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101本のバラを贈るよりも、言葉を伝えたいと思う。
365本を贈られるとするなら、一分一秒も惜しまず傍にいたいと思う。
その想いは、どうやったら届くのだろうか。
「アズール先輩、これみてください。一日一本、花を受け取る。そんなサービスがあるみたいですよ」
そんなことを考えていたので、その言葉にはどきっとした。それを悟られまいと普段通りを装いながら隣の席に腰を下ろす。僕の返事はそっけない。
「…っ、そ、うなんですね。流行って、いるんですか?」
「どうなんでしょうね。毎日色んなお花を受け取れるのは素敵だなーって、私は思いますけど、万人が花を好いているわけではないので」
「…貴女はそれを『良い』と思うんですか」
「だってオンボロ寮もお花でいっぱいになったら華やぐかなって。全体的にシックな調度品が多いからイメージも変わると思うんですよね〜」
「ああ、インテリアとしてほしいということですか」
危ない。意味を取り違えるところだった。すぐにでも目一杯の花を注文しなければなんて思案していたので思いとどまれてよかった。「気持ちの代わりに花を贈る」ことと「インテリアになるから花を贈る」こととは雲泥の差がある。贈ったのにそういう意味じゃなかった、なんて言われたらプライド丸潰れもいいところだし、数日間は部屋にこもる未来が見える。
海の中では花をプレゼントにする習慣は皆無だったので、一体どう言ったタイミングで渡すのが普通なのかがわからない。書籍から得られる情報は、一般人とずれていることも多いからあまりアテにしてはいけないと学んだのは最近のことだ。
「あ、モストロ・ラウンジにもお花、どうですか?」
「ラウンジに?」
「そうです。陸のレストランには一輪挿しって言って、小さな瓶に一本だけお花を挿してテーブルの上に置く習慣もあるんですよ。なんとなく心が落ち着くというか…。あ、でもここだったらその代わりにキャンドルでも良さそう。キャンドルナイトってロマンチックですよね」
そのセリフを聞くに、彼女はどうやら花にこだわりがあるわけではなさそうだ。だけれど、この話題を振ってきたのはあちらだと思うと、一体どちらが有効な手札なのかわからず混乱してしまう。『貴女はどちらが好きですか』と素直に聞ければよかったが、僕の性格ではそううまくはいかなかった。なので。
「…採用してみましょう」
「へ?」
「モストロ・ラウンジにも花を置いてみます。そうですね…最初はキャッシャーの横にでも。一本だけ注文するのも発注先に申し訳がないので、ついでに貴女の分も頼んでおきます」
「え!?そんな、申し訳ないのはこっちですよ!ええっと…じゃあその…費用!まとめて教えてもらえたら、」
「そのくらい大丈夫ですよ。経費でなんとかしますから。その代わり、毎日取りにきてくださいね」
「いいんですか…?」
「ええ。来週からでも試してみますから、必ず取りにきてくださいよ」
その言葉に、素直なありがとうございますが返ってきたので気分は上々。
(僕に会いにきてくださいというよりも、スマートにはなった、か)
花にはそれぞれ花言葉があったはずだ。
前言撤回。好きだの愛だの口に出すのも悪くはないが、伝えられるならそれもまたよし。モチーフを使うのも悪くない。
そこに込めた気持ちに彼女が気づく日が待ち遠しいと、まだ始まってもいない習慣に思いを馳せる僕自身、相当のロマンチストなのかもしれない。
365本を贈られるとするなら、一分一秒も惜しまず傍にいたいと思う。
その想いは、どうやったら届くのだろうか。
「アズール先輩、これみてください。一日一本、花を受け取る。そんなサービスがあるみたいですよ」
そんなことを考えていたので、その言葉にはどきっとした。それを悟られまいと普段通りを装いながら隣の席に腰を下ろす。僕の返事はそっけない。
「…っ、そ、うなんですね。流行って、いるんですか?」
「どうなんでしょうね。毎日色んなお花を受け取れるのは素敵だなーって、私は思いますけど、万人が花を好いているわけではないので」
「…貴女はそれを『良い』と思うんですか」
「だってオンボロ寮もお花でいっぱいになったら華やぐかなって。全体的にシックな調度品が多いからイメージも変わると思うんですよね〜」
「ああ、インテリアとしてほしいということですか」
危ない。意味を取り違えるところだった。すぐにでも目一杯の花を注文しなければなんて思案していたので思いとどまれてよかった。「気持ちの代わりに花を贈る」ことと「インテリアになるから花を贈る」こととは雲泥の差がある。贈ったのにそういう意味じゃなかった、なんて言われたらプライド丸潰れもいいところだし、数日間は部屋にこもる未来が見える。
海の中では花をプレゼントにする習慣は皆無だったので、一体どう言ったタイミングで渡すのが普通なのかがわからない。書籍から得られる情報は、一般人とずれていることも多いからあまりアテにしてはいけないと学んだのは最近のことだ。
「あ、モストロ・ラウンジにもお花、どうですか?」
「ラウンジに?」
「そうです。陸のレストランには一輪挿しって言って、小さな瓶に一本だけお花を挿してテーブルの上に置く習慣もあるんですよ。なんとなく心が落ち着くというか…。あ、でもここだったらその代わりにキャンドルでも良さそう。キャンドルナイトってロマンチックですよね」
そのセリフを聞くに、彼女はどうやら花にこだわりがあるわけではなさそうだ。だけれど、この話題を振ってきたのはあちらだと思うと、一体どちらが有効な手札なのかわからず混乱してしまう。『貴女はどちらが好きですか』と素直に聞ければよかったが、僕の性格ではそううまくはいかなかった。なので。
「…採用してみましょう」
「へ?」
「モストロ・ラウンジにも花を置いてみます。そうですね…最初はキャッシャーの横にでも。一本だけ注文するのも発注先に申し訳がないので、ついでに貴女の分も頼んでおきます」
「え!?そんな、申し訳ないのはこっちですよ!ええっと…じゃあその…費用!まとめて教えてもらえたら、」
「そのくらい大丈夫ですよ。経費でなんとかしますから。その代わり、毎日取りにきてくださいね」
「いいんですか…?」
「ええ。来週からでも試してみますから、必ず取りにきてくださいよ」
その言葉に、素直なありがとうございますが返ってきたので気分は上々。
(僕に会いにきてくださいというよりも、スマートにはなった、か)
花にはそれぞれ花言葉があったはずだ。
前言撤回。好きだの愛だの口に出すのも悪くはないが、伝えられるならそれもまたよし。モチーフを使うのも悪くない。
そこに込めた気持ちに彼女が気づく日が待ち遠しいと、まだ始まってもいない習慣に思いを馳せる僕自身、相当のロマンチストなのかもしれない。