■読み切りログ(ルシファー以外)
自分が知らないことなんてもう何もないんだと、大袈裟でもなんでもなく、俺はそう思っていた。けれど違った。君と出会って、それがどれだけ傲った考えだったか思い知った。知らない言葉、知らない景色、そして、知り得なかった感情。君と過ごす日々の中で一つ一つ、さまざまなカケラを集めて創る新しい世界。それをなんと表現したらいいかもまだわからない。だから君に教えてほしい。ずっと傍にいてほしい。
でも。
それが叶わないことを俺はよく知っている。人間が儚い存在だということは、嫌というほど知っている。「サタンくん」と名前を呼ばれるたびに嬉しいのに悲しくなる。いつか離れるくらいなら、いっそ。または、彼女をこちら側に。
「……最低だ、」
「どうしたの、サタンくん?」
「ああ、いや、なんでも……」
「ごめんね、わからないところばっかりで聞いてばかりだから疲れちゃったよね?」
もうすぐテストだということにかまけて、せっかく二人きりになれたというのに、俺ときたら思考を明後日に飛ばしていた。ふる、と頭を振って、なんでもないと笑って見せたが、彼女はそれを信じていないようだ。
「よぉし、ちょっとお茶でも淹れてくる!それと部屋にチョコレートもあるんだ、取ってく、!」
勢いよく立ち上がった彼女の手を引いて、胸に抱き寄せると、彼女が息を呑んだ音が耳に届いた。
「ここに、いてくれ」
「っ、ぁ、わ、わかった」
固まって数秒。おず、と遠慮がちに俺の背中に回ってきた腕に安堵する。腕の中の体温と鼓動が、君がここにあることを教えてくれる。大きく息を吸い込んで、吐き出して、それから抱きしめる力を強めると、んっ、と小さく声が聞こえてやっと緊張が解けた。
「ごめん……君のいう通り、少し疲れてるみたいだ」
「う、ううん、謝らないで。私は大丈夫だから。でもそういうときは早く言ってね?」
「わかった。ありがとう」
じゃあ今日の勉強会はおしまい!と笑う君に、この胸の内を全て曝け出したらどうなってしまうんだろう。知りたくて、知りたくない、君の全て。言えない、聞けない、本心を。
でも。
それが叶わないことを俺はよく知っている。人間が儚い存在だということは、嫌というほど知っている。「サタンくん」と名前を呼ばれるたびに嬉しいのに悲しくなる。いつか離れるくらいなら、いっそ。または、彼女をこちら側に。
「……最低だ、」
「どうしたの、サタンくん?」
「ああ、いや、なんでも……」
「ごめんね、わからないところばっかりで聞いてばかりだから疲れちゃったよね?」
もうすぐテストだということにかまけて、せっかく二人きりになれたというのに、俺ときたら思考を明後日に飛ばしていた。ふる、と頭を振って、なんでもないと笑って見せたが、彼女はそれを信じていないようだ。
「よぉし、ちょっとお茶でも淹れてくる!それと部屋にチョコレートもあるんだ、取ってく、!」
勢いよく立ち上がった彼女の手を引いて、胸に抱き寄せると、彼女が息を呑んだ音が耳に届いた。
「ここに、いてくれ」
「っ、ぁ、わ、わかった」
固まって数秒。おず、と遠慮がちに俺の背中に回ってきた腕に安堵する。腕の中の体温と鼓動が、君がここにあることを教えてくれる。大きく息を吸い込んで、吐き出して、それから抱きしめる力を強めると、んっ、と小さく声が聞こえてやっと緊張が解けた。
「ごめん……君のいう通り、少し疲れてるみたいだ」
「う、ううん、謝らないで。私は大丈夫だから。でもそういうときは早く言ってね?」
「わかった。ありがとう」
じゃあ今日の勉強会はおしまい!と笑う君に、この胸の内を全て曝け出したらどうなってしまうんだろう。知りたくて、知りたくない、君の全て。言えない、聞けない、本心を。