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幸福の天使

黙々と、朝食を食べています。 
………食べ終わった!…よし…! 

「ジェラール」 
「どうした?」 
「ジェラールは、本当に意地悪だよね」 
「…どこが、どういう風に意地悪なんだ?」 
「…!そういうところ、だよ…」 
「…?」 
「わからない振りとか、 
起きてるのに寝てる振りとか……… 
じ、焦らすの…とか……っ」 
「…そうした方が可愛いウェンディを見れるからな」 
「ジェ……ッ!!」 

向かい合って座っていた 
ジェラールが立ち上がって…… 

「…ウェンディ」 
「………」 

目の前に立ってる……嫌な予感が… 

「……ジェラー…!!」 

言葉が途切れた。 
理由は、至近距離にジェラールの顔が 
移動してきたからで………唇が触れる1秒前…? 

…何もしてこないから、 
自分から唇を押し付け…たら、 
後頭部を押さえられて………えぇ~~っ!!? 

………酸欠寸前になるくらい、 
長い時間その状態でした… 

「…可愛いな」 
「……黒いね…」 

*~*~*~*~*~*~* 

―アースランド・天狼島― 

大木に凭れ掛かり、海を眺めている黒髪の青年… 

「……ナツ…」 

呟いた言葉は風に掻き消された。 

「また海を……いえ、 
その向こうを見ているのですか?」 
「!」 

凭れ掛かっている大木の枝に、 
重力を無視したように乗っている 
ウェーブのかかった金髪に 
天使の羽の髪飾りを着けた少女。 

「…メイビス」 
「また悲しい顔をして…… 
それでは昔と同じですよ、ゼレフ」 
「……君には感謝をしているよ。 
世界が僕を拒まなくなって、 
それでも居場所のない僕を 
此処にいさせてくれているから…」 
「妖精の尻尾にいる『彼』にも、 
いつでも会えますしね…」 
「……うん」 

ほんの少し、笑みが零れたゼレフ 

「ようやく笑ってくれましたね」 
「……ぁ…」 

枝から飛び降り、ゼレフの隣に着地したメイビス。 
身長差から彼女は彼を見上げる形になる。 

「どうか絶望ではなく、希望を見出だして下さい。 
今の貴方なら、それが可能な筈ですよ?」 

満面の笑みを浮かべたメイビスにゼレフは… 

「僕が過去に奪った沢山の命… 
…だけど希望なら、既に見出だしてるよ…」 
「本当ですか?それはよかったです」 
「…君が希望になってくれたから…」 
「……私が希望、ですか? 
ありがとうございます、ゼレフ。 
…さて、この嬉しい出来事を 
三代目に伝えに行きましょうか」 
「え…?」 

間抜けな声を出した時には、 
既に足元の魔法陣が輝いていて 

「行きましょう?」 
「…うん」 

差し出された手を躊躇いがちに取った時、 
転移魔法が発動し……天狼島から 
二人の姿は消えていた…
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