■2022/5〜の読み切りログ(ルシファー)
朝、目が覚めた時に体温が低い人は多いらしい。
だから、近くにある温かいものを引き寄せてしまうのは仕方ないんじゃないだろうか。
(あったかい)
そう思える朝は、必ず隣にルシファーがいて、私に体温を分けてくれる。
人肌がこれほど温かいのだと知れたのはルシファーのおかげ。
そんな時、ああルシファーが好きだなぁ、なんて気持ちが湧き上がり、むずむず緩む顔を隠すためにギュッと抱き締め返してつい二度寝、となるのはよくあることだった。
ただ、今日に限っては、確かにすぐ傍にルシファーはいるのだけど、抱き締められる形じゃなくて天井を向いて寝ていたものだから、ちょっと悪戯をしたくなった。悪戯といっても、もちろんそんなに酷いものじゃない。寝顔を覗き込みたかっただけだ。チャンスがあればそれをカメラに収めたいとは思ったけど、誰かに共有したいわけでもない。宝物のように自分で見返せるようにしたかっただけ。
ルシファーを起こさないようにそーっと慎重に身体を起こすと、ふるりと肌が粟立った。何せ私はキャミソールとショーツだけしか身に纏っていないのだ。季節は関係なく、少し寒い。
「……」
綺麗な顔。
いつ見ても完璧なルシファーのご尊顔は、人間の私が見るからなのか……否、そうではないんだろう。とにかく美しいこの人に、寝起きの不細工な顔を見せたくないなと、誰も見ていないのに自分の顔をむにむにとマッサージしてしまった。そしてむにむにしながら、そういえば前に、ルシファーに唇をむにむにされたことがあったな、やり返してみようかと、本日の悪戯内容が決まったのだった。
「……よし」
一息入れてから、ゆっくりと人差し指をルシファーの唇に近づける。
ふに。
(あら、意外に弾力があるしぷるぷる)
私なんてリップクリームを塗り忘れたらすぐガサガサになっちゃうのに、とちょっと妬ける。ルシファーは二人きりになるとすぐキスしたがるから気が気じゃないんだからね、なんて気持ちを込めて、このキス魔、と数回ぷにぷに押してしまった。キスといえば、唇どうしで触れているときはあまり気にならなかったけど、というか、そこまで気が回るほど冷静でいられないから仕方ないのだけど、こっちの唇の柔らかさは相手に把握されているんだろうか、なんて考えたら徐々に恥ずかしくなってきて、始末が悪い。
「……っ……何してんだか、私ってば……」
ルシファーが寝ているうちに離れよう。せっかく二度寝しなくて済んでるんだから、起きて身支度を整えておくのがいいかもしれない。そういうことをすると「俺より先に俺のベッドから勝手に出るな」と怒られそうな気もするけど、そんなのもう慣れっこだ。
こんなにじっとルシファーの顔を眺められることはそうそうないので、名残惜しいけど仕方ない。そう、距離を取ろうとしたその時。私の腰に触れたのは、まごうことなくルシファーの指先だった。
触れるが早いかその指はガッとくびれを掴み、バランスを失った私はベッドに両手を着くのがやっとだった。
「ヒっ……!」
「おはよう。なかなか刺激的な朝をありがとう、と言いたいところだが、俺の唇に触れるなら、指ではなくて唇で、にしてもらおうか」
「は!?」
「本人の意思確認なしに勝手に触れたんだ。リクエストくらい聞いてくれるんだろう?」
「勝手にって、そ、それをいうならいつも勝手にするのはルシファ、ん!?」
「ン、っ」
口を塞がれたが最後、私に残された道はその舌を受け入れることだけ。
腰を支えていた手はスルスルと下へ降りて行く。太ももをうまく誘導して、私を自分の上に跨らせる。きちんと腹の上に座ったことを体重で感じ取ったのか、手はまた上へとのぼってきて、今度は支えるでなく腰に巻き付いてグッと引き寄せられた。
その間も止まない口付け。もう片方の手の親指が口の端を引っ張っているものだから唇を閉じることもできず、間から入り込んだ舌は私の咥内をこれでもかと動き回って、くちゃりくちゅりと舌を嬲り、上顎を舐め上げ、奥へと進む。呼吸がままならないから自然と荒くなり、唾液がとめどなくルシファーへと流れ込んでいった。
「はぁ、ン、ぁふ、」
「ん、っく、は、ハァ」
「、んむぅ、」
「ふ、」
ぞわぞわと背中を這い上がってくるのは昨晩これでもかと刻みこまれた快楽で、じわり、じわりと互いの中心部が熱を持ってくるのがわかる。もはや起き抜けに感じた寒さなど微塵も忘れるくらいに熱い。求められたら嬉しくなってしまうのは、これはもうどうしようもなく調教された結果なのかもしれないし、私がそれだけルシファーに溺れているだけなのかもしれない。ベッドについていた手は知らずルシファーの身体を這って、彼の頬を、耳を、髪を、押さえ込んで、自分の方に引き寄せていた。
もっと。もっともっともっと欲しい。
あまりの気持ちよさに全てを任せてしまおうと思ったタイミングを見計らったかのようにルシファーからのキスは途切れて、同時にふぅっと呼吸が楽になる。けど、でも。
「ふはぁっはぁっ……!」
「ハっ……ふ、呼吸が苦しくなってきたんじゃないか、は、ン、っ!」
「ん、ふふ、んぅ、」
「はっ……なんだ、ン、お咎めのあとは、っ、おねだりか?」
「ンンっちゅ、ん……ふ……もっと、」
今日はなんだか止めたくない。もっとの気持ちが抑えられず、私からキスを催促すると、珍しいことが起こって嬉しかったのか俄然やる気を見せたルシファーは、私を抱えて180度回転し、今度は自分が上になって私を見下ろす。
「るしふぁー……ちょぅだい……?」
「ふ、いいだろう、おまえが満足するまで、付き合ってやる」
「嬉し、っん……ぁ、ふ」
「ン、」
あれ?私、なにしてたんだっけ。
なんでこんなことになってるんだっけ。
んーまぁいっか。
だって、ルシファーに愛してもらってとってもいい気分なんだもん。
このまま全部奪ってくれたらいいのに。呼吸も、身体も、魂さえも。
それで、それでね。このまま私を。
魔界の底まで、連れてって
だから、近くにある温かいものを引き寄せてしまうのは仕方ないんじゃないだろうか。
(あったかい)
そう思える朝は、必ず隣にルシファーがいて、私に体温を分けてくれる。
人肌がこれほど温かいのだと知れたのはルシファーのおかげ。
そんな時、ああルシファーが好きだなぁ、なんて気持ちが湧き上がり、むずむず緩む顔を隠すためにギュッと抱き締め返してつい二度寝、となるのはよくあることだった。
ただ、今日に限っては、確かにすぐ傍にルシファーはいるのだけど、抱き締められる形じゃなくて天井を向いて寝ていたものだから、ちょっと悪戯をしたくなった。悪戯といっても、もちろんそんなに酷いものじゃない。寝顔を覗き込みたかっただけだ。チャンスがあればそれをカメラに収めたいとは思ったけど、誰かに共有したいわけでもない。宝物のように自分で見返せるようにしたかっただけ。
ルシファーを起こさないようにそーっと慎重に身体を起こすと、ふるりと肌が粟立った。何せ私はキャミソールとショーツだけしか身に纏っていないのだ。季節は関係なく、少し寒い。
「……」
綺麗な顔。
いつ見ても完璧なルシファーのご尊顔は、人間の私が見るからなのか……否、そうではないんだろう。とにかく美しいこの人に、寝起きの不細工な顔を見せたくないなと、誰も見ていないのに自分の顔をむにむにとマッサージしてしまった。そしてむにむにしながら、そういえば前に、ルシファーに唇をむにむにされたことがあったな、やり返してみようかと、本日の悪戯内容が決まったのだった。
「……よし」
一息入れてから、ゆっくりと人差し指をルシファーの唇に近づける。
ふに。
(あら、意外に弾力があるしぷるぷる)
私なんてリップクリームを塗り忘れたらすぐガサガサになっちゃうのに、とちょっと妬ける。ルシファーは二人きりになるとすぐキスしたがるから気が気じゃないんだからね、なんて気持ちを込めて、このキス魔、と数回ぷにぷに押してしまった。キスといえば、唇どうしで触れているときはあまり気にならなかったけど、というか、そこまで気が回るほど冷静でいられないから仕方ないのだけど、こっちの唇の柔らかさは相手に把握されているんだろうか、なんて考えたら徐々に恥ずかしくなってきて、始末が悪い。
「……っ……何してんだか、私ってば……」
ルシファーが寝ているうちに離れよう。せっかく二度寝しなくて済んでるんだから、起きて身支度を整えておくのがいいかもしれない。そういうことをすると「俺より先に俺のベッドから勝手に出るな」と怒られそうな気もするけど、そんなのもう慣れっこだ。
こんなにじっとルシファーの顔を眺められることはそうそうないので、名残惜しいけど仕方ない。そう、距離を取ろうとしたその時。私の腰に触れたのは、まごうことなくルシファーの指先だった。
触れるが早いかその指はガッとくびれを掴み、バランスを失った私はベッドに両手を着くのがやっとだった。
「ヒっ……!」
「おはよう。なかなか刺激的な朝をありがとう、と言いたいところだが、俺の唇に触れるなら、指ではなくて唇で、にしてもらおうか」
「は!?」
「本人の意思確認なしに勝手に触れたんだ。リクエストくらい聞いてくれるんだろう?」
「勝手にって、そ、それをいうならいつも勝手にするのはルシファ、ん!?」
「ン、っ」
口を塞がれたが最後、私に残された道はその舌を受け入れることだけ。
腰を支えていた手はスルスルと下へ降りて行く。太ももをうまく誘導して、私を自分の上に跨らせる。きちんと腹の上に座ったことを体重で感じ取ったのか、手はまた上へとのぼってきて、今度は支えるでなく腰に巻き付いてグッと引き寄せられた。
その間も止まない口付け。もう片方の手の親指が口の端を引っ張っているものだから唇を閉じることもできず、間から入り込んだ舌は私の咥内をこれでもかと動き回って、くちゃりくちゅりと舌を嬲り、上顎を舐め上げ、奥へと進む。呼吸がままならないから自然と荒くなり、唾液がとめどなくルシファーへと流れ込んでいった。
「はぁ、ン、ぁふ、」
「ん、っく、は、ハァ」
「、んむぅ、」
「ふ、」
ぞわぞわと背中を這い上がってくるのは昨晩これでもかと刻みこまれた快楽で、じわり、じわりと互いの中心部が熱を持ってくるのがわかる。もはや起き抜けに感じた寒さなど微塵も忘れるくらいに熱い。求められたら嬉しくなってしまうのは、これはもうどうしようもなく調教された結果なのかもしれないし、私がそれだけルシファーに溺れているだけなのかもしれない。ベッドについていた手は知らずルシファーの身体を這って、彼の頬を、耳を、髪を、押さえ込んで、自分の方に引き寄せていた。
もっと。もっともっともっと欲しい。
あまりの気持ちよさに全てを任せてしまおうと思ったタイミングを見計らったかのようにルシファーからのキスは途切れて、同時にふぅっと呼吸が楽になる。けど、でも。
「ふはぁっはぁっ……!」
「ハっ……ふ、呼吸が苦しくなってきたんじゃないか、は、ン、っ!」
「ん、ふふ、んぅ、」
「はっ……なんだ、ン、お咎めのあとは、っ、おねだりか?」
「ンンっちゅ、ん……ふ……もっと、」
今日はなんだか止めたくない。もっとの気持ちが抑えられず、私からキスを催促すると、珍しいことが起こって嬉しかったのか俄然やる気を見せたルシファーは、私を抱えて180度回転し、今度は自分が上になって私を見下ろす。
「るしふぁー……ちょぅだい……?」
「ふ、いいだろう、おまえが満足するまで、付き合ってやる」
「嬉し、っん……ぁ、ふ」
「ン、」
あれ?私、なにしてたんだっけ。
なんでこんなことになってるんだっけ。
んーまぁいっか。
だって、ルシファーに愛してもらってとってもいい気分なんだもん。
このまま全部奪ってくれたらいいのに。呼吸も、身体も、魂さえも。
それで、それでね。このまま私を。
魔界の底まで、連れてって