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とある日。私はアズール先輩の部屋に招かれていた。付き合い始めてから暫く経っているのでこの部屋に招かれるのも何度目かわからない。それでも何度でもこの部屋のゴージャスさには目を見張ってしまう。相も変わらず『あー海が見えるなぁ、綺麗だ〜』とふらふら部屋の奥にある机の椅子に座り込んだその時。私は、机の上に見慣れない卓上カレンダーを見つけ、おや?と声を漏らした。
「あれ?カレンダーなんて、こんなところに置いてあったっけ」
アズール先輩の部屋になんてもう何度も足を踏み入れているわけだから知らない調度品もないはずなんだけど。彼氏とはいえど他人のプライベートなものには触らないように気をつけていたので今まで気づかなかったのだろうか?でもこんなにあからさまに置いてあるものに気づかないことがあるかな。
そんなことを考えつつも、整然と片付けられた机にぽつりと置かれていたそれはあまりにもこの部屋に不釣り合いで、無意識に覗き込んでしまって、びっくり。それにはびっしりと書き込みがしてあって、思わず「うわっ細か!」と独り言を吐いた。
「え…でも、この内容って、」
ダダダダっと、聞こえるはずもない足音が扉の向こうから聞こえた気がする。この分厚い扉の向こうの音なんて聞こえるわけがないから、気のせいなはず、ではあるけど、でもと、入り口を振り返ったと同時。バン!と激しい音が耳に届く。いつも静かなこの寮内で、こんな音に聞いたのは初めてかもしれない。
「っちょっと待ってください!!」
「へ!?」
肩で息をしながら扉を開けたのは、この部屋の主人のアズール先輩。戸惑っている私の近くまでズカズカと近づいてきて、机の上のカレンダーをバタンと手で押さえつける。ハットをかぶっている上に下を向いているので表情は読めない。けれどプルプルと震えている身体を見る限り、激しい感情に苛まれている最中であるようだ。
「…あの…?」
「みましたか」
「はい?」
「これを!!見ましたか!?」
「え、と…ご、ごめんなさい…見ました…ちょっと、だけ」
「っ…!」
グッと下唇を噛んで言葉を飲み込んでしまったアズール先輩に対して、私は至極冷静になった頭で考えていた。
私とアズール先輩にも記念日はいくつかある。お互いの誕生日とお付き合い記念日、この辺りはきちんと手帳やカレンダーにもメモしてちゃんとお祝いをする日だ。私は割と淡白な人間ではあるし、恥ずかしがり屋な自覚もあるけど、『嬉しいことは嬉しいと言いなさい!素直になって悪いことはありませんよ!』と、あのアズール先輩から直々に諭されては、そうか、そういうものかと、意識してお祝い事をするようになった。
けれど今見たカレンダーには、そんな特別な日以外の書き込みもずらりとしてあったのだ。
1日 5回目デート
4日 初めて部屋に招いた
5日 デートは図書室
10日 キス記念日(3)
目視で確認できたのはここまでだ。ただしそれ以外にもたくさん、本当にたくさんの記念が書き込まれていた、と思う。
「全部、覚えててくれたんですか?」
「これはその、違うんです、」
「今まで私と何をしてきたか、書き留めてくれたんでしょう、先輩」
必死で言い訳を考えている様子に、何か勘違いをされていると気づいて態度を改める私。
「あの、別に私は怒ってなんかいないし、やめてほしいとも思ってないですよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「一つ一つの思い出を記録してもらえるのは、恥ずかしいけど、それだけ大切にしてくれてるってことでしょう?全部全部二人でお祝いしてたらいくら時間があっても足りないですけど、でも、覚えておくことを悪いなんて言いませんよ。だから、こうしましょう」
小指を出したら、不思議な顔をされたので、ああこの世界には指切りは存在しないのかと悟って、それでも先輩の手をとって、小指を絡めさせた。
「指切りげんまん!」
「え、」
「嘘ついたら針千本のーます!」
「はぁっ!?」
「指切った!」
このカレンダーに一つの空欄もできないくらい、これからも思い出をたくさん、作りましょうね!
約束。
「あれ?カレンダーなんて、こんなところに置いてあったっけ」
アズール先輩の部屋になんてもう何度も足を踏み入れているわけだから知らない調度品もないはずなんだけど。彼氏とはいえど他人のプライベートなものには触らないように気をつけていたので今まで気づかなかったのだろうか?でもこんなにあからさまに置いてあるものに気づかないことがあるかな。
そんなことを考えつつも、整然と片付けられた机にぽつりと置かれていたそれはあまりにもこの部屋に不釣り合いで、無意識に覗き込んでしまって、びっくり。それにはびっしりと書き込みがしてあって、思わず「うわっ細か!」と独り言を吐いた。
「え…でも、この内容って、」
ダダダダっと、聞こえるはずもない足音が扉の向こうから聞こえた気がする。この分厚い扉の向こうの音なんて聞こえるわけがないから、気のせいなはず、ではあるけど、でもと、入り口を振り返ったと同時。バン!と激しい音が耳に届く。いつも静かなこの寮内で、こんな音に聞いたのは初めてかもしれない。
「っちょっと待ってください!!」
「へ!?」
肩で息をしながら扉を開けたのは、この部屋の主人のアズール先輩。戸惑っている私の近くまでズカズカと近づいてきて、机の上のカレンダーをバタンと手で押さえつける。ハットをかぶっている上に下を向いているので表情は読めない。けれどプルプルと震えている身体を見る限り、激しい感情に苛まれている最中であるようだ。
「…あの…?」
「みましたか」
「はい?」
「これを!!見ましたか!?」
「え、と…ご、ごめんなさい…見ました…ちょっと、だけ」
「っ…!」
グッと下唇を噛んで言葉を飲み込んでしまったアズール先輩に対して、私は至極冷静になった頭で考えていた。
私とアズール先輩にも記念日はいくつかある。お互いの誕生日とお付き合い記念日、この辺りはきちんと手帳やカレンダーにもメモしてちゃんとお祝いをする日だ。私は割と淡白な人間ではあるし、恥ずかしがり屋な自覚もあるけど、『嬉しいことは嬉しいと言いなさい!素直になって悪いことはありませんよ!』と、あのアズール先輩から直々に諭されては、そうか、そういうものかと、意識してお祝い事をするようになった。
けれど今見たカレンダーには、そんな特別な日以外の書き込みもずらりとしてあったのだ。
1日 5回目デート
4日 初めて部屋に招いた
5日 デートは図書室
10日 キス記念日(3)
目視で確認できたのはここまでだ。ただしそれ以外にもたくさん、本当にたくさんの記念が書き込まれていた、と思う。
「全部、覚えててくれたんですか?」
「これはその、違うんです、」
「今まで私と何をしてきたか、書き留めてくれたんでしょう、先輩」
必死で言い訳を考えている様子に、何か勘違いをされていると気づいて態度を改める私。
「あの、別に私は怒ってなんかいないし、やめてほしいとも思ってないですよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「一つ一つの思い出を記録してもらえるのは、恥ずかしいけど、それだけ大切にしてくれてるってことでしょう?全部全部二人でお祝いしてたらいくら時間があっても足りないですけど、でも、覚えておくことを悪いなんて言いませんよ。だから、こうしましょう」
小指を出したら、不思議な顔をされたので、ああこの世界には指切りは存在しないのかと悟って、それでも先輩の手をとって、小指を絡めさせた。
「指切りげんまん!」
「え、」
「嘘ついたら針千本のーます!」
「はぁっ!?」
「指切った!」
このカレンダーに一つの空欄もできないくらい、これからも思い出をたくさん、作りましょうね!
約束。