■2022/4までの読み切りログ(ルシファー)

「ルシファー!こっちこっち!」
「そんなに焦るな。乗り物は逃げたりしない」
「でも遊園地はすぐにどこかに行っちゃうでしょう?いる間にたくさん遊ばなくっちゃ!」

移動遊園地デビルズコースト。たまに近くに来ると、必ず連れて行ってもらうお気に入りの場所だ。普段はマモンやアスモ、ルークを連れてはしゃぎ回るんだけど、今日は無理を言ってルシファーについてきてもらった。端的に言えば人間界のカップルっぽいことをしたかった私のおねだりを聞いてもらっただけだ。
この場所にルシファーと来るのは何度目かにはなるものの、前の記憶は状況が状況だったのでカウントはなし。だから初めてのこのデートで私は気分が高揚していた。

「ねぇルシファー、まずはあれに乗ろう!」
「ちゃんと前を見て歩くんだ。じゃないと、」
「あっ!」
「わ!」

ルシファーの方を向いていたせいで、何かにぶつかってしまった。相手も声を出したところを鑑みると生き物ではあるらしい。何かがぶつかった場所を見てみれば、尻餅をついた小さな男の子がいて、子どもに申し訳ないことをしてしまったと慌てて謝罪する。

「ご、ごめんね!私が前を見ていなかったから!」
「っぼく、」
「立てる?けがはない?」

相手の子は幸い、軽く尻餅をついただけで済んだようで、私が手を差し出すとそれを取って素直に立ち上がってくれて安心する。

「本当にごめんね。痛いところないかな」
「うん、だいじょうぶ。それと、ぼくもごめんなさい。おねえちゃんはだいじょうぶ?」
「私は全然大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。ぼく、一人できてるの?」
「ううん、おかあさんがあっちにいる。あ、あの手をふってるひと」
「そっか。よかった。お互い気をつけて楽しもうね」
「うん!おねえちゃん、またね!」
「うん、またね」

こちらがぶつかったのにしおらしい声を発したところがなんだか可愛くて、クスリと笑みが漏れた。ばいばい、と手を振れば、向こうも大きく手を振りかえしてくれてほんわか。

「何事もなくてよかったな」
「え!あ、ルシファーごめんね。前見て歩けって言われたの、反省。気をつけるよ」
「ああ、お前はそそっかしいから気をつけろ。ところで、子どもが好きなのか?」
「へ?ああ、まぁ人並みには…?好きか嫌いかと言われたら好きだよ。小さい子ってかわいいよね。リトルディーみたいな小さい小悪魔も可愛いって思うし」
「ほう?悪魔の子どもでもいいと言うんだな」
「?うん、種族なんて関係な…」

喋りかけた私の手を恭しく取って、ちゅ、と口付けて、意味ありげに口の端をニヤリと歪めた。

「俺との子でも、か?」
「は…ぇ?」
「励むか」
「…え…な!?」
「ハハッ!お前の反応はいつも面白いな」

取った手をそのまま握って、あれに乗るんだったか?と涼しい顔で歩を進めるルシファーに半ば引きずられるような形で歩く私の頭の中は、先程の言葉で頭がいっぱい。あろうことか言わなくてもよい一言を口走ってしまった。

「ね、ねぇルシファー!」
「なんだ」
「あのっ、悪魔と人間で子どもって産めるの?」

目をまんまるにしてキョトンと私を見返したルシファーのことを『あ、こういう顔のルシファーってかわいいんだよな』なんて思った私は、脳内時空が歪んでいたのかもしれない。

「ふっ…お前はどう思うんだ」
「え、」
「試してみるか?俺と。俺は構わないが」

繋いでいた手が引かれて、私の身体はルシファーの腕の中にすっぽり収まった。暗闇の中に怪しく光るルシファーの瞳から目が逸らせない私が口に出せた言葉は、たった一言。とてもじゃないけど、このロマンチックな状況に似合わなかった。

「お手柔らかにお願いします」
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