2年Z組銀八先生
ヒロインの名前
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Love sought is good, but given unsought, is better.(シェイクスピア)
求めて得られる恋もよいものだが、求めずして得られる恋のほうが、なおのことよいのである。
思いがけなく、やってくるものだった。
*
待ちに待ったお盆休み。
その1日を使ってなまえは友人と一緒にできたばかりのショッピングモールへやって来た。
オープンしたてとあって、そこは大勢の客で賑わっていた。
「うわー…すごいね、人が」
「お盆セールなんかもあるからねぇ。さ、行こ!」
人の多さに圧倒されるなまえに対し、友人はその波を掻き分けるように進んでいく。
はぐれないようにしなきゃ、となまえは急いで彼女の後を追った。
店に入って数時間後。
二人は大方の買い物を済ませ、レストラン街にあったカフェで休憩をとっていた。
そこは以前テレビでも紹介されていたパンケーキが評判の店だ。
噂通りのおいしさになまえは感動すら覚えた。
「このケーキ、すっごく美味しい」
「こっちのハニートーストもサイコーだよ~」
美味しいスイーツを堪能しながら楽しそうに会話する二人。
傍らに置かれているのはたくさんのショッピングバッグ。
「いやあ、買ったねぇ」
「もう、買いすぎだよ~」
「いーの!頑張った自分へのご褒美!」
「あははっ!」
しっかり甘いものを堪能して、そろそろ帰ろうかと出口へ向かおうとしたとき。
「あっ!ごめん、買い忘れ!」
「一緒に行く?」
「ううん、すぐ戻るからそこで待ってて!」
「わかった~」
来た道を引き返していった友人を見送って、なまえは近くのベンチに腰かけた。
午後3時を過ぎてもなお、人混みはいっそう増しているような気がする。
なまえはバッグからスマホを取り出し、画面を見る。
俯いていたせいで、こちらに人が向かってきているのに気付かなかった。
「オネーサン、一人で何してんの?」
「えっ?」
不意に声をかけられてなまえは顔を上げる。
するとそこには見知らぬ顔の男が2人。
ナンパ目的なのだろうか、チャラい大学生くらいに見える。
「一人?一緒に遊ばなーい?」
「いや、あの…友達待ってるだけなので」
「冷たいな~。じゃあその友達も一緒にどーお」
なまえは拒否しているつもりなのだが、それでも彼らは食い下がる。
「ちょっと…やめてください!」
「大丈夫だいじょーぶ。何もしないからぁ~」
「ほら!」
腕を無理矢理掴まれる。
気持ち悪くてなまえは声をあげられなくなってしまった。
…嫌だ。怖い…!
掴まれた腕を引っ張られた、そのとき。
「…ギャーギャーやかましーんだよ。発情期ですかコノヤロー」
聞き覚えのある声がした。
振り返ると、そこにいたのは銀八だった。
不意に声をかけられ、片方の男が銀八を睨む。
「何、アンタ?無関係なら黙ってろよ」
「無関係じゃあねェな。人の彼女に何してくれてんの」
「…え?」
彼女って?
そう言いかけたなまえに気付いたのか、銀八はなまえにしか聴こえない小声で「黙ってな」と言ってきた。
「…何だよ。オトコいるのかよ」
「そーそー。わかったら他あたれクソガキ」
「ちっ」
舌打ちして男はなまえの腕を掴んでいた手を離し、一目散に逃げていった。
やっと腕を解放されて、なまえはその場に座り込んだ。
「危ねーところだったな。大丈夫か?」
「坂田先生……大丈夫です、ありがとうございます…。あの、どうしてここに?」
「たまたま来てたんだよ。なーんか見知った顔がいるなーって思って見に来たらって感じ?」
「そうだったんですか…。本当に、助かりました」
安心したなまえは銀八の手を借りて立ち上がる。
掴まれた腕は少し赤くなっていたが、これくらいならすぐに治るだろう。
すると、目の前で銀八はなまえの全身を見ているようだった。
「あの…どうかされました?」
「…いや…。学校じゃあんま見ねェ恰好だからちょっと珍しーなと思って」
「あ……いつもはもっとかっちりしてますからね」
今日の服装はノースリーブのブラウスにフレアスカート、そしてサンダル。
フリルが多めの服は女子力も高そうに見えるだろう、と思って選んだものだ。
学校ではできない恰好だから、余計目新しく見えるのかもしれない。
「あんまり肌見せないほうがいいぜ。野郎はすーぐエロいこと考えるからな」
「…そうですね、すみません」
なまえは頭を下げた。
銀八は笑いながら「怒ってねェよ」と言う。
そしてなまえの頭に手を置いた。
「似合ってるよ、その服」
「…!」
顔を上げると銀八はもうその場をあとにしていた。
大したお礼もできないまま。
それからすぐになまえは友人と合流し、帰ることにした。
帰りの電車に揺られる中、思い出すのは銀八の言葉ばかり。
思いがけず服装を褒められたことが、この夏一番の思い出になりそうだった。
求めて得られる恋もよいものだが、求めずして得られる恋のほうが、なおのことよいのである。
思いがけなく、やってくるものだった。
*
待ちに待ったお盆休み。
その1日を使ってなまえは友人と一緒にできたばかりのショッピングモールへやって来た。
オープンしたてとあって、そこは大勢の客で賑わっていた。
「うわー…すごいね、人が」
「お盆セールなんかもあるからねぇ。さ、行こ!」
人の多さに圧倒されるなまえに対し、友人はその波を掻き分けるように進んでいく。
はぐれないようにしなきゃ、となまえは急いで彼女の後を追った。
店に入って数時間後。
二人は大方の買い物を済ませ、レストラン街にあったカフェで休憩をとっていた。
そこは以前テレビでも紹介されていたパンケーキが評判の店だ。
噂通りのおいしさになまえは感動すら覚えた。
「このケーキ、すっごく美味しい」
「こっちのハニートーストもサイコーだよ~」
美味しいスイーツを堪能しながら楽しそうに会話する二人。
傍らに置かれているのはたくさんのショッピングバッグ。
「いやあ、買ったねぇ」
「もう、買いすぎだよ~」
「いーの!頑張った自分へのご褒美!」
「あははっ!」
しっかり甘いものを堪能して、そろそろ帰ろうかと出口へ向かおうとしたとき。
「あっ!ごめん、買い忘れ!」
「一緒に行く?」
「ううん、すぐ戻るからそこで待ってて!」
「わかった~」
来た道を引き返していった友人を見送って、なまえは近くのベンチに腰かけた。
午後3時を過ぎてもなお、人混みはいっそう増しているような気がする。
なまえはバッグからスマホを取り出し、画面を見る。
俯いていたせいで、こちらに人が向かってきているのに気付かなかった。
「オネーサン、一人で何してんの?」
「えっ?」
不意に声をかけられてなまえは顔を上げる。
するとそこには見知らぬ顔の男が2人。
ナンパ目的なのだろうか、チャラい大学生くらいに見える。
「一人?一緒に遊ばなーい?」
「いや、あの…友達待ってるだけなので」
「冷たいな~。じゃあその友達も一緒にどーお」
なまえは拒否しているつもりなのだが、それでも彼らは食い下がる。
「ちょっと…やめてください!」
「大丈夫だいじょーぶ。何もしないからぁ~」
「ほら!」
腕を無理矢理掴まれる。
気持ち悪くてなまえは声をあげられなくなってしまった。
…嫌だ。怖い…!
掴まれた腕を引っ張られた、そのとき。
「…ギャーギャーやかましーんだよ。発情期ですかコノヤロー」
聞き覚えのある声がした。
振り返ると、そこにいたのは銀八だった。
不意に声をかけられ、片方の男が銀八を睨む。
「何、アンタ?無関係なら黙ってろよ」
「無関係じゃあねェな。人の彼女に何してくれてんの」
「…え?」
彼女って?
そう言いかけたなまえに気付いたのか、銀八はなまえにしか聴こえない小声で「黙ってな」と言ってきた。
「…何だよ。オトコいるのかよ」
「そーそー。わかったら他あたれクソガキ」
「ちっ」
舌打ちして男はなまえの腕を掴んでいた手を離し、一目散に逃げていった。
やっと腕を解放されて、なまえはその場に座り込んだ。
「危ねーところだったな。大丈夫か?」
「坂田先生……大丈夫です、ありがとうございます…。あの、どうしてここに?」
「たまたま来てたんだよ。なーんか見知った顔がいるなーって思って見に来たらって感じ?」
「そうだったんですか…。本当に、助かりました」
安心したなまえは銀八の手を借りて立ち上がる。
掴まれた腕は少し赤くなっていたが、これくらいならすぐに治るだろう。
すると、目の前で銀八はなまえの全身を見ているようだった。
「あの…どうかされました?」
「…いや…。学校じゃあんま見ねェ恰好だからちょっと珍しーなと思って」
「あ……いつもはもっとかっちりしてますからね」
今日の服装はノースリーブのブラウスにフレアスカート、そしてサンダル。
フリルが多めの服は女子力も高そうに見えるだろう、と思って選んだものだ。
学校ではできない恰好だから、余計目新しく見えるのかもしれない。
「あんまり肌見せないほうがいいぜ。野郎はすーぐエロいこと考えるからな」
「…そうですね、すみません」
なまえは頭を下げた。
銀八は笑いながら「怒ってねェよ」と言う。
そしてなまえの頭に手を置いた。
「似合ってるよ、その服」
「…!」
顔を上げると銀八はもうその場をあとにしていた。
大したお礼もできないまま。
それからすぐになまえは友人と合流し、帰ることにした。
帰りの電車に揺られる中、思い出すのは銀八の言葉ばかり。
思いがけず服装を褒められたことが、この夏一番の思い出になりそうだった。