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幸福の天使

ジェラールにからかわれて、 
暫く真っ赤な顔をしていたら 
大好きな匂いを嗅ぎ取った。 

「グランディーネ…」 

現れたのは人の形をした思念体……それでも、 
私のお母さんである事に変わりはなくて…… 

『ウェンディ?』 
「あのね、ジェラールが―――…」 

*~*~*~*~*~*~* 

今、ウェンディがミスティに授乳をしている… 
口を離したミスティを見ると、俺に見られている事に 
気付いたのか慌てて衣服を着直した。 

「……っ…」 

ミスティをベビーベッドに寝かせ、 
ほんのり赤く染まった顔でベッドに潜り込んできた… 

「……ジェラール…」 
「ウェンディ」 
「?」 

俺は彼女を抱きしめて、そのまま倒れ込んだ。 

「っ!」 

視線を彼女の目から唇へと移し、 
顔を近付け……ゆっくりと唇を重ねた… 

「愛している…」 
「……うん」 
「……返事は?」 
「…え?」 
「君からの返答がまだなのだが…」 
「っ!」 

更に赤くなった頬を両手で包み込み、 
唇が触れるか触れないかの位置まで顔を近付けた。 

「………好き…」 
「よく聞こえなかった…」 
「……大、好き…っ」 
「俺もだ」 

そう言って唇を重ね、抱きしめた… 

「っっ…!」 
「…おやすみ、ウェンディ…」 
「……うん…」 

*~*~*~*~*~*~* 

目が覚めた。だが、目の前にいるのは… 

「…義母上…?」 
『………』 

…とりあえず、相当怒っているようだ。 
なんとなく空気が震えているような…… 

『…ジェラール』 
「…はい」 
『あまりウェンディをからかわないであげて』 
「…?」 
『可哀相で堪らないわ』 
「………」 
『……………』 

無言で口を開け、放たれた咆哮… 
……凄まじい激痛が残された… 

「……グランディーネっ!?」 
『…ウェンディ』 
「ジェラール!大丈夫っ!?」 
「……ああ…」 

体中痛くて立ち上がる事すらできないが… 

「治癒魔法…!」 

体中の痛みが少しずつ引いていく… 

『…ジェラール、また何かあったら…… 
わかって、いるわよね…?』 
「……はい」 
『ウェンディ、後はよろしく頼むわ』 
「!う、うん…」 

義母上の気配が消えた… 

「…ごめんね、ジェラール…」 
「何故、君が謝るんだ…?」 
「私が今日の出来事、 
グランディーネに話したりしたから……」 
「……いや、大丈夫だ。 
遅かれ早かれ、いずれこうなっていた」 
「…?」 

不思議そうな彼女を、ようやく 
動くようになった体で抱きしめた。 

「止める気は、ないのだから…… 
こういう事はこれからも起きる」 
「…え……」 

固まったウェンディの耳朶を、甘噛みすると 

「ひゃ…っ!?」 

可愛らしい反応が返ってきた。 
…そして同時に殺気を感じた… 

「………帰ろうか」 
「……うん。またね、グランディーネ!」 

彼女がそう言うと、優しい風が吹いた… 

………義母上は怖いが、俺はウェンディを愛している 
…そして彼女を『からかう』ことを 
止めるつもりは全くない。…義母上からの 
厳しい仕打ちは覚悟しておこうと思う… 
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