■読み切りログ(ルシファー以外)
「ねえ、レヴィがバスタブで寝てるって本当?」
きっかけはそんな些細な一言だった。
「…誰から聞いたの」
「ベールが言ってたの。バスタブってレヴィのお部屋にあるアレでしょ?身体痛くならないの?あっ実は柔らかい特注品だったりするのかな?バスタブで眠るなんて映画みたい」
「はぁ?そんなこと言うなんてお前やっぱり不思議な奴だな」
「そう?あの中にレヴィが入ってるの想像できなかったから。あれも何かのお話に出てくる装飾品とかグッズの類なのかなって思ってたし」
鋭いところを突いてくるなと思ったけど、アレは花るりたんみたいな誰にでも見せれるようなアニメじゃなくて魔界のピーーな方面のR5000禁ストーリーだからこの場でそれを言うわけにはいかない。「ああ、まぁそんなとこ」とお茶を濁せば「あのさ、」と輝く瞳が僕を映す。
「レヴィが許してくれるなら、私、あそこで眠ってみたい」
「別にい…はぁ!?おおおおお前何言ってんの!?ていうかなんでそんな話になっちゃうわけ!?第一僕の部屋で寝たいってどういう」
「や、レヴィの部屋って海の中みたいですっごい綺麗だし、あの部屋でうとうとしたらきっと気持ちいいだろうなってずっと思ってたの。ちょうどいいので頼んでみました」
「あ、そういう」
ちょっと期待した僕が馬鹿だった。そうだよな、こんな陰キャ引きこもりオタクに興味があって聞いてくることじゃないくらい簡単に導き出せる答えだったはずなのにな。この!僕って本当に浮かれポンチ!
「…そういうことなら、まぁ、いいけど」
「本当に!?やった!」
「でもタダでとは言わないよね?僕の部屋に来るなら新しく買ったゲームに付き合ってもらうから」
「そのくらい任せて!じゃあ今日、レヴィの部屋行くね!」
「ウン…待ってるから」
そうしておかしな約束が成立したのはお昼のこと。その後半日は何をして過ごしたかはあまり覚えていないけど、着実に時間はすぎて夕食も終わり、暫くした頃。
「レーヴィ!来たよ!」
彼女は僕の部屋を訪れた。
「本当にきたの…」
「だって約束したじゃん」
「いやまぁそうだけど…ッ…とりあえず入って。誰かに見られたらめんどくさい」
「あは!確かに!じゃあ失礼しますー」
悪びれもなく僕の部屋に入り込んで、「あ、これお土産」とスナック菓子を差し出す彼女を追い出せるはずがなかった。けど、来たら来たで楽しい時間が過ごせるもので。本来の目的を忘れそうなくらい新しいゲームに熱中していたら、すぐに日付を跨ぐ時間になってしまった。眠気眼の彼女は言う。
「んん…レヴィ、私、もう眠いかも」
「えっ、あっ、そ、そっか、こんな時間だもんな!?あ、えっと、バスタブ、どぞ…」
「わー、ありがとう!」
彼女がテレビの前から立ち上がって伸びを一つした時に素肌が見えたなんて全くもってそんなことはない。断じてないしあったとしても見てないからセーフ。天を仰ぎながらそんなことをつらつら考えていたら、悩ましい声が聞こえてきてハッと下界に意識を戻す。
「どうしたの。入れば?」
「う〜ん、うん…そうなんだけど…これ、どこにどう身体を収めたら眠れるのかよくわかんない」
「はー?好きなように寝たらいいんだよ。僕なんかはバスタブで寛ぐみたいな格好で寝てるけど」
「ええ…口で言われてもわかんないよそんなの…あっ!実演して見せてレヴィ!」
「我が儘かよ…まぁいいけど…」
パァッと、いかにも「いい案閃きました!」みたいな顔で言われたら無碍に断ることもできなくて、僕も大概彼女に甘いなと少しだけ辟易したけれど、受けてしまったものは仕方がないと、バスタブに入り込んでいつも寝ているように身体を沈めた。
「こんな感じ。わかった?」
「なるほど?」
「…あー…眠くなかったのにここでこうしてると自然に瞼が…」
「えっ!やだズルい!私も一緒に寝る!」
「…はい?」
よいしょと言いつつ僕の隣というか上というかに突然身体を滑り込ませてきたので僕の時はそこで止まった。ガチガチに固まった僕の胸はクソほど早鐘を打っていて、どうか彼女に伝わるなよ、とそんな言葉だけが頭の中をぐるぐると巡る。
「あ、本当だ。ここ、気持ちいいね…。あは、天井にくらげがいるから本当に海に沈んじゃったみたい…ふぁ…不思議…眠くなってきた…」
「寝るんかい!!」
「いいじゃん…ゲーム、セーブしてあるし…休憩しよ一緒に…」
「いや待て待て待てお前が寝るなら僕は出るから」
「…やだよ…レヴィがあったかいからいいんだもん…」
「は!?」
「ん…おやすみレヴィ…」
「っちょ、…ええ…?もう寝てんだけど早すぎじゃない…?」
こいつどんな神経してんだよ。僕のことなんだと思ってんの?悪魔だよ一応。引きこもり陰キャの前に、僕、悪魔なんだが?
…でも。
スゥスゥと小さな寝息が聞こえてきてしまえばなんだかそういうことすらどうでも良くなって。慣れない体勢で寝ると身体を痛めるだろうと、バスタブに引っ掛けていた腕を僕よりも一回り以上小さな身体に回して支えて。
「はぁ…もう考えるの馬鹿らしい…僕も寝よ」
そのまま僕も目を閉じた。
次の日の早朝に目を覚ました僕が、煩悩退散したのは言うまでもない。
あーもう!男の身体ってこれだからめんどくさい!
きっかけはそんな些細な一言だった。
「…誰から聞いたの」
「ベールが言ってたの。バスタブってレヴィのお部屋にあるアレでしょ?身体痛くならないの?あっ実は柔らかい特注品だったりするのかな?バスタブで眠るなんて映画みたい」
「はぁ?そんなこと言うなんてお前やっぱり不思議な奴だな」
「そう?あの中にレヴィが入ってるの想像できなかったから。あれも何かのお話に出てくる装飾品とかグッズの類なのかなって思ってたし」
鋭いところを突いてくるなと思ったけど、アレは花るりたんみたいな誰にでも見せれるようなアニメじゃなくて魔界のピーーな方面のR5000禁ストーリーだからこの場でそれを言うわけにはいかない。「ああ、まぁそんなとこ」とお茶を濁せば「あのさ、」と輝く瞳が僕を映す。
「レヴィが許してくれるなら、私、あそこで眠ってみたい」
「別にい…はぁ!?おおおおお前何言ってんの!?ていうかなんでそんな話になっちゃうわけ!?第一僕の部屋で寝たいってどういう」
「や、レヴィの部屋って海の中みたいですっごい綺麗だし、あの部屋でうとうとしたらきっと気持ちいいだろうなってずっと思ってたの。ちょうどいいので頼んでみました」
「あ、そういう」
ちょっと期待した僕が馬鹿だった。そうだよな、こんな陰キャ引きこもりオタクに興味があって聞いてくることじゃないくらい簡単に導き出せる答えだったはずなのにな。この!僕って本当に浮かれポンチ!
「…そういうことなら、まぁ、いいけど」
「本当に!?やった!」
「でもタダでとは言わないよね?僕の部屋に来るなら新しく買ったゲームに付き合ってもらうから」
「そのくらい任せて!じゃあ今日、レヴィの部屋行くね!」
「ウン…待ってるから」
そうしておかしな約束が成立したのはお昼のこと。その後半日は何をして過ごしたかはあまり覚えていないけど、着実に時間はすぎて夕食も終わり、暫くした頃。
「レーヴィ!来たよ!」
彼女は僕の部屋を訪れた。
「本当にきたの…」
「だって約束したじゃん」
「いやまぁそうだけど…ッ…とりあえず入って。誰かに見られたらめんどくさい」
「あは!確かに!じゃあ失礼しますー」
悪びれもなく僕の部屋に入り込んで、「あ、これお土産」とスナック菓子を差し出す彼女を追い出せるはずがなかった。けど、来たら来たで楽しい時間が過ごせるもので。本来の目的を忘れそうなくらい新しいゲームに熱中していたら、すぐに日付を跨ぐ時間になってしまった。眠気眼の彼女は言う。
「んん…レヴィ、私、もう眠いかも」
「えっ、あっ、そ、そっか、こんな時間だもんな!?あ、えっと、バスタブ、どぞ…」
「わー、ありがとう!」
彼女がテレビの前から立ち上がって伸びを一つした時に素肌が見えたなんて全くもってそんなことはない。断じてないしあったとしても見てないからセーフ。天を仰ぎながらそんなことをつらつら考えていたら、悩ましい声が聞こえてきてハッと下界に意識を戻す。
「どうしたの。入れば?」
「う〜ん、うん…そうなんだけど…これ、どこにどう身体を収めたら眠れるのかよくわかんない」
「はー?好きなように寝たらいいんだよ。僕なんかはバスタブで寛ぐみたいな格好で寝てるけど」
「ええ…口で言われてもわかんないよそんなの…あっ!実演して見せてレヴィ!」
「我が儘かよ…まぁいいけど…」
パァッと、いかにも「いい案閃きました!」みたいな顔で言われたら無碍に断ることもできなくて、僕も大概彼女に甘いなと少しだけ辟易したけれど、受けてしまったものは仕方がないと、バスタブに入り込んでいつも寝ているように身体を沈めた。
「こんな感じ。わかった?」
「なるほど?」
「…あー…眠くなかったのにここでこうしてると自然に瞼が…」
「えっ!やだズルい!私も一緒に寝る!」
「…はい?」
よいしょと言いつつ僕の隣というか上というかに突然身体を滑り込ませてきたので僕の時はそこで止まった。ガチガチに固まった僕の胸はクソほど早鐘を打っていて、どうか彼女に伝わるなよ、とそんな言葉だけが頭の中をぐるぐると巡る。
「あ、本当だ。ここ、気持ちいいね…。あは、天井にくらげがいるから本当に海に沈んじゃったみたい…ふぁ…不思議…眠くなってきた…」
「寝るんかい!!」
「いいじゃん…ゲーム、セーブしてあるし…休憩しよ一緒に…」
「いや待て待て待てお前が寝るなら僕は出るから」
「…やだよ…レヴィがあったかいからいいんだもん…」
「は!?」
「ん…おやすみレヴィ…」
「っちょ、…ええ…?もう寝てんだけど早すぎじゃない…?」
こいつどんな神経してんだよ。僕のことなんだと思ってんの?悪魔だよ一応。引きこもり陰キャの前に、僕、悪魔なんだが?
…でも。
スゥスゥと小さな寝息が聞こえてきてしまえばなんだかそういうことすらどうでも良くなって。慣れない体勢で寝ると身体を痛めるだろうと、バスタブに引っ掛けていた腕を僕よりも一回り以上小さな身体に回して支えて。
「はぁ…もう考えるの馬鹿らしい…僕も寝よ」
そのまま僕も目を閉じた。
次の日の早朝に目を覚ました僕が、煩悩退散したのは言うまでもない。
あーもう!男の身体ってこれだからめんどくさい!