10年越しの再会
―エドラスから魔力が失われて、10年―
「―――すみません…
お聞きしたいことがあるのですが…」
城の門番に話し掛けたのは
淡い色のフードを深くかぶった女性だった…
フードの隙間からは隠し切れない
紺色の長い髪がサラサラと流れていた
「怪しい奴だな…」
「…この城に、ミストガ………
いえ、ジェラール陛下はおられますか?」
「…何故、お前のような不審者が
陛下に会おうとする…?」
「…私は17年前、親に捨てられ
路頭に迷っていたところを
陛下に救って頂きました…
だから…御礼を言いたいのです」
「………城に入ることは許すが
不審者として捕らえたということにさせてもらう…」
「はい、それで構いません…」
「では、着いて来い」
「はい…
(ミストガン……やっと、会えるんだね…)」
*~*~*~*~*~*~*
私はジェラール……エドラス王国の王だ
「……父上、何故…貴方は
あのようなことを言ったのですか…?」
*~*~*~*~*~*~*
少し前に連れ戻した父は病魔に蝕まれていた…
「おお……ジェラール、か…」
「父上…」
衰弱しきった体は…父の命が
もう長くないことを示していた…
「儂は、夢を見た…」
「夢…?」
「…10年前、儂の野望を砕いた3人の滅竜魔導士…」
「………」
「その中に…少女がいた筈だ…」
「…ウェンディがどうかしたのですか?」
「夢の中で…その少女が儂に語り掛けてきたのだ…
『もうすぐ、そっちに行くから…
だから…待っててね、ジェラール』と言っていた…」
「…!ウェンディが……?」
「…お前はあの少女のことを
今も尚、愛しているのだろう…?
……儂の…最期の……願い…だ…
せめて……幸せに………なりなさ………
…………………………」
私の手から父上の手が力なく滑り落ちた…
「っっ………父上っ!!」
何度呼びかけても返事はなかった…
私の父であり前国王でもあった
ファウストは……今、息を引き取った…
*~*~*~*~*~*~*
「……ウェンディ…
君は、本当に来る気なのか……?」
私の私室に向かって来る足音が聞こえた…
人数は……3人、か…?
2人は兵士、もう1人は……誰だ?
「…失礼します、陛下
不審者を捕まえたのですが…
この者はどう致しましょう…?」
「……………」
入ってきたのは兵士2人と
フードを表情が確認できない程深くかぶった
体のラインから女性と分かる少し小柄な人物…
女性のフードからは紺色の長い髪が
サラサラと流れていた…
「………(まさか…)」
「……ミスト…ガン……なの…?」
「!」
女性の口から零れたのは、柔らかな声…
その人物が呼んだのはアースランドで
私が正体を隠す為に使っていた名で……
その声を聞いて、私は一歩、また一歩と歩み寄った…
「ミストガン…?何を言っているんだ、この女は!
この方は!ジェラール陛下だ!」
「…知っています
17年前…陛下は私にそう名乗ったのですから…」
「そうか……知った上で違う名を呼んだのか……
…その罪、万死に値する!」
兵の1人が剣を振り上げるのが見えた
「待て!」
剣の切っ先がフードの女性に………
「っウェンディ!!」
ウェンディが口元を緩めるのが分かった
隠し持っていたナイフで剣の矛先をずらし
剣が衣服を少し切り裂くのも構わず、
私の元へ走り寄ってきた…
「ミストガンっ!」
そう言ってウェンディは私に抱きついてきた…
勿論、私はそれをしっかりと受け止めた
抱きついた拍子にフードが外れ
隠されていた顔が露になった
鳶色の大きな瞳…
紅く上気した頬…
薔薇色の唇…
間違いなく、私が別れても尚
愛し続けたウェンディ・マーベルだった…
「陛下!その女からお離れ下さい!」
「…いや、この娘は私の知り合いだ
少し二人で話をする時間が欲しい……人払いを頼む」
「わ、わかりました!おい、行くぞ!」
「あ、ああ…」
兵士達は去って行った…
「……ミストガン…」
「ウェンディ……綺麗になったな…」
「ミストガンは…王様っぽくなったね」
「ところで、どうやって
アースランドからエドラスに来たんだ…?」
「…空間を捩曲げる魔法を
ある魔導士に使って貰ったの…」
「そうか、妖精の尻尾の皆は…?」
「………」
「…ウェンディ?」
「私一人で来たの…」
「……一人で…?」
「…うん、皆…結婚したからね…」
「結婚?」
「ナツさんには幼なじみのリサーナさん
ルーシィさんには星霊でもあるロキさん
グレイさんにはジュビアさん
ミラさんにはフリードさん
エルフマンさんにはエバーグリーンさん
ガジルさんにはレビィさん
アルザックさんにはビスカさん
そして、エルザさんには…
アースランドのジェラール…
…皆が幸せになっていくのを見て
私は胸が苦しくなっていくのが分かったの…
どうして私は幸せになれないんだろう…
アースランドにもジェラールはいるけれど
彼はエルザさんのことが好きだったから…
私が大好きだったジェラー………ん~ん、
ミストガンに会いたいな…って思ったの…」
「ウェンディ…」
「どうしたの?ミストガン」
「私は、ジェラールだ…」
「…え?」
「また昔のように…
ジェラールと呼んでくれないか…?」
「……ジェラー…ル…っ」
ウェンディは私の背中に腕を伸ばしてきた
「ウェンディ……リリーと…シャルル、
あの二人はどうしている?」
「リリーは相棒のガジルさんを見守ってるよ
シャルルとハッピーも結婚したんだ…」
「アースランドには…戻れるのか?」
「……戻る方法なんか無いよ…
妖精の尻尾を脱退して…
皆、少し悲しんでたけれど…
笑顔で送り出してくれた…
…あと、グランディーネと別れるのも辛かった…」
「グランディーネ?」
「天竜グランディーネ…
私に滅竜魔法を教えて育ててくれた…お母さん…」
「………」
「『どんなに離れてしまっても
例え一生会うことが出来なくても貴女は私の娘……
だから、幸せになりなさい』って…」
「ウェンディ……すまない…」
「…ジェラール……大好きだよ…」
「……私もだ…」
その後ウェンディを解放して
城の散歩をさせたのだが…
散歩を終えて帰ってきた
ウェンディは顔を真っ赤にしていた
……人払いを頼んだはずだったが何故か城中の人間に
一部始終を見られてしまったようで
かなりの人数に質問攻めにされたらしい…
『陛下にはこんな素敵な恋人がいたのか』やら
『結婚はいつですか』やら…
「……………」
「ウェンディ」
「…?」
「私と結婚してくれないか?」
「っっ………!!?」
顔がこれ以上ないという程真っ赤になった
「駄目か…?」
「ぇ……あ、その…っ!」
「…ウェンディ……」
「…ジェラー…ル?」
ウェンディの耳元に唇を寄せ…
「愛している」
そう囁いた…
直後に耳まで真っ赤になった
ウェンディは倒れてしまった
…すぐに返事を聞くことができなかったのは残念だが
目覚めた時の彼女の反応が楽しみで
自分のベッドにそっと横たわらせた…
ウェンディの額にキスを落とし
傍のソファーに腰掛け
彼女が目覚めるのを待つことにした…
「―――すみません…
お聞きしたいことがあるのですが…」
城の門番に話し掛けたのは
淡い色のフードを深くかぶった女性だった…
フードの隙間からは隠し切れない
紺色の長い髪がサラサラと流れていた
「怪しい奴だな…」
「…この城に、ミストガ………
いえ、ジェラール陛下はおられますか?」
「…何故、お前のような不審者が
陛下に会おうとする…?」
「…私は17年前、親に捨てられ
路頭に迷っていたところを
陛下に救って頂きました…
だから…御礼を言いたいのです」
「………城に入ることは許すが
不審者として捕らえたということにさせてもらう…」
「はい、それで構いません…」
「では、着いて来い」
「はい…
(ミストガン……やっと、会えるんだね…)」
*~*~*~*~*~*~*
私はジェラール……エドラス王国の王だ
「……父上、何故…貴方は
あのようなことを言ったのですか…?」
*~*~*~*~*~*~*
少し前に連れ戻した父は病魔に蝕まれていた…
「おお……ジェラール、か…」
「父上…」
衰弱しきった体は…父の命が
もう長くないことを示していた…
「儂は、夢を見た…」
「夢…?」
「…10年前、儂の野望を砕いた3人の滅竜魔導士…」
「………」
「その中に…少女がいた筈だ…」
「…ウェンディがどうかしたのですか?」
「夢の中で…その少女が儂に語り掛けてきたのだ…
『もうすぐ、そっちに行くから…
だから…待っててね、ジェラール』と言っていた…」
「…!ウェンディが……?」
「…お前はあの少女のことを
今も尚、愛しているのだろう…?
……儂の…最期の……願い…だ…
せめて……幸せに………なりなさ………
…………………………」
私の手から父上の手が力なく滑り落ちた…
「っっ………父上っ!!」
何度呼びかけても返事はなかった…
私の父であり前国王でもあった
ファウストは……今、息を引き取った…
*~*~*~*~*~*~*
「……ウェンディ…
君は、本当に来る気なのか……?」
私の私室に向かって来る足音が聞こえた…
人数は……3人、か…?
2人は兵士、もう1人は……誰だ?
「…失礼します、陛下
不審者を捕まえたのですが…
この者はどう致しましょう…?」
「……………」
入ってきたのは兵士2人と
フードを表情が確認できない程深くかぶった
体のラインから女性と分かる少し小柄な人物…
女性のフードからは紺色の長い髪が
サラサラと流れていた…
「………(まさか…)」
「……ミスト…ガン……なの…?」
「!」
女性の口から零れたのは、柔らかな声…
その人物が呼んだのはアースランドで
私が正体を隠す為に使っていた名で……
その声を聞いて、私は一歩、また一歩と歩み寄った…
「ミストガン…?何を言っているんだ、この女は!
この方は!ジェラール陛下だ!」
「…知っています
17年前…陛下は私にそう名乗ったのですから…」
「そうか……知った上で違う名を呼んだのか……
…その罪、万死に値する!」
兵の1人が剣を振り上げるのが見えた
「待て!」
剣の切っ先がフードの女性に………
「っウェンディ!!」
ウェンディが口元を緩めるのが分かった
隠し持っていたナイフで剣の矛先をずらし
剣が衣服を少し切り裂くのも構わず、
私の元へ走り寄ってきた…
「ミストガンっ!」
そう言ってウェンディは私に抱きついてきた…
勿論、私はそれをしっかりと受け止めた
抱きついた拍子にフードが外れ
隠されていた顔が露になった
鳶色の大きな瞳…
紅く上気した頬…
薔薇色の唇…
間違いなく、私が別れても尚
愛し続けたウェンディ・マーベルだった…
「陛下!その女からお離れ下さい!」
「…いや、この娘は私の知り合いだ
少し二人で話をする時間が欲しい……人払いを頼む」
「わ、わかりました!おい、行くぞ!」
「あ、ああ…」
兵士達は去って行った…
「……ミストガン…」
「ウェンディ……綺麗になったな…」
「ミストガンは…王様っぽくなったね」
「ところで、どうやって
アースランドからエドラスに来たんだ…?」
「…空間を捩曲げる魔法を
ある魔導士に使って貰ったの…」
「そうか、妖精の尻尾の皆は…?」
「………」
「…ウェンディ?」
「私一人で来たの…」
「……一人で…?」
「…うん、皆…結婚したからね…」
「結婚?」
「ナツさんには幼なじみのリサーナさん
ルーシィさんには星霊でもあるロキさん
グレイさんにはジュビアさん
ミラさんにはフリードさん
エルフマンさんにはエバーグリーンさん
ガジルさんにはレビィさん
アルザックさんにはビスカさん
そして、エルザさんには…
アースランドのジェラール…
…皆が幸せになっていくのを見て
私は胸が苦しくなっていくのが分かったの…
どうして私は幸せになれないんだろう…
アースランドにもジェラールはいるけれど
彼はエルザさんのことが好きだったから…
私が大好きだったジェラー………ん~ん、
ミストガンに会いたいな…って思ったの…」
「ウェンディ…」
「どうしたの?ミストガン」
「私は、ジェラールだ…」
「…え?」
「また昔のように…
ジェラールと呼んでくれないか…?」
「……ジェラー…ル…っ」
ウェンディは私の背中に腕を伸ばしてきた
「ウェンディ……リリーと…シャルル、
あの二人はどうしている?」
「リリーは相棒のガジルさんを見守ってるよ
シャルルとハッピーも結婚したんだ…」
「アースランドには…戻れるのか?」
「……戻る方法なんか無いよ…
妖精の尻尾を脱退して…
皆、少し悲しんでたけれど…
笑顔で送り出してくれた…
…あと、グランディーネと別れるのも辛かった…」
「グランディーネ?」
「天竜グランディーネ…
私に滅竜魔法を教えて育ててくれた…お母さん…」
「………」
「『どんなに離れてしまっても
例え一生会うことが出来なくても貴女は私の娘……
だから、幸せになりなさい』って…」
「ウェンディ……すまない…」
「…ジェラール……大好きだよ…」
「……私もだ…」
その後ウェンディを解放して
城の散歩をさせたのだが…
散歩を終えて帰ってきた
ウェンディは顔を真っ赤にしていた
……人払いを頼んだはずだったが何故か城中の人間に
一部始終を見られてしまったようで
かなりの人数に質問攻めにされたらしい…
『陛下にはこんな素敵な恋人がいたのか』やら
『結婚はいつですか』やら…
「……………」
「ウェンディ」
「…?」
「私と結婚してくれないか?」
「っっ………!!?」
顔がこれ以上ないという程真っ赤になった
「駄目か…?」
「ぇ……あ、その…っ!」
「…ウェンディ……」
「…ジェラー…ル?」
ウェンディの耳元に唇を寄せ…
「愛している」
そう囁いた…
直後に耳まで真っ赤になった
ウェンディは倒れてしまった
…すぐに返事を聞くことができなかったのは残念だが
目覚めた時の彼女の反応が楽しみで
自分のベッドにそっと横たわらせた…
ウェンディの額にキスを落とし
傍のソファーに腰掛け
彼女が目覚めるのを待つことにした…
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