◆悪魔とメリークリスマス
RADでの授業終わりにいつものように魔王城にやってくると、出迎えてくれたバルバトスはもこもこの私を見てクスリと笑った。
「随分と着込んでいらっしゃる。魔界は寒いですか?」
「うむぅ。寒い……デス」
「早く自らを暖める呪文をマスターできると良いですね」
「魔力なんかなくても媒介があれば簡単にできるって言われたけど、全然難しくて参っちゃうよ」
招き入れられた魔王城の中はとても暖かく、知らず強張っていた身体から力が抜けた。流れるように先日バルバトスからもらったマフラーを脱がされても、もう寒さは感じない。ふるっと頭を振ると髪の間からも冷気が抜けていった。
「今日はリースを作るんだっけ」
「はい。ご教示いただけたらと思います」
いつもクリスマスの準備をしている部屋に通されると、もうだいぶ慣れたからか、紅茶を淹れて参りますので少々お待ちを、と私を一人残してバルバトスは部屋から出ていった。聞いたところによると、今日は殿下は執行部の仕事があってこちらまで手が回らないらしい。リース作りにも興味津々だったようだから一緒にできたら良かったのに、と思いつつ、それでもやっぱりバルバトスと二人きりであることに浮き足立つ感は否めない。
机の上にはついこの間手に入れたリース用の材料が並べられている。人間界と完全に同じ素材が手に入ったわけではないが、似たようなものが手に入って良かった。
そんなことを考えながら席に着こうとして、何気なく視線を移した先。広い部屋から繋がった、そのまた向こうの部屋。今、そこには明かりが灯っておらず暗がりではあるものの、先日装飾を終えたツリーが静かに鎮座している。こちらから漏れた光を反射して、心なしかきらきら輝いて見えるオーナメントを溜め息まじりに見つめた。
「綺麗……」
魔界、人間界、天界。全ての世界が仲良くできるようになるまでは途方もない時間と住人たちの理解・努力が必要なのだろうけど、美しいものを美しいと思う気持ちに差異はないと思いたい。自分が手伝っているから、というわけではないが、この計画の成功を願わずにはいられないと改めて感じる。
「素敵な聖夜になりますように」
そう呟いたその時。
パチンと小さな音がして、部屋が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間ツリーの電飾がピカピカと輝き始めた。心なしかクリスマスミュージックも響いてくる。
「えっ!?」
突然のことに驚いたものの、それよりも目の前に広がる幻想的にワクワクが勝って、「わぁ…!」と感嘆の声が漏れたところで、そっと私の肩に触れたのは。
「楽しんでもらえましたか?」
「バルバトス!」
「そんな目をしているということは、サプライズは成功のようですね」
「じゃあ、これ、バルバトスが?」
「ええ。簡単な呪文を唱えるだけですが」
そう告げると同時にパチンとまた音がして、パッと元のように明かり点いた。それでもまだシャンシャンシャンとこの時期だけの特別な音色は聞こえていた。
「さぁ、紅茶も入りましたし、まずはお茶をいただきながら材料の確認をいたしましょう」
「うん!」
ちょっとしたことでも私を楽しませてくれようとするバルバトスの優しさを感じて、なんだかんだ言って懐に入れた者に対してはとても甘いんだなと再確認。近くに置いてもらえる喜ぶを噛み締める。
しかしながらそんなバルバトスに対して何を贈ろうかはやっぱり決まっていなくって、内心焦り始めていたのは秘密だったりする。
「随分と着込んでいらっしゃる。魔界は寒いですか?」
「うむぅ。寒い……デス」
「早く自らを暖める呪文をマスターできると良いですね」
「魔力なんかなくても媒介があれば簡単にできるって言われたけど、全然難しくて参っちゃうよ」
招き入れられた魔王城の中はとても暖かく、知らず強張っていた身体から力が抜けた。流れるように先日バルバトスからもらったマフラーを脱がされても、もう寒さは感じない。ふるっと頭を振ると髪の間からも冷気が抜けていった。
「今日はリースを作るんだっけ」
「はい。ご教示いただけたらと思います」
いつもクリスマスの準備をしている部屋に通されると、もうだいぶ慣れたからか、紅茶を淹れて参りますので少々お待ちを、と私を一人残してバルバトスは部屋から出ていった。聞いたところによると、今日は殿下は執行部の仕事があってこちらまで手が回らないらしい。リース作りにも興味津々だったようだから一緒にできたら良かったのに、と思いつつ、それでもやっぱりバルバトスと二人きりであることに浮き足立つ感は否めない。
机の上にはついこの間手に入れたリース用の材料が並べられている。人間界と完全に同じ素材が手に入ったわけではないが、似たようなものが手に入って良かった。
そんなことを考えながら席に着こうとして、何気なく視線を移した先。広い部屋から繋がった、そのまた向こうの部屋。今、そこには明かりが灯っておらず暗がりではあるものの、先日装飾を終えたツリーが静かに鎮座している。こちらから漏れた光を反射して、心なしかきらきら輝いて見えるオーナメントを溜め息まじりに見つめた。
「綺麗……」
魔界、人間界、天界。全ての世界が仲良くできるようになるまでは途方もない時間と住人たちの理解・努力が必要なのだろうけど、美しいものを美しいと思う気持ちに差異はないと思いたい。自分が手伝っているから、というわけではないが、この計画の成功を願わずにはいられないと改めて感じる。
「素敵な聖夜になりますように」
そう呟いたその時。
パチンと小さな音がして、部屋が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間ツリーの電飾がピカピカと輝き始めた。心なしかクリスマスミュージックも響いてくる。
「えっ!?」
突然のことに驚いたものの、それよりも目の前に広がる幻想的にワクワクが勝って、「わぁ…!」と感嘆の声が漏れたところで、そっと私の肩に触れたのは。
「楽しんでもらえましたか?」
「バルバトス!」
「そんな目をしているということは、サプライズは成功のようですね」
「じゃあ、これ、バルバトスが?」
「ええ。簡単な呪文を唱えるだけですが」
そう告げると同時にパチンとまた音がして、パッと元のように明かり点いた。それでもまだシャンシャンシャンとこの時期だけの特別な音色は聞こえていた。
「さぁ、紅茶も入りましたし、まずはお茶をいただきながら材料の確認をいたしましょう」
「うん!」
ちょっとしたことでも私を楽しませてくれようとするバルバトスの優しさを感じて、なんだかんだ言って懐に入れた者に対してはとても甘いんだなと再確認。近くに置いてもらえる喜ぶを噛み締める。
しかしながらそんなバルバトスに対して何を贈ろうかはやっぱり決まっていなくって、内心焦り始めていたのは秘密だったりする。