても困りゃしねぇだろ」
「そりゃそうなんだけどねー」
あれこれ悩んでいると、店員がそっと近づいてきた。
「お子さん用品のご準備ですか?」
「え!あ、いや、その、友人ですッ!出産祝いを、と…」
若い夫婦がこんな店にいれば、そう思われるのは自然なことなのだけれども。
なまえは店員の質問に意味もなく慌てて答えた。
結局、購入したのは素材のいいベビー服のセットだった。
無事用事を済ませられたのは良かったのだけれども、なまえは緊張が解けないまま家路を辿る。
俯きながら歩いていたなまえが、ときどきこちらをチラチラと盗み見ていたことに銀八は気付いていたけれども、特に触れなかった。
―――
その日の夜。
帰宅してからもなまえはそわそわしっぱなしで落ち着く様子がなかった。
夕飯を作る最中も、食後のデザートを食べているときも、風呂上りでも。
やたら瞬きが多く、こちらをチラ見している。
早く言えばいいのに、と銀八は思った。
そろそろ寝ようか、と寝室に入るとなまえがベッドの縁に腰かけていた。
「…銀八」
か細い声で呼ぶなまえの表情は不安げだった。
銀八は怖がらせないように「どうした?」と尋ねた。
隣に座り、肩を抱いてやる。いつからこうしていたのか、なまえの方は冷えていた。
「…俺に言いたいことあんじゃねぇの」
「うん…」
なまえは口ごもる。
「俺達夫婦だろ?言いたいことはハッキリ言っていいんだぜ」
「……笑わないでくれる?」
不安そうな表情で尋ねるなまえ。
銀八は小さく「…ああ」とだけ答えた。
そして、なまえは銀八をしっかり見つめて言った。
「…私も…そろそろ、赤ちゃんが欲しいの」
ああ、やっぱりな。
予想通りの言葉に銀八は少し笑った。
そりゃあ、あんな店にいればそういう気も湧いてくるだろう。
やっぱり呆れられた、と思ったのか、なまえの眉尻がますます下がる。
「友達のためじゃなくて、自分の子のためにああいう時間を過ごせたら…すごく幸せなのになって、思ったの…。ふたりでいる今も十分幸せなのに……もっともっと、って…思っちゃった」
何か懺悔するかのように、なまえがポツポツと語る。
「ゴメン……私、ワガママだよ、ねッ…!?」
銀八はたまらず、なまえの唇を奪いそのままベッドの上に押し倒した。
何が起きたのかもわからず、なまえの表情は驚いたままだった。
「ワガママなもんかよ。結婚してりゃあ子供が欲しくなるのは自然なことだろ?」
「それは……そうだけど」
「それに、俺はなまえがもっと幸せになりてぇって思ってくれてるのがすげー嬉しい」
「…ホント?」
「ああ…。ホントだよ」
なまえの顔の両側に肘をつく。
至近距離で見つめ合えば自然と唇同士がくっついた。
夫がこんなにも優しい人で良かった。
彼との子が生まれたら、どんな子になるだろう。
だんだん熱くなる息遣いの音を聴きながら、なまえはそう遠くない未来に思いを馳せた。
12月になったばかりの、寒い日の夜のこと。
銀八となまえは近くのショッピングモールに来ていた。
なまえの友人に渡す出産祝いを用意するためだった。
「うーん…オモチャなんてきっとたくさん貰ってるよねぇ…」
訪れたベビー用品店の店頭に並んだ商品を睨んでは、なまえはうんうん唸っている。
「テキトーに服とかでよくね?何枚あっても困りゃしねぇだろ」
「そりゃそうなんだけどねー」
あれこれ悩んでいると、店員がそっと近づいてきた。
「お子さん用品のご準備ですか?」
「え!あ、いや、その、友人ですッ!出産祝いを、と…」
若い夫婦がこんな店にいれば、そう思われるのは自然なことなのだけれども。
なまえは店員の質問に意味もなく慌てて答えた。
結局、購入したのは素材のいいベビー服のセットだった。
無事用事を済ませられたのは良かったのだけれども、なまえは緊張が解けないまま家路を辿る。
俯きながら歩いていたなまえが、ときどきこちらをチラチラと盗み見ていたことに銀八は気付いていたけれども、特に触れなかった。
―――
その日の夜。
帰宅してからもなまえはそわそわしっぱなしで落ち着く様子がなかった。
夕飯を作る最中も、食後のデザートを食べているときも、風呂上りでも。
やたら瞬きが多く、こちらをチラ見している。
早く言えばいいのに、と銀八は思った。
そろそろ寝ようか、と寝室に入るとなまえがベッドの縁に腰かけていた。
「…銀八」
か細い声で呼ぶなまえの表情は不安げだった。
銀八は怖がらせないように「どうした?」と尋ねた。
隣に座り、肩を抱いてやる。いつからこうしていたのか、なまえの方は冷えていた。
「…俺に言いたいことあんじゃねぇの」
「うん…」
なまえは口ごもる。
「俺達夫婦だろ?言いたいことはハッキリ言っていいんだぜ」
「……笑わないでくれる?」
不安そうな表情で尋ねるなまえ。
銀八は小さく「…ああ」とだけ答えた。
そして、なまえは銀八をしっかり見つめて言った。
「…私も…そろそろ、赤ちゃんが欲しいの」
ああ、やっぱりな。
予想通りの言葉に銀八は少し笑った。
そりゃあ、あんな店にいればそういう気も湧いてくるだろう。
やっぱり呆れられた、と思ったのか、なまえの眉尻がますます下がる。
「友達のためじゃなくて、自分の子のためにああいう時間を過ごせたら…すごく幸せなのになって、思ったの…。ふたりでいる今も十分幸せなのに……もっともっと、って…思っちゃった」
何か懺悔するかのように、なまえがポツポツと語る。
「ゴメン……私、ワガママだよ、ねッ…!?」
銀八はたまらず、なまえの唇を奪いそのままベッドの上に押し倒した。
何が起きたのかもわからず、なまえの表情は驚いたままだった。
「ワガママなもんかよ。結婚してりゃあ子供が欲しくなるのは自然なことだろ?」
「それは……そうだけど」
「それに、俺はなまえがもっと幸せになりてぇって思ってくれてるのがすげー嬉しい」
「…ホント?」
「ああ…。ホントだよ」
なまえの顔の両側に肘をつく。
至近距離で見つめ合えば自然と唇同士がくっついた。
夫がこんなにも優しい人で良かった。
彼との子が生まれたら、どんな子になるだろう。
だんだん熱くなる息遣いの音を聴きながら、なまえはそう遠くない未来に思いを馳せた。
12月になったばかりの、寒い日の夜のこと。