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10年越しの再会

―10年前、アースランドの妖精の尻尾― 

今日は、バレンタインデー 
好きな男の人に気持ちを込めた 
チョコレートをあげる日で…… 

「…できた…っ」 

他の皆さんは、もうチョコを作り終えていて、 
私は……ようやく作る事ができて… 

他の皆さんに好きな人がいるように、 
私にも…好きな人が……会いたい人がいる… 

「……ミストガン…」 

だけど、彼は別の世界の人で…… 
エドラスに戻ってしまったから、 
もう…会いたいと思っても…… 

「どうしたの?ウェンディ」 
「シャルル……ハッピーにはチョコ、渡せたの?」 

必死に笑顔を作って、尋ねた。 

「なっ!どうして私がハッピーなんかに…!」 
「傍にいるんだから、 
ちゃんと渡さないとダメだよ…?」 

―いなくなってからじゃ、もう遅いから…― 

「…ウェンディ」 
「なぁに?」 
「そのチョコ……」 
「っ!!」 

遅いだろうけど、急いで後ろ手に隠した。 

「……それ、ジェラールって奴に渡す気?」 
「…『ジェラール』には、エルザさんがいるよ?」 
「違うわよ、もう一人の方」 
「!」 
「…ミストガン…だったわね」 
「……渡せないよ…」 
「ウェンディ…」 
「…ごめんね、シャルル…… 
私、少し一人になりたいの…」 
「わかったわ……ごめんね…」 

ラッピングしたチョコを傍に置いて、 
いつの間にか私は眠っていた… 

*~*~*~*~*~*~* 

「………」 

自分が眠りに落ちているのが分かった。 
…だが―――…自分がいるのは、 
アースランドの妖精の尻尾……それも、 
ウェンディの部屋で……しかも何故か 
自分は昔のように複数の杖を背負っていて…… 

「……ウェン…ディ…?」 
「………」 

眠る彼女の頬には涙の跡があった… 
ふと、可愛らしくラッピングされた 
小さな箱が目に入った。 

「…これは……」 
「……ジェラー……ル……」 
「!」 
「……会いたい…よ……」 
「ウェンディ…」 

ラッピングを解き、箱を開けると… 
『ジェラール ずっと大好きだよ』 
と書かれたチョコが姿を現した。 

「………ありがとう、ウェンディ…」 

チョコにかじりつくと、広がったのは 
甘味と、その中に潜む僅かな苦味… 

「………」 

杖を持っているという事は 
恐らく今だけは魔法が扱えるはず… 
俺は眠る彼女に、手紙を書いた… 

*~*~*~*~*~*~* 

「……ん…」 

私、寝ちゃってたんだ……あれ? 
チョコの箱が空になってる… 
……仕方ないよね、渡す事はできないから… 

「……?」 

なんで手紙が浮いてるの…? 
私はその手紙を取って、読んだ… 
書かれていたのは……… 

『君が眠っている間に 
チョコを食べさせてもらった。 
とても、美味しかった…… 

俺も、君の事が好きだ 

ミストガン』 

「………え…」 

次の瞬間、感じたのは… 
ミストガン……ジェラールの、匂いで… 

―…また、いつか会えるといいな…― 

「っジェラール…?」 

匂いはすぐに消えてしまったけれど、 
確かに聞こえたジェラールの声… 

「……ジェラール…、 
私……絶対に会いに行くから…。 
だから…待っててね…?」 

私がアースランドから 
エドラスに渡る事になるのは、 
それから約10年後の事だった… 
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