■読み切りログ(ルシファー以外)
「それじゃ、マモン様の誕生を祝って、カンパーーーイ!!!」
「カンパーイ!」
俺の声に続いて皆の声が高らかに響く。
今日は俺の生誕祭。天使として生まれて悪魔になった俺は生まれてから何年経ったかなんぞもう覚えちゃいねーけど、それでもこういう「パーティーに最適な日」に催ししない手はない。
俺はモテるし(おい!そういう眼を向けんじゃねーよ!)ファンクラブだってあるし、バラバラプレゼント貰ったり祝われたりするくらいならパーっと盛り上げたほうが粋ってもんだ。兄弟たちも呼んだからめちゃくちゃ人が増えちまって、やっぱ俺様の人気者は何千年経ったって衰えないなと満足する。
ただ、今年はいつもとちょっと違う。なぜならアイツーー留学生がいるからだ。
シャンパングラスに注がれたデモナスをちょびちょびと飲みながらパーティー会場の壁に背中を預けているアイツを見つけて、一人ならちょうどいいタイミングだと声をかける。
「おう、お前!楽しんでるか!」
「あ、マモン。お誕生日おめでとう」
「ありがとな!ま、お前ひとりここに来てても来てなくても俺様はみんなに祝われてるけどな~!」
「ふふっ、マモンがこんなに人気者だなんて知らなかったよ。考えを改めなくっちゃね。でも、そっか。マモンにも挨拶できたしそろそろ帰ろうかな」
「、は?」
「この会場、煌びやかすぎて私はちょっとお門違いっていうか。ドレスも窮屈で」
庶民すぎてごめんね?なんて言いながら、『ほんと、おめでと』と残すと持っていたグラスを俺に押し付けて、そのままくるりと踵を返す。
嘘だろ、あんなのシャコウジレーってやつじゃねぇか!いつもならもうちょっと言い返してきたりして、それで笑いあってーーそんなことを考えている間にもぐんぐんと遠ざかるアイツの背中。俺はバカだし、口からポンポン思ってることと反対のことがでちまうけど、でも、大事な奴を勘違いさせたことに気づけないほど馬鹿じゃねぇ。
俺が誰よりも祝ってほしかったのはお前だけだ。頼むから帰るなよ。
「あ~も~!!」
テーブルにグラスを置いて駆け出す俺を誰かが呼ぶ声がしたが、そんなことはどうでもよかった。
「待てよ!」
「きゃ!?」
ちょうど出口を跨いだところでアイツの手をとらえて、そのままの勢いで会場を抜ける。
「え、マモン!?主役がこんなとこで何してんの、ってか待って!なんで走っ……ッ早いよ!足がもつれちゃう!」
「そんな、ハイヒールなんて脱いじまえ!」
「はあ!?」
「ついてこいって言ってんだ!俺に!」
走るスピードを緩めない俺に、自分勝手すぎる!、と声がしたが、それでもコイツは本当にハイヒールを脱ぎ捨てて俺についてくる。ほんと、好きだぜそういうとこ。
暫く走って、着いた先は何の変哲もない駐車場の傍ら。行くところを考えていなかったせいでこんな中途半端なことになっちまって、なんだか後味が悪くコイツの顔を見るどころじゃない。けど。
「っはぁ、はぁ、も、突然、っ…ふふっ…もう、マモン、本当に……うふふっ、あはは!」
「!?」
荒い呼吸に混じって聞こえ始めたのは笑い声。なんでこんなに大笑いされているのかわからねぇが、ドレス姿なのにちょっとずれてしまった髪飾りとか、靴を脱ぎ捨てたせいで地面に擦れてしまったのか解れがあるストッキングとか、なによりもめちゃくちゃ大口で笑う姿が、何よりも煌びやかで誰よりもかわいいと思ってしまった。
「っ……なんだよっ!笑うなよ!」
「だってっ!パーティー、まだ終わってないのに、こんな、どこぞのおとぎ話の王子様じゃん!マモン、悪魔なのに」
笑いが止まらないコイツを見ていたら、なんだかいい気分になってきて、あーもう笑うな!と声をあげた勢いで小さな身体を腕の中に収めた。
「!」
「ちょっと黙っとけ!」
「あ…ご、ごめん、笑いすぎた…」
「いや、それはいいんだけどよ…。その、悪かったよ、いてもいなくてもなんて言って」
「へ?」
「お前がいねぇと、困るんだ。パーティーには、お前がいねぇと」
「な、なん、で」
本気でわかんねぇのか?と、顔を覗き込めば、どうやら意味は通じていた様子で、暗がりなのに顔が真っ赤なコイツはやっぱり魔界一愛いと思った。
「だ、だから、ほら!まだプレゼントもらってねぇからよ!!」
「…あ、そのこと…。ごめん、実は私、マモンが何を好きなのかわからなかったから、まだ買ってないんだよ。今度一緒に出掛けた時にでもって思ってたから…」
「ものじゃなくて、いい」
「?」
「俺が欲しいのは、」
言わなくてもわかってほしかったけど、それはどうやら無理な様子。だったらしかたねぇから、と顎に手を添えて、おねだりついでに俺から奪ってやった。
お前からのキスだけだ
「カンパーイ!」
俺の声に続いて皆の声が高らかに響く。
今日は俺の生誕祭。天使として生まれて悪魔になった俺は生まれてから何年経ったかなんぞもう覚えちゃいねーけど、それでもこういう「パーティーに最適な日」に催ししない手はない。
俺はモテるし(おい!そういう眼を向けんじゃねーよ!)ファンクラブだってあるし、バラバラプレゼント貰ったり祝われたりするくらいならパーっと盛り上げたほうが粋ってもんだ。兄弟たちも呼んだからめちゃくちゃ人が増えちまって、やっぱ俺様の人気者は何千年経ったって衰えないなと満足する。
ただ、今年はいつもとちょっと違う。なぜならアイツーー留学生がいるからだ。
シャンパングラスに注がれたデモナスをちょびちょびと飲みながらパーティー会場の壁に背中を預けているアイツを見つけて、一人ならちょうどいいタイミングだと声をかける。
「おう、お前!楽しんでるか!」
「あ、マモン。お誕生日おめでとう」
「ありがとな!ま、お前ひとりここに来てても来てなくても俺様はみんなに祝われてるけどな~!」
「ふふっ、マモンがこんなに人気者だなんて知らなかったよ。考えを改めなくっちゃね。でも、そっか。マモンにも挨拶できたしそろそろ帰ろうかな」
「、は?」
「この会場、煌びやかすぎて私はちょっとお門違いっていうか。ドレスも窮屈で」
庶民すぎてごめんね?なんて言いながら、『ほんと、おめでと』と残すと持っていたグラスを俺に押し付けて、そのままくるりと踵を返す。
嘘だろ、あんなのシャコウジレーってやつじゃねぇか!いつもならもうちょっと言い返してきたりして、それで笑いあってーーそんなことを考えている間にもぐんぐんと遠ざかるアイツの背中。俺はバカだし、口からポンポン思ってることと反対のことがでちまうけど、でも、大事な奴を勘違いさせたことに気づけないほど馬鹿じゃねぇ。
俺が誰よりも祝ってほしかったのはお前だけだ。頼むから帰るなよ。
「あ~も~!!」
テーブルにグラスを置いて駆け出す俺を誰かが呼ぶ声がしたが、そんなことはどうでもよかった。
「待てよ!」
「きゃ!?」
ちょうど出口を跨いだところでアイツの手をとらえて、そのままの勢いで会場を抜ける。
「え、マモン!?主役がこんなとこで何してんの、ってか待って!なんで走っ……ッ早いよ!足がもつれちゃう!」
「そんな、ハイヒールなんて脱いじまえ!」
「はあ!?」
「ついてこいって言ってんだ!俺に!」
走るスピードを緩めない俺に、自分勝手すぎる!、と声がしたが、それでもコイツは本当にハイヒールを脱ぎ捨てて俺についてくる。ほんと、好きだぜそういうとこ。
暫く走って、着いた先は何の変哲もない駐車場の傍ら。行くところを考えていなかったせいでこんな中途半端なことになっちまって、なんだか後味が悪くコイツの顔を見るどころじゃない。けど。
「っはぁ、はぁ、も、突然、っ…ふふっ…もう、マモン、本当に……うふふっ、あはは!」
「!?」
荒い呼吸に混じって聞こえ始めたのは笑い声。なんでこんなに大笑いされているのかわからねぇが、ドレス姿なのにちょっとずれてしまった髪飾りとか、靴を脱ぎ捨てたせいで地面に擦れてしまったのか解れがあるストッキングとか、なによりもめちゃくちゃ大口で笑う姿が、何よりも煌びやかで誰よりもかわいいと思ってしまった。
「っ……なんだよっ!笑うなよ!」
「だってっ!パーティー、まだ終わってないのに、こんな、どこぞのおとぎ話の王子様じゃん!マモン、悪魔なのに」
笑いが止まらないコイツを見ていたら、なんだかいい気分になってきて、あーもう笑うな!と声をあげた勢いで小さな身体を腕の中に収めた。
「!」
「ちょっと黙っとけ!」
「あ…ご、ごめん、笑いすぎた…」
「いや、それはいいんだけどよ…。その、悪かったよ、いてもいなくてもなんて言って」
「へ?」
「お前がいねぇと、困るんだ。パーティーには、お前がいねぇと」
「な、なん、で」
本気でわかんねぇのか?と、顔を覗き込めば、どうやら意味は通じていた様子で、暗がりなのに顔が真っ赤なコイツはやっぱり魔界一愛いと思った。
「だ、だから、ほら!まだプレゼントもらってねぇからよ!!」
「…あ、そのこと…。ごめん、実は私、マモンが何を好きなのかわからなかったから、まだ買ってないんだよ。今度一緒に出掛けた時にでもって思ってたから…」
「ものじゃなくて、いい」
「?」
「俺が欲しいのは、」
言わなくてもわかってほしかったけど、それはどうやら無理な様子。だったらしかたねぇから、と顎に手を添えて、おねだりついでに俺から奪ってやった。
お前からのキスだけだ