◆悪魔とメリークリスマス
クリスマスが近くなってから、バルバトスといる時間が増えたのは嬉しいのだが、愛情が駄々洩れで困ることも増えた。
今日はクリスマスの衣装を作るのだと言って寸法を図りに呼び出された。
メジャーでぐるぐるといろいろな場所のサイズを図られて恥ずかしいのと、クリスマスの衣装と聞いてわくわくするのと。二つの気持ちがせめぎ合ってソワソワ。
どうにも落ち着かなくて先ほどから、口をついて出るのはどうでもいい話ばかりだ。
「そういえばね、この前リース作ったでしょ?」
「そうですね。ああ、今度は左を向いてください」
「あっ!うん!そ、それで、あれって、いろんな意味があるんだよ。幸運の象徴とか、豊作祈願とか、魔除けとか」
「魔界で魔除けのものを作るとは、なかなか面白いですね。はい、終わりましたよ」
「えっ、」
ぽん、と背中に掌を添えられる。それが終了の合図となって私はもとのようにバルバトスに向き直った。
「あっ、あのねっ、そういう意味じゃなくて!!」
「いえ、いいのですよ。人間界でそういった習慣があってもおかしいとは思いませんので」
「そう……?あ、もしかして魔除けがあるなら人間除けとかもあるの?」
「いいえ、魔界にそのようなものはありませんね」
「ふむ……やっぱり魔術が使える悪魔はちっぽけな人間なんて怖くないのかなぁ」
どこからか取り出した羊皮紙にさらさらと計測値を書き込みながら、バルバトスは「今日のおやつはマンゴークラッシュゼリーですよ」とでも言うように、何でもなく爆弾発言をした。
「あなたもご存じかと思いますが、悪魔にとって人間の魂は欲しくてたまらない宝石のようなものです。なので除ける必要はなく、むしろ寄ってきていただきたいといいますか」
「!?」
その台詞に、心臓が跳ねて口から飛び出そうになることこの上ない。魂、と言われてはどこを押さえたらいいのか、咄嗟に胸の中心をぎゅっと抑えた私をきょとんと見やると、次の瞬間にはバルバトスは珍しく大笑いしていた。
「っくくく……ふふふっ……!」
「っなぁ!?」
「ふふふふふ…………っ!!失礼っ……あなたはっ……本当に面白いといいますか、素直といいますか……!」
「な、だ、だってバルバトスが突然変なことを言うからっ!!」
「心配せずとも、悪魔は案外執着深いので」
「へ、」
とん、とそのまま壁に手を突いて私を囲ったバルバトスは、反射で上を向いた私の唇に流れるように自分の唇を重ねた。気づいたときにはチュッと可愛らしいリップノイズが鳴った後で、その瞬間に私の意識はパチリと覚醒する。
「なっ、ぁ、アーッッッ!!!?ば、ばばばばるばとす、いま、いっ、いま、キ!?」
「はい。キスいたしました」
「いたしましたじゃなーい!!」
「そんなに恥ずかしがらずとも。もう何度も交わしたでしょう?」
わかっててやってるんだろう、その顔はゆるゆるの笑顔だ。そんな顔を見れるのは私だけだと思うと嬉しいのだけど、やっぱり。
「しんぞうがもたないヨォ……」
「早く慣れてくださいね」
悪魔を焦らすと後が怖いですから、とは耳に直接吹き込まれた。
今日はクリスマスの衣装を作るのだと言って寸法を図りに呼び出された。
メジャーでぐるぐるといろいろな場所のサイズを図られて恥ずかしいのと、クリスマスの衣装と聞いてわくわくするのと。二つの気持ちがせめぎ合ってソワソワ。
どうにも落ち着かなくて先ほどから、口をついて出るのはどうでもいい話ばかりだ。
「そういえばね、この前リース作ったでしょ?」
「そうですね。ああ、今度は左を向いてください」
「あっ!うん!そ、それで、あれって、いろんな意味があるんだよ。幸運の象徴とか、豊作祈願とか、魔除けとか」
「魔界で魔除けのものを作るとは、なかなか面白いですね。はい、終わりましたよ」
「えっ、」
ぽん、と背中に掌を添えられる。それが終了の合図となって私はもとのようにバルバトスに向き直った。
「あっ、あのねっ、そういう意味じゃなくて!!」
「いえ、いいのですよ。人間界でそういった習慣があってもおかしいとは思いませんので」
「そう……?あ、もしかして魔除けがあるなら人間除けとかもあるの?」
「いいえ、魔界にそのようなものはありませんね」
「ふむ……やっぱり魔術が使える悪魔はちっぽけな人間なんて怖くないのかなぁ」
どこからか取り出した羊皮紙にさらさらと計測値を書き込みながら、バルバトスは「今日のおやつはマンゴークラッシュゼリーですよ」とでも言うように、何でもなく爆弾発言をした。
「あなたもご存じかと思いますが、悪魔にとって人間の魂は欲しくてたまらない宝石のようなものです。なので除ける必要はなく、むしろ寄ってきていただきたいといいますか」
「!?」
その台詞に、心臓が跳ねて口から飛び出そうになることこの上ない。魂、と言われてはどこを押さえたらいいのか、咄嗟に胸の中心をぎゅっと抑えた私をきょとんと見やると、次の瞬間にはバルバトスは珍しく大笑いしていた。
「っくくく……ふふふっ……!」
「っなぁ!?」
「ふふふふふ…………っ!!失礼っ……あなたはっ……本当に面白いといいますか、素直といいますか……!」
「な、だ、だってバルバトスが突然変なことを言うからっ!!」
「心配せずとも、悪魔は案外執着深いので」
「へ、」
とん、とそのまま壁に手を突いて私を囲ったバルバトスは、反射で上を向いた私の唇に流れるように自分の唇を重ねた。気づいたときにはチュッと可愛らしいリップノイズが鳴った後で、その瞬間に私の意識はパチリと覚醒する。
「なっ、ぁ、アーッッッ!!!?ば、ばばばばるばとす、いま、いっ、いま、キ!?」
「はい。キスいたしました」
「いたしましたじゃなーい!!」
「そんなに恥ずかしがらずとも。もう何度も交わしたでしょう?」
わかっててやってるんだろう、その顔はゆるゆるの笑顔だ。そんな顔を見れるのは私だけだと思うと嬉しいのだけど、やっぱり。
「しんぞうがもたないヨォ……」
「早く慣れてくださいね」
悪魔を焦らすと後が怖いですから、とは耳に直接吹き込まれた。