◆一番星に口付けを

 可愛いは作れる!……なんて世間では言われているけど、それはやっぱり素材がいい子だけの話だ。凡人の私では、何をやったって作られたかわいさすら手に入れられない。プルプルの唇?ツルツルほっぺ?柔らかい肌?そんなもの、どうあがいても出せるわけないのだ。血色の良い唇に乗せるからグロスは輝くし、毛穴の目立たない健やかな肌だからファンデーションでふわふわに仕上がるし、きめ細やかな皮膚だから触れるとすべすべなのだ。だから彼らはその素材を磨き上げてアイドルをしているし、そうでない私は一般人である。
 けれど、その一般人の頬を包み込み、真剣な目で見つめてくる一級品の素材の持ち主がここに。瞳で告げられる想いは充分すぎるほど伝わる。耐えられるわけもない。ゆっくりと瞼を下ろすと心臓がさらに早鐘を打った。
(きっと私は、世間では可愛いにも美しいにも分類されることはないけど)
 それでも私を捉えるこの二つの眼にだけでもそう映るのなら、それ以上に望むものなんて何一つない。
「るしふぁ、ンッ……ん、ふ、」
「んは、ふ……んん、はぁ、」
 ルージュなんて大層なものは似合わない。血色もあったものじゃないし、かさついている唇だけど、求めてくれるなら、余すことなく差し出すよ。
「るし、ンッ、るしふぁ、ん、ぁ、すき、」
「ふはっ……ぁいしてるよ」
「んん…」
「俺だけを感じろ」
 髪の間に差し込まれた指が頭ごと私を引き寄せたのを感じ、私は身体から力を抜いた。
 私の唇にルシファーのメイクが移るころ、二人は一つになっていることだろう。
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