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プロローグ・鬼殺隊に入るまで

ヨーロッパの、寒い地域。
元は複数の国が統一されできた、帝国。

先王ゲッシュタルト4世は史上例を見ない暴君であった。
思うがままに政策を変更、金遣いの荒さで民を搾取。

彼は飽きっぽく、それはどんなに美しい女性に対しても同じでもった。
1人目の王妃は牢獄、2人目は殺された。

3人目の王妃アリッサ。〇〇の母。
先の王妃と同じように、即位後すぐ王の興味は他へ移ってしまった。
側室たちに脅かされ、離宮でも肩身狭い思いをしていた彼女にとって最後の希望だった。
息子を産み後継者にすれば、自身の地位と安全が確保される。


しかし。

おめでとうございます!元気なお姫様ですよ!


一瞬目の前が真っ暗になったが、小さな赤ん坊を抱いたとたん、この愛らしい我が子を蔑ろにできなかった。

そして、心に誓った。


ここだけの秘密よ。
私は今日、王子を産んだの。


この子の性別を隠し通すこと…。



王室女性の人生。
地位の高さなんて何にもならない。自身の意見なんか無視されるつまらない人生じゃないか。
いくら才能があっても、
ただ容姿の美しさと愛嬌、従順さだけが求められ、政略結婚と世継ぎを産むだけの存在。

私は、そんな現実にうんざりしているのよ。
そんな人生をこの子に歩ませたくない。
国王が死ねば、この子のものになる…。



こうして、〇〇は王子として人生を歩み始めた。

王族の血をひく者は皆、宝石眼を持っていた。
ダイヤが散りばめられたように、眼の中がキラキラ輝いているのだ。それは眩しいほどに美しく見事だった。
王族の証とも言えるが、目立つために身を隠したい時は目も隠す必要があった。一族の何人かは、意図して宝石眼を銀眼に眼の色を変えることができ、○○もその一人であった。


教育は物心つく前から始まり、
母の指導のもと、徹底的に行われた。
辛く苦しい日々であったが、才能に恵まれた〇〇は王子として完璧にこなした。


そうして歳月が流れ、13歳。
文武共に右に出るものがいないほど成長していた。

身体つきに男女の違いが現れる頃から、○○はホルモン剤を飲んで女性らしい身体つきになるのを食い止めた。そのため中性的な身体をしている。


ある日、母との茶会。

試合稽古であのエリックを負かし優勝したのね。

運が良かっただけです。母上。

彼は騎士として最高レベルよ。彼に勝ったということは、あなたも最高の境地に達したということ…よくやったわね。
…〇〇。

はい、母上。

腕力で不利なのは変わりないわ。補う方法を考えましょう。

…はい。


女であることを絶対に気づかれてはならない。
成長につれて男女の身体つきに違いが現れる頃から、何度も聞かされていた。
ホルモン剤の服用で身体つきは男性に近づいていたが、完璧にはなれない。胸はふくらんでくる。


いずれあなたは女性の身でこの国を治めることになる。でもその前に、あの人なや気づかれては命は無いわ。いいわね?


剣術の稽古や外交の勉強している時だけでなく、
立ち振る舞いや呼吸でさえ、
王子としての生き方全てが、〇〇にとって生き残るための戦いだった。



13歳のある日、母との食事。

国王の病気が悪化しているそうよ。先は長くないと医者は言っているわ。

…ということは…。

まもなくその時がくるということ。
14歳の誕生日にはデビュタント(社交界デビュー)があるわね、即位するのとタイミングが同じになりそうだわ。

あなたが王になれば、これ以上男の操り人形にならずに済むのよ!


はい、母上…。


当時の〇〇には、その言葉の意味がよく理解できなかった。

家門の地位と威厳を保つため言われるままに生きる貴族女性と、
母の望むままに休みなく厳しい訓練と勉強をしてきた自分。

その違いがなんなのか…。

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