■読み切りログ(ルシファー以外)


「だっだっだだ〜おどれお前のしたいようにもっと〜♪」
「あれ?その歌…」
「あっ!レヴィ!聞いたよ、兄弟で歌出したんだって?水臭いなー親友に教えてくれないなんて!」

収録記念にもらったCDをこいつに渡そうと部屋を訪れたら、すでに机に何枚も積まれていて、正直一歩出遅れたなと肩を落とした僕。それでも、レヴィのサイン入りのもほしいな、と言われて浮き足立つくらいは許されるかな。仕方ないからしてやるよ、なんて言いながら、手が震えていたが、気づかれなかっただろうか。

「てかさー、みんなやっぱり整った顔してるよねぇ。さすが魔界七人兄弟」
「それ間違えるの何回め!?地獄の七大君主だってば!」
「あっそうだっけ。ごめんごめん」
「本当に悪いと思ってんの?…はい、書いたよ」
「わー!ありがと!」

そんなもので目を輝やかせて微笑むものだから、もうとっくにいろんな感情は忘れ去った。

「ねねね、レヴィ担当のさ、歌詞、かわいいよね」
「へ!?」
「welcome トゥルーエンドの向こう」
「っ、も、もう覚え、たの、」
「うん。レヴィなら絶対連れてってくれるんだろうなって思ったら、ふふって笑ってた」
「そ、そう、かよ…!」

素直な褒め言葉をかけられるのはあまり慣れないから、カーーっと顔に熱が集まってくるのがわかって、思わず腕で顔を隠してあらぬ方向を向いた。こいつはそんな僕の様子にもさしてツッコミもせず、「みんな歌上手いんだねー」とか一人で喋りながら歌詞カードを眺めていたけど、ふと、思い出したように「あ!」と手をパンっと合わせた。

「あと!ぴっぴー!っていう音!」
「は?ぴっぴー?」
「あれ?あの音レヴィの笛じゃないの?」
「??」
「私が誰かと一緒にいると、ぴっぴー!○○警察です!って入ってくるじゃん。あの音だと思ったんだけど違った?」
「な!?」
「曲の最後の方に行くにつれてその音が増えるから、レヴィ、もっとソロパートが欲しかったのかなって愛おしくなっちゃったんだけど、違ったか…。私の耳もまだまだだね」

違う、あってる。あってて、でも違う。まさかあの音に気づかれると思ってなかったから驚いて言葉も出なかった。
確かにあの笛は僕が鳴らしていたけど、理由は別に、ソロパートが欲しかったからじゃない。ていうかどうやったら陰キャの僕が歌を歌ってさらにソロパートを欲しがるなんて発想に至るんだよ!あれは暗号みたいなもので、と言おうとしたけど、そんなことするのは厨二病でしかないから口をつぐんだ。だって、気づいてもらえないと意味ないじゃん。ゲームを仕掛けた側が答えを言ってトゥルーエンドに導くなんて、そんなのゲームでもなんでもない。

「あれ、なんか、意味はあるらしいよ」
「そうなの?レヴィはその意味知ってるの?」
「え!?いや!?僕は知らないけど、なんかそういうのもあるらしいって噂!!」
「ふーん?じゃあ何度も聞いて謎を解かなくっちゃね!レヴィがわかったら教えてよ。そういうのは得意分野でしょ?」
「ま、まぁ、答え合わせくらいならしてもいいよ」
「やった!頑張ろ!」

そう言ってまたCDを回し始めたこいつに、僕の想いはいつ届くのかなぁ。

ピーピッ ピッピッ ピッピーッ ピーピーピーピッピー ピーピッピーピッピッ ピーピッ ピッピッ
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