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『占星術の授業の一環で星の観察をしなければならないので』
そんな都合のよい言葉とともに、今宵、オンボロ寮にやってきたアズール先輩。
オクタヴィネル寮は海の底にあるけれど、そこから一歩外に出さえすれば星の観察に適した場所なんていくらでもあるのだ。それをするための場所がオンボロ寮である必要はないだろう。
それなのにあえて来るということは、その行動には意味があるということだと思いたい。
会いに来てくれたんですか、なんて野暮なことは言わないけれど、きっとそうだから嬉しくなってしまう。
ここはたしかにオンボロと揶揄 われるけど、もとは豪華な寮だったはず。掃除と修繕さえ完了すれば、見栄えがよい素敵なお城になると信じている。その証拠に各部屋にはバルコニーがあるし、談話室だって大きくて、その他設備もちゃんと整っている。
今日は星空の観察だからと、バルコニーに躍り出た。
手渡された双眼鏡を覗かずとも、瞬く星がちかちかと美しい。
「肉眼でも全然観察できそう…」
「賢者の島は辺鄙な場所にありますからね。大自然とまではいかなくとも、空気は綺麗なんですよ」
「はぁ〜…」
「ああ、そういえば、こちら」
「?なんですか?」
お邪魔をするのだから手土産です、と言って渡されたのは、モストロ・ラウンジのアフターヌーンティーでしか食べられないような、小さなケーキの詰め合わせだった。
それらはどれも青色ベースの着色にアラザンや星の形をしたキラキラがちりばめられていて、一目見ただけで限定セットが目に浮かぶ。
「うわぁ…!宇宙モチーフですか?」
「これからの時期はそういったイベントが増えますからね」
「すごーい!また人気が出そうですね。あっ、ミルキーウェイは世界共通?」
「ええ、それはこちらにもありますよ。根本的なことは似ているのではないですか?離れていても空は繋がっている……とね」
「景色自体は全然違うものだけれど、見えてるものから感じることは似ているのかもしれませんね」
「そうですね。全く同じものなどこの世にはありませんから。ミルキーウェイの見え方一つとったってね」
「ですね。あ、繋がっていると言えば、元の世界でもマジカメみたいなSNSがあったんですけど」
「へぇ?」
「それにハマっていたときにとてもたくさん友達ができたと思って喜んだんです。でも、全然違ってました。ただフォローとフォロワーという見えない概念に縛られていただけ。画面上の付き合いは想像以上に希薄でした。逆にそれが心地よい場合もあるんですけどね、割り切れば。でも、話せば話すほど、知れば知るほど、なこともあって疲れて、でも私、いい顔しぃなのでやめられなくて。だからここにきて、マジカメをあまり触らずにマブたちやグリムやオクタヴィネルの皆さんと関わっているのが不思議だけど、楽しいです」
温度を持った関わりは、時に自分を追い詰めたり苦しめたりもするのだけれど、感情の共有は顔を見てこそできるのかもなとも思う。
SNSに浸かりすぎると、息が詰まってしかたないもの。ほっと空を見上げるくらいがちょうどいい。
「…そこに僕との関係はありますか?」
「え?」
「貴女との関わりの中に、僕はいますか」
突然真面目な表情でそんなことを尋ねるものだから、一瞬呆けてしまった。そんなの言うまでもないじゃないと。
「当たり前ですよ。でも、先輩は、私の特別だから、そこにポンっとは含められませんね」
隣に立っていたアズール先輩に寄りかかるように身体を預けると、んんっ、といつもの潰れたカエルのような声が聞こえて、くすくすと笑った。
「だって先輩は私の彼氏ですからね。マブとも他のだれとも違う立ち位置にいてもらわないと」
「っ…ま、まぁ、そうですね」
「アズール先輩、好きですよ。大好き。だから、先輩も、不安になったら理由なんてなくていいから、会いに来てくださいね。今日みたいに!」
「…敵いませんね、貴女には」
困ったような笑い声がして、そっと私の腰を引き寄せた腕に逆らう理由はない。ニセモノの課題を後回しにしたら、宇宙のかけらの二つの命は、シーツの上で愛を語らう。
そんな都合のよい言葉とともに、今宵、オンボロ寮にやってきたアズール先輩。
オクタヴィネル寮は海の底にあるけれど、そこから一歩外に出さえすれば星の観察に適した場所なんていくらでもあるのだ。それをするための場所がオンボロ寮である必要はないだろう。
それなのにあえて来るということは、その行動には意味があるということだと思いたい。
会いに来てくれたんですか、なんて野暮なことは言わないけれど、きっとそうだから嬉しくなってしまう。
ここはたしかにオンボロと
今日は星空の観察だからと、バルコニーに躍り出た。
手渡された双眼鏡を覗かずとも、瞬く星がちかちかと美しい。
「肉眼でも全然観察できそう…」
「賢者の島は辺鄙な場所にありますからね。大自然とまではいかなくとも、空気は綺麗なんですよ」
「はぁ〜…」
「ああ、そういえば、こちら」
「?なんですか?」
お邪魔をするのだから手土産です、と言って渡されたのは、モストロ・ラウンジのアフターヌーンティーでしか食べられないような、小さなケーキの詰め合わせだった。
それらはどれも青色ベースの着色にアラザンや星の形をしたキラキラがちりばめられていて、一目見ただけで限定セットが目に浮かぶ。
「うわぁ…!宇宙モチーフですか?」
「これからの時期はそういったイベントが増えますからね」
「すごーい!また人気が出そうですね。あっ、ミルキーウェイは世界共通?」
「ええ、それはこちらにもありますよ。根本的なことは似ているのではないですか?離れていても空は繋がっている……とね」
「景色自体は全然違うものだけれど、見えてるものから感じることは似ているのかもしれませんね」
「そうですね。全く同じものなどこの世にはありませんから。ミルキーウェイの見え方一つとったってね」
「ですね。あ、繋がっていると言えば、元の世界でもマジカメみたいなSNSがあったんですけど」
「へぇ?」
「それにハマっていたときにとてもたくさん友達ができたと思って喜んだんです。でも、全然違ってました。ただフォローとフォロワーという見えない概念に縛られていただけ。画面上の付き合いは想像以上に希薄でした。逆にそれが心地よい場合もあるんですけどね、割り切れば。でも、話せば話すほど、知れば知るほど、なこともあって疲れて、でも私、いい顔しぃなのでやめられなくて。だからここにきて、マジカメをあまり触らずにマブたちやグリムやオクタヴィネルの皆さんと関わっているのが不思議だけど、楽しいです」
温度を持った関わりは、時に自分を追い詰めたり苦しめたりもするのだけれど、感情の共有は顔を見てこそできるのかもなとも思う。
SNSに浸かりすぎると、息が詰まってしかたないもの。ほっと空を見上げるくらいがちょうどいい。
「…そこに僕との関係はありますか?」
「え?」
「貴女との関わりの中に、僕はいますか」
突然真面目な表情でそんなことを尋ねるものだから、一瞬呆けてしまった。そんなの言うまでもないじゃないと。
「当たり前ですよ。でも、先輩は、私の特別だから、そこにポンっとは含められませんね」
隣に立っていたアズール先輩に寄りかかるように身体を預けると、んんっ、といつもの潰れたカエルのような声が聞こえて、くすくすと笑った。
「だって先輩は私の彼氏ですからね。マブとも他のだれとも違う立ち位置にいてもらわないと」
「っ…ま、まぁ、そうですね」
「アズール先輩、好きですよ。大好き。だから、先輩も、不安になったら理由なんてなくていいから、会いに来てくださいね。今日みたいに!」
「…敵いませんね、貴女には」
困ったような笑い声がして、そっと私の腰を引き寄せた腕に逆らう理由はない。ニセモノの課題を後回しにしたら、宇宙のかけらの二つの命は、シーツの上で愛を語らう。