2年Z組銀八先生
ヒロインの名前
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03.6月
Determine that the thing can and shall be done, and then we shall find the way.(リンカーン)
そのことはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ。
よし、勉強しよう。
…って、できるかァァ!!
*
出勤前に観た朝の天気予報で言っていたとおり、その日は午後から雨が降っていた。
梅雨に入ってから毎日雨ばかりで、湿度計は80%を超えている。
なまえは自分の髪をひと房取ってみた。
…心なしかいつもよりまとまりが悪い。
そういう日は気分も下がるものだ。
そう思っているのはどうやら自分だけではないらしい。
「あーホント、梅雨って嫌になるよなァ」
「…そうですね」
「ジメジメして鬱陶しいし、髪は爆発するしさァ」
「…そーですね」
「なまえ先生、聞いてる?」
「…ソーデスネ……え?」
そこでようやくなまえは我に返った。
視線を上げると、向かって座っている銀八が不機嫌そうにこちらを見ている。
頬杖をついてむすっと口を尖らせる様子から、なまえは心の中で「ヤバイ」と感じた。
「人の話はちゃんと聞きなさいって習わなかったんですかァ?」
この男、最近は何かとなまえに構おうとしている気がする。
最初は気遣ってくれているのかと思ってなまえも気を許しかけていた。
そうしているうちに銀八はあれこれと用事を言いつけるようになり、なまえも特に拒まず受け入れてしまっていた。
『このプリント作っといて』
『松平先生に書類持っていって』
『レロレロキャンディのストック買ってきて』
…最後のは一体何なんだ。
従順さに突け込まれた。
なまえからすれば、そんな気分だった。
「…坂田先生、仕事してください」
「ヤダ」
ため息をついて仕方なしに返事をする。
しかし、銀八は頭の後ろで腕を組み椅子の背もたれに寄りかかって背を向けてしまった。
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
子供か…。
そう思いながら席を立つと、丁度予鈴が鳴り始めた。
これはチャンスだと思ったなまえは教科書を取り出入口へ向かう。
「…それでは、私これから授業ですので」
背を向けられているけれども、一応銀八に声をかけておく。
返事はなかったが、その代わりひらひらとこちらに向けて手を振っているのが見えた。
6時限目の授業終了のチャイムが鳴り響いた。
なまえは手に持った教科書を閉じた。
「じゃあ、今日の授業はここまでです。今日の内容はテストに出すから、ちゃんと復習してくださいね」
「みょうじ先生ー、範囲が広すぎて覚えきれませーん」
アイマスクを外して沖田がそんなことを言ってくる。
「普段から真面目に勉強してない人以外はちゃんと覚えられる範囲でーす」
新学期が始まって2か月。
授業を進めるのにも慣れた。そして2Zの生徒たちのペースにも慣れた。
4月の緊張はどこへやら、なまえも意外とすんなり彼らと打ち解けたのだった。
「みょうじ先生、隣町の新しくできたカフェ知ってるアルか?」
「カフェ…? ああ、開店のチラシを見たような」
「今度、みんなで一緒に行こうって話してたんです」
「へぇ、いいなぁ。青春してるね」
神楽とお妙が話しかけてきた。
女子高生らしい話題になまえもつい表情が柔らかくなる。
「でも、もうすぐテストだからね?あんまり寄り道しちゃダメよ」
生徒達は「はーい」なんて言っていたけれど。
信用していいのやら。
6月も半ば。期末考査が始まるのだ。
生徒にとって嫌いなイベントであるが、教師側にとっても憂鬱なイベントである。
前回の中間考査の結果が芳しくなかったせいか、なまえも問題作りを憂鬱に感じていた。
他のクラスはそうでもないのだが、如何せんZ組の成績がよろしくない。
Z組にとってはそう驚く結果ではないらしい…と周囲は言っていた。
しかし教師という存在である以上、なまえはどんな生徒でもちゃんと成績を上げてあげたかった。
「あーあぁ……」
パソコンのキーボードを打つ手を止め、椅子の背もたれに寄りかかった。
やや古い事務椅子はギィと音を立てる。
日常業務にテストの問題作り。
授業がない日も研修に出張…
教員生活が始まってまだ三か月目だが、肉体の疲労はピークを越えていた。
たらりと垂れた前髪をひと房つまむ。
湿気を帯びた髪はだらりと垂れ下がった。。
そういえば、さっき坂田先生も同じことを言ってたっけ。
「…本当、嫌になっちゃう」
小さく呟くと欠伸が漏れた。
一時間後。
「なまえ先生~、いる~?」
ガラガラと音を立ててドアが開く。
声の主は銀八だった。
またなまえをこき使うつもりだったのだろうか、書類の束を抱えている。
「あり?いねーのか?」
ドアを開けただけでは室内を見渡せない。
なまえの不在を確かめるため、銀八は室内へ足を踏み入れた。
室内は散らかっており、あちこちに書類や教科書なんかが積まれている。
少し掠っただけなのに数枚のプリントがひらひらと床に落ちていった。
…そろそろ書類整理しなければ。
「…なまえセンセ……い」
いつもなまえが使っているデスクに近づくと、そこにはなまえの姿があった。
机の上に突っ伏している。
「どうした…」
傍に近寄ると、見えたのはなまえの寝顔だった。
仕事をしているうちに眠ってしまったのだろう。
普段はしっかりしている彼女の寝顔は、やけに幼く見えた。
「…しょうがねェな」
起こそうかとも思ったが、それは可哀想なので寝かせておくことにした。
「自分で思ってるより、オメーは頑張ってるよ」
銀八はいつも着ている白衣を彼女の肩に掛け、自分のデスクに持っていた書類を置く。
なまえにやらせようと思っていた仕事は、ちゃんと自分ですることにした。
Determine that the thing can and shall be done, and then we shall find the way.(リンカーン)
そのことはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ。
よし、勉強しよう。
…って、できるかァァ!!
*
出勤前に観た朝の天気予報で言っていたとおり、その日は午後から雨が降っていた。
梅雨に入ってから毎日雨ばかりで、湿度計は80%を超えている。
なまえは自分の髪をひと房取ってみた。
…心なしかいつもよりまとまりが悪い。
そういう日は気分も下がるものだ。
そう思っているのはどうやら自分だけではないらしい。
「あーホント、梅雨って嫌になるよなァ」
「…そうですね」
「ジメジメして鬱陶しいし、髪は爆発するしさァ」
「…そーですね」
「なまえ先生、聞いてる?」
「…ソーデスネ……え?」
そこでようやくなまえは我に返った。
視線を上げると、向かって座っている銀八が不機嫌そうにこちらを見ている。
頬杖をついてむすっと口を尖らせる様子から、なまえは心の中で「ヤバイ」と感じた。
「人の話はちゃんと聞きなさいって習わなかったんですかァ?」
この男、最近は何かとなまえに構おうとしている気がする。
最初は気遣ってくれているのかと思ってなまえも気を許しかけていた。
そうしているうちに銀八はあれこれと用事を言いつけるようになり、なまえも特に拒まず受け入れてしまっていた。
『このプリント作っといて』
『松平先生に書類持っていって』
『レロレロキャンディのストック買ってきて』
…最後のは一体何なんだ。
従順さに突け込まれた。
なまえからすれば、そんな気分だった。
「…坂田先生、仕事してください」
「ヤダ」
ため息をついて仕方なしに返事をする。
しかし、銀八は頭の後ろで腕を組み椅子の背もたれに寄りかかって背を向けてしまった。
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
子供か…。
そう思いながら席を立つと、丁度予鈴が鳴り始めた。
これはチャンスだと思ったなまえは教科書を取り出入口へ向かう。
「…それでは、私これから授業ですので」
背を向けられているけれども、一応銀八に声をかけておく。
返事はなかったが、その代わりひらひらとこちらに向けて手を振っているのが見えた。
6時限目の授業終了のチャイムが鳴り響いた。
なまえは手に持った教科書を閉じた。
「じゃあ、今日の授業はここまでです。今日の内容はテストに出すから、ちゃんと復習してくださいね」
「みょうじ先生ー、範囲が広すぎて覚えきれませーん」
アイマスクを外して沖田がそんなことを言ってくる。
「普段から真面目に勉強してない人以外はちゃんと覚えられる範囲でーす」
新学期が始まって2か月。
授業を進めるのにも慣れた。そして2Zの生徒たちのペースにも慣れた。
4月の緊張はどこへやら、なまえも意外とすんなり彼らと打ち解けたのだった。
「みょうじ先生、隣町の新しくできたカフェ知ってるアルか?」
「カフェ…? ああ、開店のチラシを見たような」
「今度、みんなで一緒に行こうって話してたんです」
「へぇ、いいなぁ。青春してるね」
神楽とお妙が話しかけてきた。
女子高生らしい話題になまえもつい表情が柔らかくなる。
「でも、もうすぐテストだからね?あんまり寄り道しちゃダメよ」
生徒達は「はーい」なんて言っていたけれど。
信用していいのやら。
6月も半ば。期末考査が始まるのだ。
生徒にとって嫌いなイベントであるが、教師側にとっても憂鬱なイベントである。
前回の中間考査の結果が芳しくなかったせいか、なまえも問題作りを憂鬱に感じていた。
他のクラスはそうでもないのだが、如何せんZ組の成績がよろしくない。
Z組にとってはそう驚く結果ではないらしい…と周囲は言っていた。
しかし教師という存在である以上、なまえはどんな生徒でもちゃんと成績を上げてあげたかった。
「あーあぁ……」
パソコンのキーボードを打つ手を止め、椅子の背もたれに寄りかかった。
やや古い事務椅子はギィと音を立てる。
日常業務にテストの問題作り。
授業がない日も研修に出張…
教員生活が始まってまだ三か月目だが、肉体の疲労はピークを越えていた。
たらりと垂れた前髪をひと房つまむ。
湿気を帯びた髪はだらりと垂れ下がった。。
そういえば、さっき坂田先生も同じことを言ってたっけ。
「…本当、嫌になっちゃう」
小さく呟くと欠伸が漏れた。
一時間後。
「なまえ先生~、いる~?」
ガラガラと音を立ててドアが開く。
声の主は銀八だった。
またなまえをこき使うつもりだったのだろうか、書類の束を抱えている。
「あり?いねーのか?」
ドアを開けただけでは室内を見渡せない。
なまえの不在を確かめるため、銀八は室内へ足を踏み入れた。
室内は散らかっており、あちこちに書類や教科書なんかが積まれている。
少し掠っただけなのに数枚のプリントがひらひらと床に落ちていった。
…そろそろ書類整理しなければ。
「…なまえセンセ……い」
いつもなまえが使っているデスクに近づくと、そこにはなまえの姿があった。
机の上に突っ伏している。
「どうした…」
傍に近寄ると、見えたのはなまえの寝顔だった。
仕事をしているうちに眠ってしまったのだろう。
普段はしっかりしている彼女の寝顔は、やけに幼く見えた。
「…しょうがねェな」
起こそうかとも思ったが、それは可哀想なので寝かせておくことにした。
「自分で思ってるより、オメーは頑張ってるよ」
銀八はいつも着ている白衣を彼女の肩に掛け、自分のデスクに持っていた書類を置く。
なまえにやらせようと思っていた仕事は、ちゃんと自分ですることにした。