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プロローグ・鬼殺隊に入るまで

心をなんとか保ち、首都の大きな駅に着いた。
陸続きの国外へ行くため、夜間走行の汽車に乗り込む。


○○には考えがあった。
どうせ亡命して遠くへ逃げなければならないのなら・・。
昔から興味のあった日本という国へ行きたい。
隣国に、日本と頻繁に貿易している国がある。
この汽車の目的地は、その国だ。

寝台で数日過ごし、国境は汽車で超えた。初めての国外だった。
隣国の地図は頭に入っているし、言語も習得済みのため不安はなかった。幼い頃からの教育で、○○は6ヶ国語話すことができる。


汽車から降りたこの国でまた男装をし、貿易船の船乗りを装って行くことにした。
あまりゆっくりはしていられない。
なぜなら、ホルモン剤を断ってから日が経つにつれ身体つきはどんどん女性になっていく。今はまだなんとか中性的な身体に留まっていた。
あまりにも女性らしい身体つきでいたら、船乗りに怪しまれる。
焦りを感じた。


街にくり出すと、弟へのプレゼントだと言って男性用の服を買い込む。
飲食店のトイレで着替え、今まで着ていたドレスはゴミに捨てた。

公共の交通を駆使し、なんとか港町にたどり着いた。宿泊施設に泊まり、日本行きの貿易船について情報収集をする。

どうやら2週間に1回、日本を往き来している大きな船がこの町に来るらしい。

それまでは情報収集と船乗りの観察をして過ごした。

ある日、かなり大きな船が港に停まった。
あれに違いない。
〇〇は早速、新人船乗りのフリをしてしれっと乗り込んだ。


そこの坊主、何突っ立ってんだ。新人か?とにかくこれを運べ。

予想通り声をかけられた。
荷運びをしながら話をしてみる。

次はいつ日本へ行くのですか?僕は新人でよくわからなくて。

3日後の朝だ。そんなヤワそうな体して。長旅だから覚悟しておけよ。


出航した日の夜、ガラの悪い船乗りに絡まれた。
〇〇は体術も巧みだったためすぐに勝負はつき、それ以来誰も手をあげようとしなかった。
体術は父に教わったと適当に取り繕った。

城での訓練や勉強、大変だったけどすごい役立ってるな…
母や城内の教育係や使用人たちを思い出し、しんみりした気持ちになった。


1番初めに声をかけてくれた船乗りは親戚で、他にも色々教えてくれた。
船上の生活や、外国のこと。

〇〇はここぞと言わんばかりに、日本について聞いた。
日本の挨拶。日本人は自分たちと外見が全く異なり、殆どが黒髪で背が低く小さいこと。街ではやたら「イホウジン」と言ってじろじろ見てくること等…たくさん話してもらった。


いくら城で外交の勉強してきたといえど、
遠い国である日本について勉強する必要性も無ければ、城内に日本に詳しい人間もいなかった。しかも、日本に興味があるだなんて誰にも言えなかった。


お前はなぜそんなに日本に興味あるんだ?

いや、ほら遠い国ってなんだか憧れるじゃないですか。それだけですよ。

適当な理由を返したが、真実だった。
こんなに苦労して日本に行こうとしているのに、ただ一般的な憧れだけできたのだ。
身の保証があるわけでもないのに…。

期待と不安が入り混じった夜を何日か過ごした。



途中でエネルギーや食料の調達をしながら、待ち望んでた時がついに来た。
日本の港町に到着。「ヨコハマ」という街らしい。

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