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プロローグ・鬼殺隊に入るまで

陛下、各地で不満の声が上がっています。これ以上先延ばしは危険です。
どうか怒りをお鎮め下さい。

家臣の深刻な表情は、王には1ミリも響かなかった。

それがどうした。この城の警備は万全だ。
もし反乱がここに押し寄せてきたら、皆殺しにすればいいだろう。


数日後。

陛下!反乱が起きました!
首謀者はマクレーン家の長男です!


〇〇が14歳の誕生日を迎える4ヶ月前、反乱が起きた。


母上、僕も戦います!

駄目よ。隣国の騎士団長に密書を送ったわ。援軍が来たらあちらに向かいましょう。


それって…
僕に、逃げろと?

そうよ。あなたをここで無駄死にさせるわけにはいかない。


僕は、母上の理想の王子として生きてきた。
でもこれでは…国も民も見捨て逃げたら…
今までの13年間は何だったのですか。

そんな思いは、口から出ることはなかった。
きっと自分は自分自身を許せないだろうし、一体何が残るのだろう。




民の反乱が起きて籠城戦が始まって1ヶ月。
王は酷くなる病と精神病で自暴自棄になり、兵士や民の前に一度も現れなかった。
助言する伯爵は斬首刑にされていた。


どれほど民が犠牲になっているか…
もう陛下は国を見限っている。
しがみつく理由もない。

そんな話が城内を取り巻いていた。


そんなある日の夜中。

王妃様‼︎大変です‼︎

物凄い剣幕で使用人の1人が、王妃の急に部屋に入ってきた。

こんな時間にどうしたの?

城門を反乱軍の兵士が突破しました!
王はすでにお亡くなりに…
ここも時間の問題です、今すぐお逃げください‼︎

なんですって⁈

今まで何のために耐えてきたのだろう。
一瞬でそれは水の泡になった。
こんなところで終わってしまうなんて…!

…でも、あの子は違う。
あの子さえ生きていてくれれば…。

王族は逃げられないが、
あの子が女であることを知っているのは、今はもう私だけだ。
出産時の乳母や医者は全員、葬った。
完璧に隠したのだから。


〇〇‼︎
探しにいくと、城の敷地内で剣の素振りをしていた。

〇〇‼︎
今すぐ服を着替えなさい!そこの使用人、服を取り替えて!

?!人前で何を言ってるのですか!母上!

反乱軍がもうすぐここに来るわ。あなたは秘密通路から逃げなさい。
あなたは女として、しっかり生きて見届けるのよ。

そんな!母上、僕は…!

お願いよ。普通の女の子として生きて…

気が強い母の、見たこともないような弱々しい笑顔。
何も言い返せず、服と鞄を受け取った。
鞄は王妃がいざという時のためにこっそり用意していたもので、中にはお金と宝石類、偽装のパスポートが入っていた。

こんなの、ひどすぎる…


王子としてのあなたは、ここで死んだの。
この剣を見れば納得いくはず。
〇〇、最後まで私の勝手に付き合わせてごめんなさいね。

母の顔にツーっと、涙が流れた。

幸せになるのよ。

そう言って王妃は〇〇の体を押し、重い扉を閉めた。

母上…!開けてください!!
ドンドンと叩くも、城の重く大きな石扉はびくともしなかった。


城内。

…知られてはいけないから。あなた達も、ごめんなさいね…
どんな罰も、受け入れます…

服を取り替えた使用人に王子の剣を渡し、王妃は火を放った。


石扉の向こうで、〇〇は肉が焼けつく匂いを嗅ぎながら泣き倒れるしかなかった。
この夜、帝国は崩壊し、統一前と同じように国はバラバラになった。
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