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プロローグ・鬼殺隊に入るまで


舟は3日後に発つ。
とりあえず、この船と船乗り達とはおさらばだ。
日本の首都(トウキョウというらしい)へ行き、亡命者である外国人の自分が住んでいけるのかを判断したい。

やっていけそうになければ、また貿易船で別の国へ行く。
外国人でもやっていける仕事があれば、そのまま居座る。
自分の外見はヨーロッパの北の国そのものだが、ヨーロッパのいくつかの言語も英語も話せるし、文化歴史も勉強した。外見さえクリアできれば、どこの国の人にでもなれる自信があった。
しかし日本語や日本文化はまだ未熟の上に、これだけ人種に違いがあると外見をごまかせない。

荷運びをしている途中で、〇〇はフラッと人混みの中に混ざっていった。
外見が目立つため、布をフードに見立てて被った。

港町にいた、他の船乗りと思われる外国人に英語で駅の場所を聞き回り、
やっと駅を見つけた。
さすが大きな街とあって、人が多い。

そこで気づいた。
自分は日本円を持っていない。
近くにちょうど貴金属のものを売っている路面店があったので入った。店主のおじいさんが座っていた。
自分が持っている宝石付きのブレスレットを買ってくれないだろうか。

日本語がわからないため、身振り手振りだ。

コンニチハ。これ、これ…

あんた、それ売りたいのかい?
ちょっと見せてくれ。

と言ってメガネでじろじろ見る。

これはすごい。本物だ。あんた服装に見合わず良いもの持ってるね。ぜひ買い取らせてくれ。

そう言うと、日本円をたんまりくれた。


上手くいって安心して店を出て、駅に入る。

路線図を見ると、殆どの線路は一つの大きな駅に向かっていた。
ヨコハマからトウキョウはそう離れていない。
これがトウキョウの駅だろう。

それにしてもなんて複雑な字なんだろうか。カンジって大変だな…

そんなことを思いながらも、天性の才に恵まれている〇〇は、一度見ただけでもその漢字の形を覚えた。
漢字には案外困らなかった。

東京駅行きの電車に乗り、席に座る。
近くの席に座っていた子供が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。

この国は本当に、外国人が珍しいのね…。これだけ人種の外見が違うと大変…。

ヨーロッパは陸続きで、外国人など何も珍しくなかったのだ。本当にやっていけるのだろうか。
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