ワードパレット
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真夜中。
今日は七夕。元の世界では織姫と彦星の逢瀬がある大切な日で、ここではスターゲイザーが活躍する大事な日。
だけれどこの家の周りは大雨が降っている。いずれの行事も今日は難しそうだ。
寝室にある窓には、タシタシと大きな雨粒が打ち付けている。
青白い光が遠くの空に見えたと思えば、少しして、ゴロゴロ……と低い音が聞こえた。
より一層強く、窓ガラスをたたき始めた雨。
窓から見える場所に植えられた青いカーネーションは、つい先日、私たちがずっと幸せであれるようにとの願いを込めて植えたばかり。
こんな雨に降られてしまって、あの蕾は無事だろうかと、はらはらしてしまう。
ふるり。蒸し暑い中にうすら寒い空気が流れてきたような気がして、纏っていた薄いシーツをきゅっと引き寄せた。
「眠れませんか」
キッと軽い音がしてドアから覗いた顔はもちろんジェイドさん。
その手にはお揃いのマグカップが握られている。
「よければホットミルクなどいかがでしょう。温まりますよ」
「…ありがとうございます」
私にそのコップを手渡して、ジェイドさんも同じように窓の外を見つめる。
ホットミルクには、ミルクだけではなくて、ふわっと甘い香りが混じっている。
いつか、『このミルク、私が作るのとちょっと違いますね』と質問したら、『貴女専用の特別なものですから』と言われたことを思い出す。
それにはほんの少しだけチョコレートシロップを混ぜてくれているらしく。私だけのそのトクベツは心を溶かして満たしてくれる。
コクリコクリとミルクを流し込むと、じんわりと広がる優しい甘みが全身に届いて心地よい。
ほっと一息。強張った肩から嘘みたいに緊張が解けていく。
ベッドサイドにカップを置いて、ちょっとだけ横に動いて、ジェイドさんの腕に身体を寄せると、きゅっと腕に収められた。
「こんな天気じゃ、織姫と彦星はあえないですね」
「ああ、貴女がいつか話してくれた、七夕のお話ですか」
「はい。せっかく、一年に一度の逢瀬なのに、かわいそう」
「そうですか?僕はいまごろ、彼らは二人きりでお楽しみだと思いますが」
「?」
私とは全く反対の意見が飛び出して、なぜ?がぬぐえずジェイドさんの顔を見ると、ふふっと笑って私を抱き上げるジェイドさん。
「僕が彦星であったら、先に天気を確認しておいて、当日が大雨だったら嬉々として雨が降る少し前にでかけてしまいます」
「!」
「そうしておけば、雨が降る前には彼女に会えて、大雨が降り始めたら家で二人きり。絶対に邪魔は入らない、最高の一日にできますから」
「それは、」
思いもよらなかったけれど、現代であれば、その程度のこと、可能かもしれないと、少しだけ私の頬が緩んだ。
それを狙って、ジェイドさんは私にキスを一つ。それから髪をよしよしと撫でて、二人、ベッドに入り込む。
雨はますます強くなったけれど、もう怖くも寒くもなかった。
隔絶された世界に二人きり。
こんなに幸せなことはないのだから、織姫も彦星も、二人だけで優しい時間を過ごしているに違いない。
「ジェイドさん、おやすみなさい」
「夢でまた会いましょう。おやすみなさい」
ジェイドさんの腕の中にぴったりと収まってしまえば、ほらね、そこはもう、夢の入り口。
今日は七夕。元の世界では織姫と彦星の逢瀬がある大切な日で、ここではスターゲイザーが活躍する大事な日。
だけれどこの家の周りは大雨が降っている。いずれの行事も今日は難しそうだ。
寝室にある窓には、タシタシと大きな雨粒が打ち付けている。
青白い光が遠くの空に見えたと思えば、少しして、ゴロゴロ……と低い音が聞こえた。
より一層強く、窓ガラスをたたき始めた雨。
窓から見える場所に植えられた青いカーネーションは、つい先日、私たちがずっと幸せであれるようにとの願いを込めて植えたばかり。
こんな雨に降られてしまって、あの蕾は無事だろうかと、はらはらしてしまう。
ふるり。蒸し暑い中にうすら寒い空気が流れてきたような気がして、纏っていた薄いシーツをきゅっと引き寄せた。
「眠れませんか」
キッと軽い音がしてドアから覗いた顔はもちろんジェイドさん。
その手にはお揃いのマグカップが握られている。
「よければホットミルクなどいかがでしょう。温まりますよ」
「…ありがとうございます」
私にそのコップを手渡して、ジェイドさんも同じように窓の外を見つめる。
ホットミルクには、ミルクだけではなくて、ふわっと甘い香りが混じっている。
いつか、『このミルク、私が作るのとちょっと違いますね』と質問したら、『貴女専用の特別なものですから』と言われたことを思い出す。
それにはほんの少しだけチョコレートシロップを混ぜてくれているらしく。私だけのそのトクベツは心を溶かして満たしてくれる。
コクリコクリとミルクを流し込むと、じんわりと広がる優しい甘みが全身に届いて心地よい。
ほっと一息。強張った肩から嘘みたいに緊張が解けていく。
ベッドサイドにカップを置いて、ちょっとだけ横に動いて、ジェイドさんの腕に身体を寄せると、きゅっと腕に収められた。
「こんな天気じゃ、織姫と彦星はあえないですね」
「ああ、貴女がいつか話してくれた、七夕のお話ですか」
「はい。せっかく、一年に一度の逢瀬なのに、かわいそう」
「そうですか?僕はいまごろ、彼らは二人きりでお楽しみだと思いますが」
「?」
私とは全く反対の意見が飛び出して、なぜ?がぬぐえずジェイドさんの顔を見ると、ふふっと笑って私を抱き上げるジェイドさん。
「僕が彦星であったら、先に天気を確認しておいて、当日が大雨だったら嬉々として雨が降る少し前にでかけてしまいます」
「!」
「そうしておけば、雨が降る前には彼女に会えて、大雨が降り始めたら家で二人きり。絶対に邪魔は入らない、最高の一日にできますから」
「それは、」
思いもよらなかったけれど、現代であれば、その程度のこと、可能かもしれないと、少しだけ私の頬が緩んだ。
それを狙って、ジェイドさんは私にキスを一つ。それから髪をよしよしと撫でて、二人、ベッドに入り込む。
雨はますます強くなったけれど、もう怖くも寒くもなかった。
隔絶された世界に二人きり。
こんなに幸せなことはないのだから、織姫も彦星も、二人だけで優しい時間を過ごしているに違いない。
「ジェイドさん、おやすみなさい」
「夢でまた会いましょう。おやすみなさい」
ジェイドさんの腕の中にぴったりと収まってしまえば、ほらね、そこはもう、夢の入り口。