■2022/4までの読み切りログ(ルシファー)

ルシファーは意外と朝が苦手だ。苦手だから、つまりは朝はちょっと不機嫌な空気を纏っている。
だけど最近、ルシファーが上機嫌で朝食の席に着く時が週に二〜三度あることに俺は気づいている。
そういう時にちょっと突いてクレカちゃんを返してもらったりできるのはありがたいんだが、一方で気に食わないものはどうやったって気に食わないわけで。

「ルシファー」
「なんだ」
「顔が緩んでっぞ」
「何を言うかと思えば、マモン。俺はいつもと変わらない」
「ケッ…嘘つけっ。バレバレなんだよ」

ニヤ、と口角を歪めるサマは、どっからどうみても完璧な傲慢悪魔のお兄様ってやつだ。
ルシファーがこうなったのは、あいつが魔界に来てからだ。正確には、あいつが魔界から去って、そして戻ってきたその日から。
あいつは俺ら兄弟全員と契約した。兄弟全員ーーそこには当たり前のようにルシファーも含まれている。
ここから去ることになった日、最後の夜、あいつがルシファーの書斎に消えていって、そのまま部屋に帰ってこなかったのを俺は知ってる。まぁつまり、あの二人は『そういう関係』なんだろ。

「ふあ〜おはようみんな」
「…お前、朝からンな怠そうな声出してんじゃねーよ」
「ぁ、マモン、おはょぉ…」
「はよ。寝不足かぁ?」
「あ…う、うん、ちょっとね」
「お肌に大敵だよぉ〜とかってアスモに言われっぞ」

わしゃわしゃと髪を撫で回せば、ああもうセットしてきたのに!と怒られたけど、逆に褒めて欲しいくらいだぜ。耳の後ろ、気をつけとけよ。赤くなってるからよ。キスマーク。

「全く…お兄様が聞いて呆れるぜ」
「さっきからなんだ。いつも以上に突っかかるじゃないか。何か俺に言いたいことでもあるのかマモン」
「そーだなぁーーどうしてもっつーんなら、かわいーーー弟ちゃんが教えてやろうか?」

自分でもわかるほどにいやらしい笑みを浮かべた俺が少し下からルシファーの顔を覗き込めば、一瞬目を見開いたあと、あいつの方に視線をやって、それから一息。そうして俺よりももっと悪い笑顔でクツクツと笑いを噛み殺しながら呟いた。

「わざとやってるんだ」
「、は」
「俺のものに手は出させない」
「…っは…さいですか。お子様〜」
「なんと言われようが、これだけは譲らない。他の誰にも、な」
「へーへー。傲慢の悪魔を怒らせるとこわ〜〜いからな。俺はさっさと退散しまーすっ」
「ああ、そうしてくれ」

ルシファーの機嫌は、今日も最高潮。
俺様の気分は、あまり良くない。
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