■読み切りログ(ルシファー以外)
「えっ…と、サタン…?」
戸惑いながらも掛けた言葉に、ピクリと肩が跳ねたのがわかって少しだけ安堵する。
ここはどこだろう、初めて入った部屋だ。ぼやっと見つめていると、乱雑におかれているものにも一定の規則性があることに気づいた。どうやらここは実験器具の倉庫…のような場所らしい。RADにも教科準備室みたいなものがあるんだなぁと、場違いな考えが頭をよぎった。
でも、わからないのは、どうしてサタンがこんな場所にいて、待ち伏せみたいに私をここに引き入れたのかということ。
私をギュッと抱きしめたまま一言も発さないサタンは、何かに怒っているようにも悲しんでいるようにも感じられる。
サタンが憤怒を司る悪魔であることを、私は知っている。
でも多分、私は本当の意味で「憤怒」を露わにしたサタンを、私は知らない。
だから、他人が見れば命知らずかもしれないことだって、できてしまうのだ。
そっとサタンの背中に手を回して、緩くさすってみた。すると更に強い抱擁が返ってきたので私もキュッと抱きしめ返す。
ぽろりと落ちた言葉は、何かを感じた私の本心。
「サタン、我慢しなくていいと思う」
「……」
「何かあったんだよね。サタンが…感情を隠し切れなくなるような何かが。だったら話してみない?私は、ほら、人間だし、逆に何も考えずに話せるかも?」
「…何か、あったか、か」
私の台詞を反芻したサタンが少し身じろいだかと思えば、次の瞬間私の首筋にチリ、と痛みが走り、思わずンッと声が漏れた。それに気を良くしたのか、そのままそこをペロリと舐められてさすがに我慢できずにサタンの制服を引っ張る。
「っちょ、サタン!?ここどこだかわかってるの!?」
「ん…」
「も、やめ、んん、」
首筋に触れる吐息は甘くて熱い。
それはだんだんと耳の方に上がってきて、耳朶を食まれたときには先程までのサタンはどこに。これじゃ私が慰められているようなものだと、役に立たなくなった足を緩め、いつの間にか間に差し込まれていたサタンの脚の上に腰を落とす。
耳許で嬉しそうに空気が揺れて、くらりと目眩がした。
「はぁっ…」
「ンッ…は、も、サタン、なにっ」
「君はさっき、何があったか、と俺に言ったが」
「ふぁ、」
「君のせいだぞ」
耳から移動したサタンの顔は今、私の目の前にあって、綺麗は二つの眼が私を射止めて離さない。
「さっき一緒にいた男」
「へ…?」
「君が俺の彼女だと知らなかったのか?あんなに親しそうにして」
「あっ…見てたの…」
「君も君だ。この学校の奴らは皆悪魔だぞ?気を許すなんていただけないな」
「ご、ごめんなさい…」
とある教室までの行き方がわからなくて同じクラスに居た顔を見つけたから話しかけただけだったのだけど、とは、今は口にしない方がよさそうだなと思った。でも、サタンから感じた怒りのような悲しみのようなものは、あながち間違いではなかったようだ。それって、それって嫉妬でしょ?それを嬉しいと思ってしまう自分がいることに私は気づいていて、口元が緩むのも抑えられない。
「なんだか嬉しそうな顔だな…いいか?俺は今、君のことを叱っているんだ。それなのにその顔は」
「っ、ごめん、あの、もうしないから、気をつけるから、だから許して?」
「っ…まぁ…わかったなら、いいんだ」
じっ、とサタンを見つめたらその意図が通じたようだったのでゆっくりと瞼を閉じると、優しい優しいキスが一つ。二つ。三つ。
まだ唇が触れ合う距離で視線が絡めば、どちらともなくふふっと笑顔が溢れた。
「君の温もりは」
「ん?」
「俺にとって一番の特効薬だな」
「ほんと?」
「ああ。いろんな感情がスッと落ち着くんだ」
「それなら…」
ずっと抱きしめててほしいかな
とは、小さな声で囁いた。
戸惑いながらも掛けた言葉に、ピクリと肩が跳ねたのがわかって少しだけ安堵する。
ここはどこだろう、初めて入った部屋だ。ぼやっと見つめていると、乱雑におかれているものにも一定の規則性があることに気づいた。どうやらここは実験器具の倉庫…のような場所らしい。RADにも教科準備室みたいなものがあるんだなぁと、場違いな考えが頭をよぎった。
でも、わからないのは、どうしてサタンがこんな場所にいて、待ち伏せみたいに私をここに引き入れたのかということ。
私をギュッと抱きしめたまま一言も発さないサタンは、何かに怒っているようにも悲しんでいるようにも感じられる。
サタンが憤怒を司る悪魔であることを、私は知っている。
でも多分、私は本当の意味で「憤怒」を露わにしたサタンを、私は知らない。
だから、他人が見れば命知らずかもしれないことだって、できてしまうのだ。
そっとサタンの背中に手を回して、緩くさすってみた。すると更に強い抱擁が返ってきたので私もキュッと抱きしめ返す。
ぽろりと落ちた言葉は、何かを感じた私の本心。
「サタン、我慢しなくていいと思う」
「……」
「何かあったんだよね。サタンが…感情を隠し切れなくなるような何かが。だったら話してみない?私は、ほら、人間だし、逆に何も考えずに話せるかも?」
「…何か、あったか、か」
私の台詞を反芻したサタンが少し身じろいだかと思えば、次の瞬間私の首筋にチリ、と痛みが走り、思わずンッと声が漏れた。それに気を良くしたのか、そのままそこをペロリと舐められてさすがに我慢できずにサタンの制服を引っ張る。
「っちょ、サタン!?ここどこだかわかってるの!?」
「ん…」
「も、やめ、んん、」
首筋に触れる吐息は甘くて熱い。
それはだんだんと耳の方に上がってきて、耳朶を食まれたときには先程までのサタンはどこに。これじゃ私が慰められているようなものだと、役に立たなくなった足を緩め、いつの間にか間に差し込まれていたサタンの脚の上に腰を落とす。
耳許で嬉しそうに空気が揺れて、くらりと目眩がした。
「はぁっ…」
「ンッ…は、も、サタン、なにっ」
「君はさっき、何があったか、と俺に言ったが」
「ふぁ、」
「君のせいだぞ」
耳から移動したサタンの顔は今、私の目の前にあって、綺麗は二つの眼が私を射止めて離さない。
「さっき一緒にいた男」
「へ…?」
「君が俺の彼女だと知らなかったのか?あんなに親しそうにして」
「あっ…見てたの…」
「君も君だ。この学校の奴らは皆悪魔だぞ?気を許すなんていただけないな」
「ご、ごめんなさい…」
とある教室までの行き方がわからなくて同じクラスに居た顔を見つけたから話しかけただけだったのだけど、とは、今は口にしない方がよさそうだなと思った。でも、サタンから感じた怒りのような悲しみのようなものは、あながち間違いではなかったようだ。それって、それって嫉妬でしょ?それを嬉しいと思ってしまう自分がいることに私は気づいていて、口元が緩むのも抑えられない。
「なんだか嬉しそうな顔だな…いいか?俺は今、君のことを叱っているんだ。それなのにその顔は」
「っ、ごめん、あの、もうしないから、気をつけるから、だから許して?」
「っ…まぁ…わかったなら、いいんだ」
じっ、とサタンを見つめたらその意図が通じたようだったのでゆっくりと瞼を閉じると、優しい優しいキスが一つ。二つ。三つ。
まだ唇が触れ合う距離で視線が絡めば、どちらともなくふふっと笑顔が溢れた。
「君の温もりは」
「ん?」
「俺にとって一番の特効薬だな」
「ほんと?」
「ああ。いろんな感情がスッと落ち着くんだ」
「それなら…」
ずっと抱きしめててほしいかな
とは、小さな声で囁いた。