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どこかの誰かに納品する魔法薬を作るためにどうしても必要な花があるとかなんとかで、私が呼び出されたのが夕方のこと。特にやることもなかったので待ち合わせ場所に向かえば、なんと学外に出ると言われて少し驚いた。
「不純異性交友のお誘いだったなんて…!」
「はぁ?何を今更。僕らは無断で寝泊まりを…っ、なんでもありません」
おちゃらけた言葉に対して当然のように口に出された台詞に、自分自身の顔を赤くして吃る先輩が可愛くてついクスクス笑ってしまった。
「からかってごめんなさい。冗談です。でもわざわざ私を誘ってくれた理由を教えてもらってもいいですか?学外ならなおさら、一人で出かける方が早かったんじゃ…」
「おや、理由がなくても会いに来てほしい、と言ったのはそちらでは?僕が慈悲の心でお誘いしたというのに」
その反論に、今度は私が頬を染める番だ。我ながらクサイセリフをかけたなとひとりごちても、過去は戻せない。
そんな戯言を言い合いながら、向かった先の花畑は、桃源郷のように美しかった。
もう陽はほとんど落ちているのに、その仄暗さが逆に心を惹きつける。せせらぎが聞こえる方に歩いてゆくと川があって、そこには薄黄色の花がぷかりぷかりと浮いて流れていた。この甘い香りはナイトジャスミンかな?と首を傾げたら、それを覗き込んだアズール先輩が『香料に使いたくてこれを詰みに来たんです』というから、当たりだ!と微笑む。
「すごく綺麗な場所ですね、ここ」
「ええまぁ。穴場みたいなものです。たまたま、見つけた花畑なので」
アズール先輩の言う『たまたま』は、確実に努力の成果の先にあるものだと思うけれど、今ここでそれを指摘するのは野暮だろうから、素直に受け入れておく。
「穴場に連れてきてくれてありがとうございます、秘密にしておきますね」
「…そうですね、二人だけの、秘密、ですよ」
「こんな場所、マジカメなんかでバズったら大変だから」
「ですね。世界が絶えず移り変わることは仕方のないことではありますが、受け継いで遺していくことも大切ですからね」
「…でも、そういうのを抜きにしても…」
そこで言葉を区切って、流れていくナイトジャスミンを一つ掬って先輩に見せる。
「二人だけの、秘密って、この花の香りに負けず甘いから、誰にも内緒」
「!」
「またいつか、連れてきてくださいね。そのときは…そうですね、もう少しおめかししてくるので、花冠でも作って結婚式の練習でもしましょ?」
「けっ、こ!?」
ぼんっと顔から火を出したアズール先輩は喉まで詰まらせて咽せてしまった。そんなに驚かせちゃったかな。もしかして人魚は花冠とかしないのかな?海の中から見るなら花冠よりも花筏のが身近だったかもしれないな。
先輩の顔を覗き込みながら、その背中をさすって、変なことを言ってごめんなさい、と謝ったら、パッと肩を掴まれた。
今度は私が驚く番。
「結婚式はしますがまだプロポーズしていないからダメです!」
当たり前でない未来を当たり前に語る先輩に、涙が出そうになった。けれど今この美しい景色に涙は似合わないから。そのまま勢いよくアズール先輩の首に抱きついて顔を隠した。
「絶対、絶対、プロポーズして下さいね。待ってますから、ずっと。どこにいても、ずっと、まってますから」
「不純異性交友のお誘いだったなんて…!」
「はぁ?何を今更。僕らは無断で寝泊まりを…っ、なんでもありません」
おちゃらけた言葉に対して当然のように口に出された台詞に、自分自身の顔を赤くして吃る先輩が可愛くてついクスクス笑ってしまった。
「からかってごめんなさい。冗談です。でもわざわざ私を誘ってくれた理由を教えてもらってもいいですか?学外ならなおさら、一人で出かける方が早かったんじゃ…」
「おや、理由がなくても会いに来てほしい、と言ったのはそちらでは?僕が慈悲の心でお誘いしたというのに」
その反論に、今度は私が頬を染める番だ。我ながらクサイセリフをかけたなとひとりごちても、過去は戻せない。
そんな戯言を言い合いながら、向かった先の花畑は、桃源郷のように美しかった。
もう陽はほとんど落ちているのに、その仄暗さが逆に心を惹きつける。せせらぎが聞こえる方に歩いてゆくと川があって、そこには薄黄色の花がぷかりぷかりと浮いて流れていた。この甘い香りはナイトジャスミンかな?と首を傾げたら、それを覗き込んだアズール先輩が『香料に使いたくてこれを詰みに来たんです』というから、当たりだ!と微笑む。
「すごく綺麗な場所ですね、ここ」
「ええまぁ。穴場みたいなものです。たまたま、見つけた花畑なので」
アズール先輩の言う『たまたま』は、確実に努力の成果の先にあるものだと思うけれど、今ここでそれを指摘するのは野暮だろうから、素直に受け入れておく。
「穴場に連れてきてくれてありがとうございます、秘密にしておきますね」
「…そうですね、二人だけの、秘密、ですよ」
「こんな場所、マジカメなんかでバズったら大変だから」
「ですね。世界が絶えず移り変わることは仕方のないことではありますが、受け継いで遺していくことも大切ですからね」
「…でも、そういうのを抜きにしても…」
そこで言葉を区切って、流れていくナイトジャスミンを一つ掬って先輩に見せる。
「二人だけの、秘密って、この花の香りに負けず甘いから、誰にも内緒」
「!」
「またいつか、連れてきてくださいね。そのときは…そうですね、もう少しおめかししてくるので、花冠でも作って結婚式の練習でもしましょ?」
「けっ、こ!?」
ぼんっと顔から火を出したアズール先輩は喉まで詰まらせて咽せてしまった。そんなに驚かせちゃったかな。もしかして人魚は花冠とかしないのかな?海の中から見るなら花冠よりも花筏のが身近だったかもしれないな。
先輩の顔を覗き込みながら、その背中をさすって、変なことを言ってごめんなさい、と謝ったら、パッと肩を掴まれた。
今度は私が驚く番。
「結婚式はしますがまだプロポーズしていないからダメです!」
当たり前でない未来を当たり前に語る先輩に、涙が出そうになった。けれど今この美しい景色に涙は似合わないから。そのまま勢いよくアズール先輩の首に抱きついて顔を隠した。
「絶対、絶対、プロポーズして下さいね。待ってますから、ずっと。どこにいても、ずっと、まってますから」