2年Z組銀八先生
ヒロインの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
The madness of love is the greatest of heaven’s blessings.
恋という狂気こそは、まさにこよなき幸いのために神々から授けられる。(プラトン)
*
二学期の終業式も無事終わり、銀魂高校の教師陣も年末年始の休みに入る。
そして今夜はそんな彼らの忘年会が行われた。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。今日は無礼講だよ、好きなだけ飲みな」
こういう会には滅多に顔を出さない理事長のお登勢が最初の挨拶をした。
「理事長が顔出すなんて珍しいな」
服部がさっそくグラスのビールを飲み干した。
「理事長ってこういう場はお嫌いなんですか?」
「そうじゃねーけど、あれでも忙しい婆さんだからな。都合が合わねーんだろうよ」
「そうなんですか」
「今年はアンタが入ってきし、どーせ松平のオッサンあたりが羽目外し過ぎないかとか、監視のつもりなんだろうよ」
最初の一杯目が空になりかけた。
次は何を飲もうかな、となまえがドリンクメニューを眺めていると、隣にお登勢が現れた。
「なまえ、あんたも楽しんでるかい?」
「理事長」
咄嗟に顔を上げると、理事長の顔は少し赤みが出ていた。
「もっと女性教諭がいてくれればいいんだけどねェ。オッサンばっかですまないね」
「いえ、十分楽しめてますから。ありがとうございます」
なまえがにっこり笑うと、少し離れた位置から声がした。
「オ~イみょうじちゃ~~んんん。オジサンに酌してくんな~いィィ」
声の主は松平だった。もう完全に出来上がっている。
答えたのはお登勢だった。
「なまえをホステス扱いすんじゃないよ!ここはキャバクラじゃねーぞ!」
「あの、理事長、わたしは新参者ですから。お酌くらいしますよ」
怒る理事長をなんとか宥め、なまえは他の教師たちのお酌に回った。
*
最初の乾杯から始まって気付けばもう午後9時を過ぎていた。
「次ー、二時会行く人ー?」
携帯を片手に幹事役の教師が声をかけた。
はーい、と赤ら顔の男性教師たちが手を挙げ始める。
なまえはどうしようか考えあぐねていると、銀八がこっそり耳打ちしてきた。
「なまえ先生、俺もう抜けたいからなまえ先生送ってくって言っていい?」
「あ、はい…」
どうやって抜け出そうかと考えていたところで、銀八が助け舟を出してくれた。
先月のことがあってからというもの、なんとかそれまでと同じように彼に接してきた。
しかしどうしても最低限の接触にしなければ耐えられなかったため、話す数は一気に減っていた。
そんな中でもこうしてフォローしてくれるのは、有難くもあり、申し訳なくもあった。
「悪りい、俺なまえ先生送ってくから今日はここまでにするわ」
「すみません…あの、お疲れさまでした!」
なまえの態度に気付いているのかいないのか、銀八はさっさと店外に出ていった。
なまえもお辞儀をしてその場を後にする。
坂本が「なんじゃあ、金時も帰るがか~?」と残念そうにしていた。
駅へ続く道を二人で歩く。
雪こそ降っていないが、吐く息が白く見えるほどの寒さだった。
マフラーをしてこればよかったな、となまえは思った。
隣を歩く銀八をちらりと盗み見ると、やはり銀八も同じく寒そうに白い息を吐いている。
クリスマスシーズンの真っ最中だからか、どの店も飾り付けられたオーナメントが輝いている。
さっきからすれ違うのはクリスマスを楽しむカップルばかり。誰もが幸せそうに微笑んで手を繋ぎ歩いている。
それに引き換え、自分はと思うとなまえの隣にいるのは恋人ではなかった。
(……せっかくもうすぐクリスマスなのに)
幸せそうなカップルたちとは程遠い自分に少し悲しくなる。
「なまえ先生」
突然銀八が話しかけてきた。
「は、はいっ!?」
なまえが慌てて返事をする。不意を突かれて声が上ずってしまった。
「ちょっと寄り道してみねえ?」
「…? 寄り道ですか? 」
驚いて銀八を見ると、銀八は不敵な笑みを浮かべていた。
こんな時間に、どこへ行くのだろうか?
銀八の考えが読めない。
彼が言うままなまえはついていくしかなかった。
*
「わぁ…!」
連れてこられたのは、歓楽街から少し離れた小高い丘の上の公園だった。
ネオンが輝く街を見下ろすその高台は、見上げれば満点の星空が広がっていた。
なまえは寒さも忘れ、その美しさに心を奪われた。
「晴れてラッキーだったな。空気が澄んでるから余計キレイに見えるし」
「意外です」
「何が?」
「坂田先生がこんな場所知ってるってことが」
「ガサツ人間って言いたいの?」
ふふ、となまえは笑ってしまった。その笑顔に銀八も笑みが漏れた。
銀八は柵に寄りかかるなまえの隣に立ち、その向こうに広がる景色を眺めた。
「…アンタもだいぶ成長したよ。まだ1年経ってねーが、初めて会った頃とは大違いだ」
「そんな…。坂田先生のおかげです」
それはなまえの本心だった。
新卒で運よく採用試験に受かったものの、初めてのことだらけで戸惑うなまえを銀八はいつも助けてくれた。
「坂田先生、本当にありがとうございます」
「オイオイ。三学期もあんだぞ?これからも気張ってもらわねーとな」
「………そうですね」
銀八の言葉に、なまえは少し憂鬱な気分になった。
この気まずい想いを抱えたまま、少なくともあと三か月は過ごさなければならない。
聞いてしまうべきだろうか。
“生徒と付き合ってるんですか”と。
「寒くなってきたな」
「…もう遅いですからね」
「もっとこっちに来いよ」
「えっ……」
銀八の言葉の意味が解らず、なまえは彼の方を向いた。
夜景を眺めていると思っていた銀八もまた、なまえの方を向いていた。
「…あ…」
音もなく銀八の腕が伸びてきて、そのままなまえを抱き寄せた。
なまえの顔が銀八の胸に埋まり、何も見えなくなってしまった。
この行動の意味をなまえは知っていた。
しかし、どういうつもりなのかわからなくなった。
震える唇で、小さな声で、銀八に言った。
「…好きでもない人に、こんなことしちゃ…駄目ですよ…」
思っていたよりも震え声で、少し泣きそうだったことに、なまえ自身も驚いた。
そして驚いていたのは、なまえだけではなかったらしい。
「好きでもない、って……え? 何それ?」
「だって、坂田先生…生徒と………付き合ってるんじゃ…」
「オイオイさすがにガキと付き合う趣味はねーよ」
「だって! この間、生徒を抱きしめてたじゃないですか!」
「この間?」
「…先月、生徒と……階段で」
「先月? …全然覚えてねーんだけど、生徒なんか恋愛対象に入るかよ」
「………そうなんですか?」
「へー。なまえ先生は俺が生徒とデキてると勘違いしてたと。へぇえ~」
「……」
恥ずかしい。自分の勘違いだったなんて。
顔から火が出るほど、とはこういうことなのか。
そして何より、勘違いで銀八に良くない態度を取ってしまったことが申し訳なかった。
「…すみません」
「何謝ってんだ。…嫉妬してくれてたってことだよな?」
「…坂田先生、何おっしゃってるんですか?」
「はっきり言わなきゃわかんねーのか」
銀八の声のトーンが変わった。その朗々とした声に、なまえは震えた。
ゆっくり顔を上げると、至近距離から銀八の表情が窺えた。
―――それは、いつになく真剣な眼差しだった。
いつもは眠たそうな瞼も、目と妙に離れた眉も、今はキリっと締まっている。
見た事もない表情はなまえの視線を掴んで離さない。
静寂を割って、小さな声が聴こえた。
「………好きだ」
たった一言。
消え入りそうな小さな言葉だったが、それはなまえの胸の奥深くに強く響いた。
「………………っ」
なまえは恐る恐る、ゆっくりと自分の言葉を紡ぐ。
「…わ、…わたしも……」
「…ん」
自然と両手を挙げ、銀八の背に回していた。
「わたしも…あなたが……好きです」
ぎゅっと腕に力を込めた。
すると、銀八の右手が背中を伝って頭に添えられた。
その手に導かれるままなまえはゆっくり顔を上げた。
「なまえ」
見た事のない表情だった。
熱に浮かされたような、でも真っ直ぐ貫くような、その瞳に心を奪われた。
なまえが目を閉じたその瞬間、唇から温かい感触が伝わった。
「んっ………」
抱きしめる腕に力を籠め、より深くつながるようにキスに夢中になった。
それは今まで経験したどんなキスよりも甘かった。
なまえは本当に好きな人とするキスがこんなに気持ちがいいと初めて知った。
唇が離れた途端、なまえは恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
そして小さな声で尋ねた。
「…………いつから気付いておられたんですか?」
「何が?」
「…その、…私が……坂田先生が好きだってこと……」
目線を上げると、銀八は笑っていた。
「さあ?どうだろうな」
「もうッ…」
いつものように銀八に振り回されるなまえだったが、それが幸せでたまらなかった。
赤くなってしまった顔を隠すようにもう一度銀八に思いきり抱き着いた。
銀八は一瞬驚いたようだったが、すぐに彼の腕がなまえの身体を包み込む。
その温かさを感じながら胸に顔を埋めると早くなる鼓動が聴こえてくる。
「……ぁあー、もう…っ…」
頭上から銀八が何か言っている。
「なまえ」
また名前を呼ばれる。
銀八に名前を呼ばれると、ドキドキと胸の高鳴りが収まらない。
顔を上げ銀八を見つめる。
やがでどちらともなく唇を寄せ合った。
クリスマスを待ちわびる街のライトが見下ろす二つの影は冬の澄んだ空気に溶けていき、いつまでも離れなかった。
恋という狂気こそは、まさにこよなき幸いのために神々から授けられる。(プラトン)
*
二学期の終業式も無事終わり、銀魂高校の教師陣も年末年始の休みに入る。
そして今夜はそんな彼らの忘年会が行われた。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。今日は無礼講だよ、好きなだけ飲みな」
こういう会には滅多に顔を出さない理事長のお登勢が最初の挨拶をした。
「理事長が顔出すなんて珍しいな」
服部がさっそくグラスのビールを飲み干した。
「理事長ってこういう場はお嫌いなんですか?」
「そうじゃねーけど、あれでも忙しい婆さんだからな。都合が合わねーんだろうよ」
「そうなんですか」
「今年はアンタが入ってきし、どーせ松平のオッサンあたりが羽目外し過ぎないかとか、監視のつもりなんだろうよ」
最初の一杯目が空になりかけた。
次は何を飲もうかな、となまえがドリンクメニューを眺めていると、隣にお登勢が現れた。
「なまえ、あんたも楽しんでるかい?」
「理事長」
咄嗟に顔を上げると、理事長の顔は少し赤みが出ていた。
「もっと女性教諭がいてくれればいいんだけどねェ。オッサンばっかですまないね」
「いえ、十分楽しめてますから。ありがとうございます」
なまえがにっこり笑うと、少し離れた位置から声がした。
「オ~イみょうじちゃ~~んんん。オジサンに酌してくんな~いィィ」
声の主は松平だった。もう完全に出来上がっている。
答えたのはお登勢だった。
「なまえをホステス扱いすんじゃないよ!ここはキャバクラじゃねーぞ!」
「あの、理事長、わたしは新参者ですから。お酌くらいしますよ」
怒る理事長をなんとか宥め、なまえは他の教師たちのお酌に回った。
*
最初の乾杯から始まって気付けばもう午後9時を過ぎていた。
「次ー、二時会行く人ー?」
携帯を片手に幹事役の教師が声をかけた。
はーい、と赤ら顔の男性教師たちが手を挙げ始める。
なまえはどうしようか考えあぐねていると、銀八がこっそり耳打ちしてきた。
「なまえ先生、俺もう抜けたいからなまえ先生送ってくって言っていい?」
「あ、はい…」
どうやって抜け出そうかと考えていたところで、銀八が助け舟を出してくれた。
先月のことがあってからというもの、なんとかそれまでと同じように彼に接してきた。
しかしどうしても最低限の接触にしなければ耐えられなかったため、話す数は一気に減っていた。
そんな中でもこうしてフォローしてくれるのは、有難くもあり、申し訳なくもあった。
「悪りい、俺なまえ先生送ってくから今日はここまでにするわ」
「すみません…あの、お疲れさまでした!」
なまえの態度に気付いているのかいないのか、銀八はさっさと店外に出ていった。
なまえもお辞儀をしてその場を後にする。
坂本が「なんじゃあ、金時も帰るがか~?」と残念そうにしていた。
駅へ続く道を二人で歩く。
雪こそ降っていないが、吐く息が白く見えるほどの寒さだった。
マフラーをしてこればよかったな、となまえは思った。
隣を歩く銀八をちらりと盗み見ると、やはり銀八も同じく寒そうに白い息を吐いている。
クリスマスシーズンの真っ最中だからか、どの店も飾り付けられたオーナメントが輝いている。
さっきからすれ違うのはクリスマスを楽しむカップルばかり。誰もが幸せそうに微笑んで手を繋ぎ歩いている。
それに引き換え、自分はと思うとなまえの隣にいるのは恋人ではなかった。
(……せっかくもうすぐクリスマスなのに)
幸せそうなカップルたちとは程遠い自分に少し悲しくなる。
「なまえ先生」
突然銀八が話しかけてきた。
「は、はいっ!?」
なまえが慌てて返事をする。不意を突かれて声が上ずってしまった。
「ちょっと寄り道してみねえ?」
「…? 寄り道ですか? 」
驚いて銀八を見ると、銀八は不敵な笑みを浮かべていた。
こんな時間に、どこへ行くのだろうか?
銀八の考えが読めない。
彼が言うままなまえはついていくしかなかった。
*
「わぁ…!」
連れてこられたのは、歓楽街から少し離れた小高い丘の上の公園だった。
ネオンが輝く街を見下ろすその高台は、見上げれば満点の星空が広がっていた。
なまえは寒さも忘れ、その美しさに心を奪われた。
「晴れてラッキーだったな。空気が澄んでるから余計キレイに見えるし」
「意外です」
「何が?」
「坂田先生がこんな場所知ってるってことが」
「ガサツ人間って言いたいの?」
ふふ、となまえは笑ってしまった。その笑顔に銀八も笑みが漏れた。
銀八は柵に寄りかかるなまえの隣に立ち、その向こうに広がる景色を眺めた。
「…アンタもだいぶ成長したよ。まだ1年経ってねーが、初めて会った頃とは大違いだ」
「そんな…。坂田先生のおかげです」
それはなまえの本心だった。
新卒で運よく採用試験に受かったものの、初めてのことだらけで戸惑うなまえを銀八はいつも助けてくれた。
「坂田先生、本当にありがとうございます」
「オイオイ。三学期もあんだぞ?これからも気張ってもらわねーとな」
「………そうですね」
銀八の言葉に、なまえは少し憂鬱な気分になった。
この気まずい想いを抱えたまま、少なくともあと三か月は過ごさなければならない。
聞いてしまうべきだろうか。
“生徒と付き合ってるんですか”と。
「寒くなってきたな」
「…もう遅いですからね」
「もっとこっちに来いよ」
「えっ……」
銀八の言葉の意味が解らず、なまえは彼の方を向いた。
夜景を眺めていると思っていた銀八もまた、なまえの方を向いていた。
「…あ…」
音もなく銀八の腕が伸びてきて、そのままなまえを抱き寄せた。
なまえの顔が銀八の胸に埋まり、何も見えなくなってしまった。
この行動の意味をなまえは知っていた。
しかし、どういうつもりなのかわからなくなった。
震える唇で、小さな声で、銀八に言った。
「…好きでもない人に、こんなことしちゃ…駄目ですよ…」
思っていたよりも震え声で、少し泣きそうだったことに、なまえ自身も驚いた。
そして驚いていたのは、なまえだけではなかったらしい。
「好きでもない、って……え? 何それ?」
「だって、坂田先生…生徒と………付き合ってるんじゃ…」
「オイオイさすがにガキと付き合う趣味はねーよ」
「だって! この間、生徒を抱きしめてたじゃないですか!」
「この間?」
「…先月、生徒と……階段で」
「先月? …全然覚えてねーんだけど、生徒なんか恋愛対象に入るかよ」
「………そうなんですか?」
「へー。なまえ先生は俺が生徒とデキてると勘違いしてたと。へぇえ~」
「……」
恥ずかしい。自分の勘違いだったなんて。
顔から火が出るほど、とはこういうことなのか。
そして何より、勘違いで銀八に良くない態度を取ってしまったことが申し訳なかった。
「…すみません」
「何謝ってんだ。…嫉妬してくれてたってことだよな?」
「…坂田先生、何おっしゃってるんですか?」
「はっきり言わなきゃわかんねーのか」
銀八の声のトーンが変わった。その朗々とした声に、なまえは震えた。
ゆっくり顔を上げると、至近距離から銀八の表情が窺えた。
―――それは、いつになく真剣な眼差しだった。
いつもは眠たそうな瞼も、目と妙に離れた眉も、今はキリっと締まっている。
見た事もない表情はなまえの視線を掴んで離さない。
静寂を割って、小さな声が聴こえた。
「………好きだ」
たった一言。
消え入りそうな小さな言葉だったが、それはなまえの胸の奥深くに強く響いた。
「………………っ」
なまえは恐る恐る、ゆっくりと自分の言葉を紡ぐ。
「…わ、…わたしも……」
「…ん」
自然と両手を挙げ、銀八の背に回していた。
「わたしも…あなたが……好きです」
ぎゅっと腕に力を込めた。
すると、銀八の右手が背中を伝って頭に添えられた。
その手に導かれるままなまえはゆっくり顔を上げた。
「なまえ」
見た事のない表情だった。
熱に浮かされたような、でも真っ直ぐ貫くような、その瞳に心を奪われた。
なまえが目を閉じたその瞬間、唇から温かい感触が伝わった。
「んっ………」
抱きしめる腕に力を籠め、より深くつながるようにキスに夢中になった。
それは今まで経験したどんなキスよりも甘かった。
なまえは本当に好きな人とするキスがこんなに気持ちがいいと初めて知った。
唇が離れた途端、なまえは恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
そして小さな声で尋ねた。
「…………いつから気付いておられたんですか?」
「何が?」
「…その、…私が……坂田先生が好きだってこと……」
目線を上げると、銀八は笑っていた。
「さあ?どうだろうな」
「もうッ…」
いつものように銀八に振り回されるなまえだったが、それが幸せでたまらなかった。
赤くなってしまった顔を隠すようにもう一度銀八に思いきり抱き着いた。
銀八は一瞬驚いたようだったが、すぐに彼の腕がなまえの身体を包み込む。
その温かさを感じながら胸に顔を埋めると早くなる鼓動が聴こえてくる。
「……ぁあー、もう…っ…」
頭上から銀八が何か言っている。
「なまえ」
また名前を呼ばれる。
銀八に名前を呼ばれると、ドキドキと胸の高鳴りが収まらない。
顔を上げ銀八を見つめる。
やがでどちらともなく唇を寄せ合った。
クリスマスを待ちわびる街のライトが見下ろす二つの影は冬の澄んだ空気に溶けていき、いつまでも離れなかった。