「あー、さっぱりした」

夕飯の片付けを終え、なまえが風呂から上がってきた。
濡れた髪に上気した頬が艶っぽさを醸し出している。

なまえは髪を乾かす様子もなく、タオルを肩にかけただけの状態でソファに深く腰掛けた。
そんな様子に銀八は溜め息をつき、ドライヤーを手に取った。

「そのまま寝たら風邪引くぞ」
「うーん…」

返事はもう適当になっている。
彼女の背後に立ち、肩にかかったタオルで水分を取った。

「ほら、乾かしてやるからちゃんと座れ」
「んー」

ぶおー、と轟音を鳴らしながらドライヤーの風を髪に当てる。
手で梳けば髪の間からシャンプーのいい匂いが鼻孔をついた。

…あ、ヤバイ。ムラムラしてきた。
だって風呂上りの嫁さんなんて普通見てたらムラムラするじゃん！
…しかし。

すんでのところで銀八は思いとどまった。
さすがにこのままここでコトに及んでしまえばなまえちゃんもお怒りになるだろう。
せめてベッドに連れていくまでは、と銀八はひたすら無心になるよう努めた。

暫くののち、ようやくなまえの髪を乾かし終えた。

「なまえー。終わったぞー」
「ありがとー…」

なまえの顔を覗き見ると、瞼がだいぶ下がっている。
しょーがねぇな、と銀八はなまえを抱え上げた。

「サービス料は高ぇぞ、なまえ」

ベッドに着いたらこれまでのサービス分、きっちり料金を払ってもらおう。
さあ何から始めてやろう。
そんなことを考えながら、銀八は寝室のドアを開けた。