2年Z組銀八先生
ヒロインの名前
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If you want the rainbow, you gotta put up with the rain. (ドリー・バートン)
虹を見たければ、ちょっとやそっとの雨は我慢しなくちゃ。
*
文化祭も無事に終わり、冬の気配を感じ始める季節となった。
期末テストが近づきなまえも生徒からの質問に応じたり、問題を作成したりと忙しい日々を送っていた。
あれこれと仕事の多い職業ではあるが、それなりに楽しいと感じるようになってきた。
生徒達もなまえを慕ってくれ、周囲の教員たちも何かとなまえを気にかけてくれている。
その中でもやはり銀八とは過ごす時間が格段に多い。
学校でもダラダラしてばかりの銀八はなまえをおもちゃと思っているのか、からかい、おちょくってくる。
はじめは戸惑うことも多かったが、慣れてしまえば受け流せるようになっていた。
しかしその中で時おり見せる表情になまえはドキリとすることがある。
いやいや、それはきっと先輩の頼もしさを恋心と勘違いしてしまうとかいうアレだろうとなまえは思っていた。
まあ実際、普段は教師と思えないほどダラけた銀八だが、なまえが困っていれば必ず助けてくれる。
なんやかんやで頼りにしているのだ。
その日の放課後、なまえは居残り生徒の補習に付き合っていた。
高校2年生の年末が近づいてくると生徒達の勉強具合いが一気に加速する。
受験生たちは少しでも理解を深めようとこうして質問や補習を願い出てくるのだ。
…Z組は例外だけれども。
「先生、ここなんですけど…」
「はい」
生徒が指さした部分を見て内容を丁寧に教えてやる。
こうして熱心に勉強に取り組んでくれるのは、なまえとしても嬉しいことだった。
それにこういう情報は後の授業の進め方を考える上で参考になる。
それから1時間後。
「先生、ありがとうございました」
「それじゃあ頑張ってね」
「はい」
バタバタと忙しい音を立てながら机に広げた文房具やノートを片づける。
窓の外を見やると日は落ちてすっかり暗くなっていた。
「…今日はもう帰ろう」
教室の鍵をかけ、戸締りの確認をする。
誰もいなくなった校舎は少し不気味な雰囲気があった。
職員室へ戻ろうと階段を上る。
2階へ続く階段の踊り場には大きな鏡がある。
生徒の身だしなみに対する意識を向上させるためらしいが、大き過ぎて学校の怪談なんかに出てきそうだ。
「ん……?」
ふと視線をやると、鏡に映った階段の上の方に白いものがヒラリと見えた。
真っ白と言い難いそれは銀八がいつも着ている白衣だとなまえはすぐに気付いた。
声のひとつでもかけようかと速足で階段を上る。
踊り場まで上がり、反対方向を向き、上階を見上げた。
(…えっ…!?)
そこから見えた光景になまえは言葉が出なかった。
白衣の人物は銀八だった。
そしてもう一人。
顔は暗くてよく見えないがセーラー服だった。女子生徒だ。
銀八が女子生徒を抱きしめている…ように見える。
しかしその光景は一瞬のうちに大きな衝撃となってなまえの目に焼き付いてしまった。
(………っ!)
驚きのあまり、なまえは声も上げられない。
むしろここで何か言おうものなら何が起こるかわかったもんじゃない。
なまえは必死で口を抑え込んだ。
彼らに気づかれないように。
そしてそのまま引き返し、別の階段を使って職員室に戻った。
そのあとのことはなまえ自身もほとんど記憶に無く、気づいたときには何とか帰宅していた。
入口のドアを閉めて鍵をかける。
ガチャンと重い音が響いた瞬間、なまえは荷物をドサリと床に落とした。
同時に膝がガクンを崩れ落ちてへたりこんでしまった。
「……ぅう…っ……」
抑えていた声が溢れだした。
歯を食いしばって耐えようとするが、嗚咽が止まらない。
ついに涙も零れ落ちた。
一度流れた涙は止まることなくあふれていく。
今になって銀八が好きだったのだと気づいてしまった。
そして、その想いが報われることはない。
自覚したときにはもう遅かった。
「…っく…っ…ぅぅ……っ……」
溢れた涙が袖を濡らす。
これから何でもない顔をして銀八と接するなんてできるだろうか。
それをできると断言できるほど、なまえは大人ではなかった。
涙に濡れた肌が冷えていく。
冬の始まりを告げる寒ささえも、無情になまえの心を責め立てるようだった。
虹を見たければ、ちょっとやそっとの雨は我慢しなくちゃ。
*
文化祭も無事に終わり、冬の気配を感じ始める季節となった。
期末テストが近づきなまえも生徒からの質問に応じたり、問題を作成したりと忙しい日々を送っていた。
あれこれと仕事の多い職業ではあるが、それなりに楽しいと感じるようになってきた。
生徒達もなまえを慕ってくれ、周囲の教員たちも何かとなまえを気にかけてくれている。
その中でもやはり銀八とは過ごす時間が格段に多い。
学校でもダラダラしてばかりの銀八はなまえをおもちゃと思っているのか、からかい、おちょくってくる。
はじめは戸惑うことも多かったが、慣れてしまえば受け流せるようになっていた。
しかしその中で時おり見せる表情になまえはドキリとすることがある。
いやいや、それはきっと先輩の頼もしさを恋心と勘違いしてしまうとかいうアレだろうとなまえは思っていた。
まあ実際、普段は教師と思えないほどダラけた銀八だが、なまえが困っていれば必ず助けてくれる。
なんやかんやで頼りにしているのだ。
その日の放課後、なまえは居残り生徒の補習に付き合っていた。
高校2年生の年末が近づいてくると生徒達の勉強具合いが一気に加速する。
受験生たちは少しでも理解を深めようとこうして質問や補習を願い出てくるのだ。
…Z組は例外だけれども。
「先生、ここなんですけど…」
「はい」
生徒が指さした部分を見て内容を丁寧に教えてやる。
こうして熱心に勉強に取り組んでくれるのは、なまえとしても嬉しいことだった。
それにこういう情報は後の授業の進め方を考える上で参考になる。
それから1時間後。
「先生、ありがとうございました」
「それじゃあ頑張ってね」
「はい」
バタバタと忙しい音を立てながら机に広げた文房具やノートを片づける。
窓の外を見やると日は落ちてすっかり暗くなっていた。
「…今日はもう帰ろう」
教室の鍵をかけ、戸締りの確認をする。
誰もいなくなった校舎は少し不気味な雰囲気があった。
職員室へ戻ろうと階段を上る。
2階へ続く階段の踊り場には大きな鏡がある。
生徒の身だしなみに対する意識を向上させるためらしいが、大き過ぎて学校の怪談なんかに出てきそうだ。
「ん……?」
ふと視線をやると、鏡に映った階段の上の方に白いものがヒラリと見えた。
真っ白と言い難いそれは銀八がいつも着ている白衣だとなまえはすぐに気付いた。
声のひとつでもかけようかと速足で階段を上る。
踊り場まで上がり、反対方向を向き、上階を見上げた。
(…えっ…!?)
そこから見えた光景になまえは言葉が出なかった。
白衣の人物は銀八だった。
そしてもう一人。
顔は暗くてよく見えないがセーラー服だった。女子生徒だ。
銀八が女子生徒を抱きしめている…ように見える。
しかしその光景は一瞬のうちに大きな衝撃となってなまえの目に焼き付いてしまった。
(………っ!)
驚きのあまり、なまえは声も上げられない。
むしろここで何か言おうものなら何が起こるかわかったもんじゃない。
なまえは必死で口を抑え込んだ。
彼らに気づかれないように。
そしてそのまま引き返し、別の階段を使って職員室に戻った。
そのあとのことはなまえ自身もほとんど記憶に無く、気づいたときには何とか帰宅していた。
入口のドアを閉めて鍵をかける。
ガチャンと重い音が響いた瞬間、なまえは荷物をドサリと床に落とした。
同時に膝がガクンを崩れ落ちてへたりこんでしまった。
「……ぅう…っ……」
抑えていた声が溢れだした。
歯を食いしばって耐えようとするが、嗚咽が止まらない。
ついに涙も零れ落ちた。
一度流れた涙は止まることなくあふれていく。
今になって銀八が好きだったのだと気づいてしまった。
そして、その想いが報われることはない。
自覚したときにはもう遅かった。
「…っく…っ…ぅぅ……っ……」
溢れた涙が袖を濡らす。
これから何でもない顔をして銀八と接するなんてできるだろうか。
それをできると断言できるほど、なまえは大人ではなかった。
涙に濡れた肌が冷えていく。
冬の始まりを告げる寒ささえも、無情になまえの心を責め立てるようだった。