◆Dead Drop
【第十五話】
さて。その頃の金星コンビ。
「客として潜入するにあたっては、上流階級を装う必要がある」
そんなごもっともなセリフと共にヴィーナスが連れてこられたのはとあるホテルだった。地下から四階までは高級ブランドが店を連ねていて、五階から上が客室。その最上階に、二人はチェックインした。荷物を置いたらすぐに階下のブティックへと引っ張られ、それからずっとドレスの試着が続いている。もうだいぶ疲れてきているのだが、ルシファーはまだ納得がいかないようで眉を顰めている。
「背中が開きすぎていないか」
「あ、あの、ドレスだし、このくらいは普通かなって思います……」
「そういうものか……ああ、すまない。あそこにあるストールを持ってきてくれ」
ルシファーが指差した先にあったのは孔雀の羽の刺繍が煌びやかな漆黒のベルベッド。今、ヴィーナスが身につけているのは真紅のドレスなのだが、それを際立たせる良い風合いだ。
「うん……とてもいい」
「ほんと……? でも、これなら背中も隠れますね」
「今までで一番にあってるよ」
ほわりと笑ったルシファーはヴィーナスの頬を一撫でして、店員に購入する旨を伝えた。これも潜入のための恋人のフリなのだろうかとドキドキしながら、ほぅっと息を吐き出す。
「本気にしちゃいそう……」
そんなふうにぼやきながらもドレスを脱いで試着室を出たところ、ルシファーはすでに買い物をすませていた。そのまま部屋に帰った後、待っていたのは媚薬が満ちたバスルームでのやりとりであったのだが、この時はまだ、ヴィーナスはそんなことは知らず。やっぱりボスは何をやってもスマートだなぁ、なんて夜景を見つめながらエレベーターを待つルシファーの横顔を盗み見していたのであった。
さて。その頃の金星コンビ。
「客として潜入するにあたっては、上流階級を装う必要がある」
そんなごもっともなセリフと共にヴィーナスが連れてこられたのはとあるホテルだった。地下から四階までは高級ブランドが店を連ねていて、五階から上が客室。その最上階に、二人はチェックインした。荷物を置いたらすぐに階下のブティックへと引っ張られ、それからずっとドレスの試着が続いている。もうだいぶ疲れてきているのだが、ルシファーはまだ納得がいかないようで眉を顰めている。
「背中が開きすぎていないか」
「あ、あの、ドレスだし、このくらいは普通かなって思います……」
「そういうものか……ああ、すまない。あそこにあるストールを持ってきてくれ」
ルシファーが指差した先にあったのは孔雀の羽の刺繍が煌びやかな漆黒のベルベッド。今、ヴィーナスが身につけているのは真紅のドレスなのだが、それを際立たせる良い風合いだ。
「うん……とてもいい」
「ほんと……? でも、これなら背中も隠れますね」
「今までで一番にあってるよ」
ほわりと笑ったルシファーはヴィーナスの頬を一撫でして、店員に購入する旨を伝えた。これも潜入のための恋人のフリなのだろうかとドキドキしながら、ほぅっと息を吐き出す。
「本気にしちゃいそう……」
そんなふうにぼやきながらもドレスを脱いで試着室を出たところ、ルシファーはすでに買い物をすませていた。そのまま部屋に帰った後、待っていたのは媚薬が満ちたバスルームでのやりとりであったのだが、この時はまだ、ヴィーナスはそんなことは知らず。やっぱりボスは何をやってもスマートだなぁ、なんて夜景を見つめながらエレベーターを待つルシファーの横顔を盗み見していたのであった。