◆一番星に口付けを
「君っていつも僕の応援に来てくれるよね!もちろん覚えてるよ!」
「ほ、ほんと?ほんとに?」
「もちろんだよ!僕も君のことがだいすーー」
あと数センチでアスモデウスに触れられる。ああ、私の夢がやっと叶う!
ジリリリリリリリ
けたたましい音がしあわせの空間に鳴り響き、ぱちりぱちりと瞬きを繰り返した女の子が一人。彼女はヘルズエンタ所属、ヘビーメタルユニット・スカルベリーのセンターボーカルを務めるアイドルである。
「夢……」
あの日憧れた彼との距離は、まだ遠い。
彼女が芸能界に足を踏みれたのは、街でスカウトされて面白そうだったから、という単純な理由だった。モデル業界は彼女が思っていたよりも随分と華やかで煌びやかで楽しい世界で、充実した毎日を過ごしていたのだが、しばらくして転機が訪れる。
運命の日、彼女は星が美しく煌めく夜のビーチで撮影相手を待っていた。相手は前の仕事が押していて、少し遅れてくるらしい。待っているだけなのも退屈なものだ。だんだんと手持ち無沙汰になってきて、マネージャーへの断りもそこそこにふらふらと海辺を散歩し始めた。
遠く、船がボーッと汽笛を鳴らす音が聞こえる。暗い海を照らすサーチライトがなんだか幻想的で、スマホを掲げてシャッターを切った。自分が撮られるのは慣れているが、撮影することはあまりなくて新鮮だ。続け様にシャッターを切りながら振り向いたところで、画面に何も映らなくなって、そうして頭上から聞こえたのはこんなセリフだった。
「女の子が一人で歩いてたら危ないよ?」
「え?」
「僕がいれば話は別だけどっ」
見上げた先で、ウェーブがかったハニーブラウンの髪が揺れる。にこ、と人の良さそうな笑顔が咲いた。スッと開かれた瞳に吸いこまれたかのように、眩暈。
「君、今日一緒に撮影するモデルさんだよね。相手のアスモデウス、僕なんだ。遅れてごめんね。可愛い僕に免じて許して?」
こてん、と小首を傾げてウインクを一つ。その瞬間、彼女は恋に堕ちてしまった。
それが出会いで、全ての始まり。
撮影が終わり家に帰るや否や、彼女は彼のことを徹底的に調べ上げた。
アスモデウス。アイドルグループNAGEKIのボーカルライン。その傍でモデルの仕事もこなしつつ、自分のブランドを立ち上げるなど幅広い活動を行うステキな人。
(そんな人と一モデルの私が言葉を交わしただけでも奇跡なのかもしれないけど)
それでも、彼のことを知れば知るほど好きになり、自分の気持ちを止められないことを知った彼女は、一念発起、マネージャーに、アイドルになりたいと告白した。モデル業で培ったネームバリューだけでなく素質もあった彼女は、呆気ないくらいスムーズに所属事務所を変え、今、仕事はヘルズエンタテインメントのアイドル業が主になっているが、もちろんモデルの仕事もこなす、ティーンを中心とする売れっ子芸能人となっていた。
ただそれ故に、なかなかに忙しい毎日を過ごしているため、アスモデウスとコンタクトを取る算段を立てる余裕もなく、部屋の壁中に貼られたポスターを眺めるだけの日々が続いている。
「君すっごく可愛い!もちろん僕の次にだけどね♡」「今日の撮影とっても楽しかった!」「また君と一緒にお仕事できたらいいな」「ねぇ、連絡先交換しようよ!」たった一度の撮影でもらった言葉は数知れず。でも、それだけを頼りに日々を過ごすのは難しい。一方で自分から連絡をするのも、今の彼女には荷が重すぎた。だって自分もアイドルの立場。いくら一度仕事を共にしたからといって、覚えていてくれているともわからない。メールが来たって困るに決まっているし、誰?なんて言われたら逆に死んでしまう。
会いたい。本人に会って、言葉を交わしたい。今はまだそれ以上のことなんて考えられないくらいに好きなのだ。乙女心は複雑である。
「はぁ〜……アスモちゃん……すきぃ……」
部屋のベッドに寝転がり、そう呟いたちょうどその時だ。スマホのバイブが震えたのは。
仕事の連絡かな、なんていつもの調子で画面を見ると、表示されていたのはこんな文言だった。
『NAGEKI officialファンクラブ通信 第XX号
NAGEKI OFFICIAL FANCLUB会員様
平素はNAGEKIに並々ならぬご声援を賜りましてありがとうございます。この度、約一年ぶりに、弊社併設カフェステージにNAGEKIが登壇することになりました!この機会にぜひ・・・』
その先を読む必要は、もはやどこにもない。カフェ。カフェ?そんなところに今をときめくあのアイドルたちが?
「せ、戦争だ……!」
もちろん負けるわけにはいかない。日時を確認すると、日付は明日の十五時と書かれている。これは天啓。恐らく批判覚悟でそもそもの集客人数を絞るための日付設定になっているのだ。俗に言う学生や社会人は平日のこんな時間に突然予定入れられない。申し訳ないが天が私に味方している!そう確信した彼女の頭の中はすでにアスモデウスの笑顔でいっぱい。自分も今をときめくアイドルであることをすっかり忘れて、自分に、自分だけに向けられるはずのファンサに酔いしれたのだった。
次の日。万が一のことがあってはいけないとはちゃめちゃにアラームをかけた彼女だったが、四時にすんなり起き上がった。自分もやればできるじゃないかと笑いながら、とにかく整理券をもらわなくてはと始発の電車に乗り、会場へと足を運ぶ。
整理券配布は十時からと書いてはあったが、その時間に行って手にできるとは到底思えない。あのカフェのキャパは椅子などが取り払われたとしても多く見て百人。確実に手にするためにはこのくらいの苦労は屁でもない。しかし。目的地について唖然とした。
「!?徹夜はNGって書いてあったのに!」
そこにはすでに五十ほどの人間が並んでいたからである。そして最後尾の人の真後ろには衝立がしてある。それは「これ以上の整理券はありません」と、新しく並ぶ人を拒否しているようにも見え、ああもうダメなんだと絶望感に襲われた。
けれどちょうどその時、前の方から「はぁ!?」だの「信じられない」だのという甲高い声が響いた。え?え?どうしたの?と彼女が驚いていると、ぽん、と肩が叩かれる。そこにいたのは、こんな早朝なのに身なりの整った優しそうな女性だった。
「NAGEKIの整理券ですか?」
「っ、は、はい!」
「始発組?」
「もちろんです!ルールは守ります!」
「うん、そうですよね。守ってくれてありがとうございます。それでこそのファンです!こちらにどうぞ」
「えっ、でも、」
「整理券はこれから配布されます。今並んで下さってる方はルール無視で徹夜していた方々ですので、申し訳ないけど警備員に取り締まってもらっています。あなたは中でお待ちください」
聞けば、その人はデビルキャニオンで秘書をしている社員らしい。時間になるまで並んでもらうのは申し訳ないからね……とは次期社長の計らいらしく、空調が整う弊社の中でお待ちくださいとのことだった。待遇が良すぎる。しかしこれも業界の重鎮であるデビルキャニオンだからこそできることなのだろう。お言葉に甘えながらも、彼女は、今一番気にしている質問を投げかけた。
「あの、あのっ……私、整理番号、何番でしょうかっ……!」
「ふふっ!ナンバーワン!ですよ!」
こうしてゲリラライブの整理券1をゲットした彼女は、センターの座を獲得し、ライブに臨んだ。途中何度か自分だけに向けてファンサが来たと思ったのはファン心理故だろうけれど、アスモデウスの生歌に加えて本物のアスモデウスが踊る姿を見れて夢のような時間だったのでそれだけで十分だ。
「やっぱりアスモちゃんはサイコ〜ッッ!」
ほくほく笑顔でカフェを出た彼女はお土産にと配られた限定ポストカードを胸にルンルン。せっかくだから事務所をバックに記念撮影でも、とあの日以来よく使うようになったスマホカメラを起動させ……ようとしたところで、メッセージが届いていることに気づいた。ろくに名前も確認せず、それを開くと。
「は、ひぇ……!?!?」
あまりの驚きで危うくスマホをコンクリートに叩きつけるところだった。ぎゅっと握り直して、なぜか前後左右に誰もいないことを確認。それから道の脇の方に移動して、もう一度画面をそっと覗く。
バーン!と表示されていたのはこれまで見たこともないアスモデウスの自撮り写真。そしてもう一枚は彼女とアスモデウスが二人で写り込んでいるツーショット写真であった。
それは本日のステージで撮られたと思われる一枚。今日もステージ上でパシャパシャ自撮りをしていたアスモデウスがいたのは、アスモデウスしか見ていない彼女は知っていたわけだけれど、まさかこんなに上手く二人を切り抜く形で撮影していたなんて。
写真の中で、彼女は心から楽しそうに笑っていて。一方のアスモデウスは、本当にうまい具合に彼女の頬にキスをするようなポージングをとっている。
「っ〜〜!!!?」
赤面必至。こんなファンサを頂いてしまっていいのだろうか。というかこれは一体……?
少し落ち着いてきて、やっとのことで画面をスクロールしてメッセージを見ると、そこにはこう書かれていた。
君がいたから嬉しくなっちゃった!ずっと連絡待ってたのにくれないんだもん。忘れちゃったのかと思って心配になったけど、メンバーが、そういうときは引いて待つのがいいって言うから我慢してたらこんなサプライズ!今日はありがとう!また一緒にお仕事できるといいね♡
「うそ、でしょぉ……!」
認知されていただけでなく、こんな言葉をかけてもらえるなんて!
「っぅぅぅ〜!!お仕事頑張るぞーっっ!!」
空高く拳を突き上げる彼女はやる気に満ちていた。
その数日後、同じ音楽番組に出る予定が入ったのは、もしかしたらアスモデウスからの計らいだったのかもしれない。
「ほ、ほんと?ほんとに?」
「もちろんだよ!僕も君のことがだいすーー」
あと数センチでアスモデウスに触れられる。ああ、私の夢がやっと叶う!
ジリリリリリリリ
けたたましい音がしあわせの空間に鳴り響き、ぱちりぱちりと瞬きを繰り返した女の子が一人。彼女はヘルズエンタ所属、ヘビーメタルユニット・スカルベリーのセンターボーカルを務めるアイドルである。
「夢……」
あの日憧れた彼との距離は、まだ遠い。
彼女が芸能界に足を踏みれたのは、街でスカウトされて面白そうだったから、という単純な理由だった。モデル業界は彼女が思っていたよりも随分と華やかで煌びやかで楽しい世界で、充実した毎日を過ごしていたのだが、しばらくして転機が訪れる。
運命の日、彼女は星が美しく煌めく夜のビーチで撮影相手を待っていた。相手は前の仕事が押していて、少し遅れてくるらしい。待っているだけなのも退屈なものだ。だんだんと手持ち無沙汰になってきて、マネージャーへの断りもそこそこにふらふらと海辺を散歩し始めた。
遠く、船がボーッと汽笛を鳴らす音が聞こえる。暗い海を照らすサーチライトがなんだか幻想的で、スマホを掲げてシャッターを切った。自分が撮られるのは慣れているが、撮影することはあまりなくて新鮮だ。続け様にシャッターを切りながら振り向いたところで、画面に何も映らなくなって、そうして頭上から聞こえたのはこんなセリフだった。
「女の子が一人で歩いてたら危ないよ?」
「え?」
「僕がいれば話は別だけどっ」
見上げた先で、ウェーブがかったハニーブラウンの髪が揺れる。にこ、と人の良さそうな笑顔が咲いた。スッと開かれた瞳に吸いこまれたかのように、眩暈。
「君、今日一緒に撮影するモデルさんだよね。相手のアスモデウス、僕なんだ。遅れてごめんね。可愛い僕に免じて許して?」
こてん、と小首を傾げてウインクを一つ。その瞬間、彼女は恋に堕ちてしまった。
それが出会いで、全ての始まり。
撮影が終わり家に帰るや否や、彼女は彼のことを徹底的に調べ上げた。
アスモデウス。アイドルグループNAGEKIのボーカルライン。その傍でモデルの仕事もこなしつつ、自分のブランドを立ち上げるなど幅広い活動を行うステキな人。
(そんな人と一モデルの私が言葉を交わしただけでも奇跡なのかもしれないけど)
それでも、彼のことを知れば知るほど好きになり、自分の気持ちを止められないことを知った彼女は、一念発起、マネージャーに、アイドルになりたいと告白した。モデル業で培ったネームバリューだけでなく素質もあった彼女は、呆気ないくらいスムーズに所属事務所を変え、今、仕事はヘルズエンタテインメントのアイドル業が主になっているが、もちろんモデルの仕事もこなす、ティーンを中心とする売れっ子芸能人となっていた。
ただそれ故に、なかなかに忙しい毎日を過ごしているため、アスモデウスとコンタクトを取る算段を立てる余裕もなく、部屋の壁中に貼られたポスターを眺めるだけの日々が続いている。
「君すっごく可愛い!もちろん僕の次にだけどね♡」「今日の撮影とっても楽しかった!」「また君と一緒にお仕事できたらいいな」「ねぇ、連絡先交換しようよ!」たった一度の撮影でもらった言葉は数知れず。でも、それだけを頼りに日々を過ごすのは難しい。一方で自分から連絡をするのも、今の彼女には荷が重すぎた。だって自分もアイドルの立場。いくら一度仕事を共にしたからといって、覚えていてくれているともわからない。メールが来たって困るに決まっているし、誰?なんて言われたら逆に死んでしまう。
会いたい。本人に会って、言葉を交わしたい。今はまだそれ以上のことなんて考えられないくらいに好きなのだ。乙女心は複雑である。
「はぁ〜……アスモちゃん……すきぃ……」
部屋のベッドに寝転がり、そう呟いたちょうどその時だ。スマホのバイブが震えたのは。
仕事の連絡かな、なんていつもの調子で画面を見ると、表示されていたのはこんな文言だった。
『NAGEKI officialファンクラブ通信 第XX号
NAGEKI OFFICIAL FANCLUB会員様
平素はNAGEKIに並々ならぬご声援を賜りましてありがとうございます。この度、約一年ぶりに、弊社併設カフェステージにNAGEKIが登壇することになりました!この機会にぜひ・・・』
その先を読む必要は、もはやどこにもない。カフェ。カフェ?そんなところに今をときめくあのアイドルたちが?
「せ、戦争だ……!」
もちろん負けるわけにはいかない。日時を確認すると、日付は明日の十五時と書かれている。これは天啓。恐らく批判覚悟でそもそもの集客人数を絞るための日付設定になっているのだ。俗に言う学生や社会人は平日のこんな時間に突然予定入れられない。申し訳ないが天が私に味方している!そう確信した彼女の頭の中はすでにアスモデウスの笑顔でいっぱい。自分も今をときめくアイドルであることをすっかり忘れて、自分に、自分だけに向けられるはずのファンサに酔いしれたのだった。
次の日。万が一のことがあってはいけないとはちゃめちゃにアラームをかけた彼女だったが、四時にすんなり起き上がった。自分もやればできるじゃないかと笑いながら、とにかく整理券をもらわなくてはと始発の電車に乗り、会場へと足を運ぶ。
整理券配布は十時からと書いてはあったが、その時間に行って手にできるとは到底思えない。あのカフェのキャパは椅子などが取り払われたとしても多く見て百人。確実に手にするためにはこのくらいの苦労は屁でもない。しかし。目的地について唖然とした。
「!?徹夜はNGって書いてあったのに!」
そこにはすでに五十ほどの人間が並んでいたからである。そして最後尾の人の真後ろには衝立がしてある。それは「これ以上の整理券はありません」と、新しく並ぶ人を拒否しているようにも見え、ああもうダメなんだと絶望感に襲われた。
けれどちょうどその時、前の方から「はぁ!?」だの「信じられない」だのという甲高い声が響いた。え?え?どうしたの?と彼女が驚いていると、ぽん、と肩が叩かれる。そこにいたのは、こんな早朝なのに身なりの整った優しそうな女性だった。
「NAGEKIの整理券ですか?」
「っ、は、はい!」
「始発組?」
「もちろんです!ルールは守ります!」
「うん、そうですよね。守ってくれてありがとうございます。それでこそのファンです!こちらにどうぞ」
「えっ、でも、」
「整理券はこれから配布されます。今並んで下さってる方はルール無視で徹夜していた方々ですので、申し訳ないけど警備員に取り締まってもらっています。あなたは中でお待ちください」
聞けば、その人はデビルキャニオンで秘書をしている社員らしい。時間になるまで並んでもらうのは申し訳ないからね……とは次期社長の計らいらしく、空調が整う弊社の中でお待ちくださいとのことだった。待遇が良すぎる。しかしこれも業界の重鎮であるデビルキャニオンだからこそできることなのだろう。お言葉に甘えながらも、彼女は、今一番気にしている質問を投げかけた。
「あの、あのっ……私、整理番号、何番でしょうかっ……!」
「ふふっ!ナンバーワン!ですよ!」
こうしてゲリラライブの整理券1をゲットした彼女は、センターの座を獲得し、ライブに臨んだ。途中何度か自分だけに向けてファンサが来たと思ったのはファン心理故だろうけれど、アスモデウスの生歌に加えて本物のアスモデウスが踊る姿を見れて夢のような時間だったのでそれだけで十分だ。
「やっぱりアスモちゃんはサイコ〜ッッ!」
ほくほく笑顔でカフェを出た彼女はお土産にと配られた限定ポストカードを胸にルンルン。せっかくだから事務所をバックに記念撮影でも、とあの日以来よく使うようになったスマホカメラを起動させ……ようとしたところで、メッセージが届いていることに気づいた。ろくに名前も確認せず、それを開くと。
「は、ひぇ……!?!?」
あまりの驚きで危うくスマホをコンクリートに叩きつけるところだった。ぎゅっと握り直して、なぜか前後左右に誰もいないことを確認。それから道の脇の方に移動して、もう一度画面をそっと覗く。
バーン!と表示されていたのはこれまで見たこともないアスモデウスの自撮り写真。そしてもう一枚は彼女とアスモデウスが二人で写り込んでいるツーショット写真であった。
それは本日のステージで撮られたと思われる一枚。今日もステージ上でパシャパシャ自撮りをしていたアスモデウスがいたのは、アスモデウスしか見ていない彼女は知っていたわけだけれど、まさかこんなに上手く二人を切り抜く形で撮影していたなんて。
写真の中で、彼女は心から楽しそうに笑っていて。一方のアスモデウスは、本当にうまい具合に彼女の頬にキスをするようなポージングをとっている。
「っ〜〜!!!?」
赤面必至。こんなファンサを頂いてしまっていいのだろうか。というかこれは一体……?
少し落ち着いてきて、やっとのことで画面をスクロールしてメッセージを見ると、そこにはこう書かれていた。
君がいたから嬉しくなっちゃった!ずっと連絡待ってたのにくれないんだもん。忘れちゃったのかと思って心配になったけど、メンバーが、そういうときは引いて待つのがいいって言うから我慢してたらこんなサプライズ!今日はありがとう!また一緒にお仕事できるといいね♡
「うそ、でしょぉ……!」
認知されていただけでなく、こんな言葉をかけてもらえるなんて!
「っぅぅぅ〜!!お仕事頑張るぞーっっ!!」
空高く拳を突き上げる彼女はやる気に満ちていた。
その数日後、同じ音楽番組に出る予定が入ったのは、もしかしたらアスモデウスからの計らいだったのかもしれない。