番外編
ヒロインの名前
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誕生日。
それは、毎年嫌でもやってくる記念日。
と言っても20を過ぎれば自分の年齢なんてどうでもよくなるし、何なら今自分が何歳なのかも忘れてしまうものだ。
それが今、こうして改めて『ちゃんと』誕生日を祝ってもらうというのは嬉しくもあり、恥ずかしくもある。
大の大人が生クリームと苺でデコレーションされたケーキにそれほど喜びはしない…いや、スイーツが食べられるのは十分嬉しいことなのだけれども。
今日は10月10日。
うずまき○ルト?ジュ○ー・アーシタ?ところ○の助?美墨な○さ?まァこいつらも同じ誕生日らしいが、それより何より坂田銀時の誕生日だ。
この話の銀さんは万事屋じゃないけど。
その日の夜、夕食は普段より量を少なくして食べ終える。甘党たちにはこのあとがメインディッシュだ。
急いで食器を片づけ綺麗になった食卓の真ん中に真っ白なデコレーションケーキが鎮座している。
「なまえー、息子ー。もう切っていいかー」
キッチンで小皿とフォークの用意をしているなまえに声をかける。するとなまえは「あっ、ちょっと待って!」と返してきた。
早く糖分にありつきたい。そう思いながらもなまえと息子が戻るのを待つ。
すると先に息子のほうが手に何かを持ってやって来た。
「ぱっぱ、これ!」
「あぁ?」
小さな手に握られていたのはカラフルなロウソクだった。
ああ、お誕生日の歌を歌って最後にフーってするアレか。…え?
「今日、ケーキ買ったらお店の人がくれたの」
「フーして!」
満面の笑みを浮かべる息子となまえを交互に見て、銀八は二人が言いたいことを察した。
…要するに俺に火を吹き消せと。そんなこっ恥ずかしい真似をしろと。
じわじわと迫る二人に銀八はたじろいでしまう。
「いやいやいやいや、ちょっと待てお前ら。俺いくつだと思ってんの?…フーする権利は息子にやるって。思う存分フーしていいぞ息子」
「めっ、ぱぱ!」
「マジでか」
普段、自分の誕生日でもクリスマスケーキでも吹き消したいと五月蝿い息子が、何故か銀八が吹き消すことにこだわっている。
なまえはくすくすと笑いながら息子を抱き上げた。
「…息子のお願い、聞いてあげたら?」
そう言われると銀八は何も言えなくなってしまい、後頭部をガシガシと掻いた。
なまえと息子の笑顔に弱いのだ。
気づけば息子が身を乗り出してロウソクをケーキに突き立てようとしている。おぉっと、となまえは息子を抱き直した。
「しょーがねぇな」
ため息交じりに呟くと、なまえたちはよりいっそう嬉しそうに笑った。
「はっぴばーすでーとぅーゆー♪」
「はっぴばーうでーうーゆー」
部屋の灯りを暗くし、ロウソクに揺らめく火の光に照らされながらなまえと息子がバースデーソングを歌っている。
幸せそうな笑顔で歌う姿に銀八も幸せな気持ちになってきた。
「ぱぱ!フーして!」
息子がテーブルを叩き始め、なまえがその手を取って大人しく座らせた。
銀八は身を乗り出して二人を見る。
「ちゃんと見とけよ息子。…フーっ!」
勢いをつけてロウソクの火に向けて息を吹き付けた。
細いロウソクの火は一気にかき消され、周囲はフッと暗くなる。
しかしすぐになまえが消していたルームライトを点け、明るさを取り戻した。
「パパおめでとー!」
「おめっとー!」
なまえが拍手するのを真似して息子も手を叩く。こんな風に誕生日を祝われる経験もほとんどなかったせいか、今更ながら照れてしまう。
「もう切るぞー」
早くケーキを食べてしまいたい。
銀八は皿とカットナイフを手にケーキを手繰り寄せた。
銀八が照れていることに気付いているなまえは「はーい」と返し、ケーキが切り分けられるのを待った。
時刻が深夜に入りかけた頃、銀八は入浴を終えて寝室に入る。
先に戻っていたなまえは息子を寝かしつけを終え、あとはもう寝るだけといった様子だった。
銀八が入ってきたことに気付いたなまえは振り返った。
「息子寝たよ」
「じゃあ俺達も寝るかァ」
くあ、と欠伸をひとつして銀八はベッドに乗り込んだ。なまえもスリッパを脱いで銀八に続く。
今日は息子がベビーベッドで寝てくれたので、二人でベッドに入れば自然と密着する形になる。互いに向き合う姿勢になり至近距離で見つめ合うと、なまえの胸がキュンと締まった。
甘い雰囲気に酔うなまえに気付いているのかいないのか、銀八は真顔で口を開いた。
「誕生日にケーキは定番だけどさァ、もう一個大事なモンがあんじゃね?」
「え…?何だろ。何か忘れた?」
「……プレゼント」
え。となまえは固まってしまう。
そこまでは準備していなかった…。なまえが返す言葉に迷っていると、先に銀八が話し始めた。
「用意してないんですかァ?そんなこったろーと思ったぜ」
「ごめんね」
「…俺さァ、欲しいモンがあんだけど」
「なに?」
仕方無いから明日、無理なら週末にでも買いに行こう。そう考えたなまえは銀八に聞き返した。
銀八は口角を上げ、片腕をなまえの上に掛ける。更になまえの耳元に口を寄せて囁いた。
「そろそろ二人目が欲しい」
「…………え」
久しぶりに聴いたとびきり甘い声。そしてその目はいつになくギラギラと揺れている。結婚する前、恋人だった頃のような甘い雰囲気になまえの胸はさらに高鳴った。
最初になまえが子供が欲しいとねだった時、銀八はなまえの気持ちを受け止めてくれた。なら、なまえの答えももう決まっている。
なまえは返事をする代わりに銀八にキスをした。銀八もいきなりで少し驚いた様子だったが、すぐになまえを強く抱きしめ、その熱を奪う。
「は、ぁ……っ」
「やっぱ次は女だな。なまえにクリソツのかわいーい女の子」
「ふふっ、なにそれ」
笑うなまえにもう一度キスしようと銀八が唇を寄せたとき、なまえが小さく呟いた。
「お誕生日おめでとう。…愛してる」
「ああ…ありがとな」
命のはじまりは、愛に満ちあふれていた。
それは、毎年嫌でもやってくる記念日。
と言っても20を過ぎれば自分の年齢なんてどうでもよくなるし、何なら今自分が何歳なのかも忘れてしまうものだ。
それが今、こうして改めて『ちゃんと』誕生日を祝ってもらうというのは嬉しくもあり、恥ずかしくもある。
大の大人が生クリームと苺でデコレーションされたケーキにそれほど喜びはしない…いや、スイーツが食べられるのは十分嬉しいことなのだけれども。
今日は10月10日。
うずまき○ルト?ジュ○ー・アーシタ?ところ○の助?美墨な○さ?まァこいつらも同じ誕生日らしいが、それより何より坂田銀時の誕生日だ。
この話の銀さんは万事屋じゃないけど。
その日の夜、夕食は普段より量を少なくして食べ終える。甘党たちにはこのあとがメインディッシュだ。
急いで食器を片づけ綺麗になった食卓の真ん中に真っ白なデコレーションケーキが鎮座している。
「なまえー、息子ー。もう切っていいかー」
キッチンで小皿とフォークの用意をしているなまえに声をかける。するとなまえは「あっ、ちょっと待って!」と返してきた。
早く糖分にありつきたい。そう思いながらもなまえと息子が戻るのを待つ。
すると先に息子のほうが手に何かを持ってやって来た。
「ぱっぱ、これ!」
「あぁ?」
小さな手に握られていたのはカラフルなロウソクだった。
ああ、お誕生日の歌を歌って最後にフーってするアレか。…え?
「今日、ケーキ買ったらお店の人がくれたの」
「フーして!」
満面の笑みを浮かべる息子となまえを交互に見て、銀八は二人が言いたいことを察した。
…要するに俺に火を吹き消せと。そんなこっ恥ずかしい真似をしろと。
じわじわと迫る二人に銀八はたじろいでしまう。
「いやいやいやいや、ちょっと待てお前ら。俺いくつだと思ってんの?…フーする権利は息子にやるって。思う存分フーしていいぞ息子」
「めっ、ぱぱ!」
「マジでか」
普段、自分の誕生日でもクリスマスケーキでも吹き消したいと五月蝿い息子が、何故か銀八が吹き消すことにこだわっている。
なまえはくすくすと笑いながら息子を抱き上げた。
「…息子のお願い、聞いてあげたら?」
そう言われると銀八は何も言えなくなってしまい、後頭部をガシガシと掻いた。
なまえと息子の笑顔に弱いのだ。
気づけば息子が身を乗り出してロウソクをケーキに突き立てようとしている。おぉっと、となまえは息子を抱き直した。
「しょーがねぇな」
ため息交じりに呟くと、なまえたちはよりいっそう嬉しそうに笑った。
「はっぴばーすでーとぅーゆー♪」
「はっぴばーうでーうーゆー」
部屋の灯りを暗くし、ロウソクに揺らめく火の光に照らされながらなまえと息子がバースデーソングを歌っている。
幸せそうな笑顔で歌う姿に銀八も幸せな気持ちになってきた。
「ぱぱ!フーして!」
息子がテーブルを叩き始め、なまえがその手を取って大人しく座らせた。
銀八は身を乗り出して二人を見る。
「ちゃんと見とけよ息子。…フーっ!」
勢いをつけてロウソクの火に向けて息を吹き付けた。
細いロウソクの火は一気にかき消され、周囲はフッと暗くなる。
しかしすぐになまえが消していたルームライトを点け、明るさを取り戻した。
「パパおめでとー!」
「おめっとー!」
なまえが拍手するのを真似して息子も手を叩く。こんな風に誕生日を祝われる経験もほとんどなかったせいか、今更ながら照れてしまう。
「もう切るぞー」
早くケーキを食べてしまいたい。
銀八は皿とカットナイフを手にケーキを手繰り寄せた。
銀八が照れていることに気付いているなまえは「はーい」と返し、ケーキが切り分けられるのを待った。
時刻が深夜に入りかけた頃、銀八は入浴を終えて寝室に入る。
先に戻っていたなまえは息子を寝かしつけを終え、あとはもう寝るだけといった様子だった。
銀八が入ってきたことに気付いたなまえは振り返った。
「息子寝たよ」
「じゃあ俺達も寝るかァ」
くあ、と欠伸をひとつして銀八はベッドに乗り込んだ。なまえもスリッパを脱いで銀八に続く。
今日は息子がベビーベッドで寝てくれたので、二人でベッドに入れば自然と密着する形になる。互いに向き合う姿勢になり至近距離で見つめ合うと、なまえの胸がキュンと締まった。
甘い雰囲気に酔うなまえに気付いているのかいないのか、銀八は真顔で口を開いた。
「誕生日にケーキは定番だけどさァ、もう一個大事なモンがあんじゃね?」
「え…?何だろ。何か忘れた?」
「……プレゼント」
え。となまえは固まってしまう。
そこまでは準備していなかった…。なまえが返す言葉に迷っていると、先に銀八が話し始めた。
「用意してないんですかァ?そんなこったろーと思ったぜ」
「ごめんね」
「…俺さァ、欲しいモンがあんだけど」
「なに?」
仕方無いから明日、無理なら週末にでも買いに行こう。そう考えたなまえは銀八に聞き返した。
銀八は口角を上げ、片腕をなまえの上に掛ける。更になまえの耳元に口を寄せて囁いた。
「そろそろ二人目が欲しい」
「…………え」
久しぶりに聴いたとびきり甘い声。そしてその目はいつになくギラギラと揺れている。結婚する前、恋人だった頃のような甘い雰囲気になまえの胸はさらに高鳴った。
最初になまえが子供が欲しいとねだった時、銀八はなまえの気持ちを受け止めてくれた。なら、なまえの答えももう決まっている。
なまえは返事をする代わりに銀八にキスをした。銀八もいきなりで少し驚いた様子だったが、すぐになまえを強く抱きしめ、その熱を奪う。
「は、ぁ……っ」
「やっぱ次は女だな。なまえにクリソツのかわいーい女の子」
「ふふっ、なにそれ」
笑うなまえにもう一度キスしようと銀八が唇を寄せたとき、なまえが小さく呟いた。
「お誕生日おめでとう。…愛してる」
「ああ…ありがとな」
命のはじまりは、愛に満ちあふれていた。
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