■読み切りログ(ルシファー以外)

「いいか、誰が見えても恨みっこなしだかんな!」
「マモンマジになっちゃってるじゃん。サタンが変なこと言い出すからだよぉ〜?」
「俺は『本当に見える』とは言ってない」
「うわぁ……ものは言いようってやつだ」
「僕、蝋燭見てると眠くなってくるんだけど……」
「俺は炎を見るとステーキしか思い出せない……ああ腹が減った」
嘆きの館のライブラリーは今、暗闇に包まれている。頼りになる灯りは暖炉でぱちぱち燃える火の粉と、各々の前に置かれた蝋燭だけだ。
ちなみに蝋燭にはそれぞれピンが刺さっており、それは魔術を彷彿させるが、七大君主の兄弟のうちの六人も揃って一体誰を呪おうというのか。
「ねー、こんなの溶けるわけないって!やめようよー!お肌のゴールデンタイムが過ぎちゃう!」
「アスモが降りたいなら降りたらいーぜ!どうせ俺の蝋燭にしかあいつは映らねーからよ」
「はぁ?マモンのにこそ映んないし!」
「僕……もう限界……」
「ベルフェ、寝るなら部屋に戻れ。ベルフェ……ああもう寝てしまった……」
サタンの膝の上にある本には、何やら図が描かれていた。それを見るに、どうやらこれは魔術ではなく、占いのようだった。
そのページにはこう書かれている。
『蝋燭にピンを刺して火を灯せ。ピンが落ちるとき、おまえの未来の恋人の姿が見えるだろう』
と。
推察するのは簡単だ。MCの姿は誰の蝋燭に現れるのかと、そういうことだろう。
実際のところMCは、今日もルシファーの部屋でスヤスヤと寝息を立てている。そんなことはマモン以外の誰もがなんとなしに悟っていたのだが、誰も口には出さなかった。口にしたが最後、彼女がルシファーのものだと認めたようなものだから。この茶番に付き合うことで、多少なりとも鬱憤を晴らしたい、ただそれだけなのだが、逆にイライラが募って仕方ない。
「あーもー!僕だちにこーいうの似合わないでしょっ!?リア充が集まって何してんのさ!ルシファーに仕返しするならキッチンに隠してある年代もののデモナスみんなで飲み干した方が絶対いいって!」
「あ!?ここまでやったのに何言っ」
「レヴィ、なかなか言うじゃないか。その案気に入った。みんなで飲むぞ。同罪だ」
「は?いや、僕は飲まないよ、だって今からアニメの再放そっ」
「だめだめぇ!一人だけ抜け出すなんてパーティーにならないよ」
「仕方ない。ベルフェも起こして飲み直そう」
嘆きの館は、今日も夜まで賑やかだ。
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