SS
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
母の日が終わったその日から、アズールさんの様子がおかしい。最初は思い過ごしかなとも考えたが、六月が近づくに連れてどんどん「らしさ」が消え失せていく。なぜだろうと思って考えを巡らせて、ああ、と思い当たることが一つ。気づいてしまったら放っておくこともできないので、聞いてみることにした。
子どもたちを寝かしつけて寝室に戻ると、今日も布団の中で丸まっていて、クスリと頬笑みが漏れた。
ベッドに腰掛け、ぽんぽん、とその膨らみを撫でる。するとすぐにもぞもぞと顔が覗いたが、眉間に皺が寄っていて少しだけ不機嫌なようだ。
「…なんですか。僕は少し考え事そしていたのですが」
「邪魔してすみません。ちょっと聞きたいことがあって。その…アズールさん、もしかして不安になってます?」
「は?なんで僕が。不安になんて、」
「来月」
その単語を口にしたら、ピクリと肩が跳ねたので、恐らく間違いなさそうだ。
「来月は父の日ですもんね」
「…僕は、別に」
「何もしてもらえないかもって、不安なんでしょ」
図星だったようだ。顔が歪んだのですぐにわかった。ものすごくわかりやすくて助かるなと、心の中で苦笑する。
「物心ついて初めてですもんね。でも大丈夫ですよ。子どもたちだって、アズールさんのこと大好きじゃないですか」
「ですが…やはり母親には敵わない」
「バカですねぇ、愛情は比較するようなものじゃないですよ」
学生のころによくしてもらったみたいに、今日は私がアズールさんの柔らかい髪を撫でてみる。むす、とした表情から力が抜けたところをみると、少しは不安が除けたようだ。
「それにもし、もしも何もなかったら。そのときは私が」
「え?」
「私がたっくさん、日頃のお礼をこめて、愛情、かけますから」
きょとんと一瞬呆けて、それから少し赤く染まった頬。こういう反応は学生の頃から変わらず、なんだか懐かしい気分になり、そのまま額にちゅっと口付けを落とした。
「だから、私の愛情を、子どものそれと比較しないでくださいね」
「僕が貴女を愛しているこの気持ちと、子どもたちを大切に思う気持ちは、ベクトルが違いますから。比較なんてしませんし、できませんよ」
「!わ、」
そのまま腰を引かれたと思えば、私はすっぽりとアズールさんの腕の中に収められた。
「父の日だけと言わず、毎日愛情かけてもらえません?」
「ええ〜?愛情、これでもたっくさんかけているつもりでいたんですが、不足してました?」
「貴女からもらえるなら、いくらでもほしいので。ご存知の通り、貪欲なんです、僕」
その言葉を聞いて思わず笑い声がもれた。ああ、幸せだなと。この気持ちがそのまま丸っと伝わればいいのに。
そんなことを想いながら、私の方からも腕を回してぎゅっと抱き締める。あの頃から変わらない優しい抱擁に、見かけによらず逞しい胸。それから以前とは変わったコロンの香りは、二人お揃いのもの。
「わかりました。じゃあもっともっと、誠心誠意、愛してるって伝えていきますね」
「お願いしますよ」
おやすみなさいと言葉を交わし、二人揺蕩う夢の中。
これだけ近くにいたならば、夢でも一緒にいられるよね、と、静かな夜を愛する貴方とともに。
子どもたちを寝かしつけて寝室に戻ると、今日も布団の中で丸まっていて、クスリと頬笑みが漏れた。
ベッドに腰掛け、ぽんぽん、とその膨らみを撫でる。するとすぐにもぞもぞと顔が覗いたが、眉間に皺が寄っていて少しだけ不機嫌なようだ。
「…なんですか。僕は少し考え事そしていたのですが」
「邪魔してすみません。ちょっと聞きたいことがあって。その…アズールさん、もしかして不安になってます?」
「は?なんで僕が。不安になんて、」
「来月」
その単語を口にしたら、ピクリと肩が跳ねたので、恐らく間違いなさそうだ。
「来月は父の日ですもんね」
「…僕は、別に」
「何もしてもらえないかもって、不安なんでしょ」
図星だったようだ。顔が歪んだのですぐにわかった。ものすごくわかりやすくて助かるなと、心の中で苦笑する。
「物心ついて初めてですもんね。でも大丈夫ですよ。子どもたちだって、アズールさんのこと大好きじゃないですか」
「ですが…やはり母親には敵わない」
「バカですねぇ、愛情は比較するようなものじゃないですよ」
学生のころによくしてもらったみたいに、今日は私がアズールさんの柔らかい髪を撫でてみる。むす、とした表情から力が抜けたところをみると、少しは不安が除けたようだ。
「それにもし、もしも何もなかったら。そのときは私が」
「え?」
「私がたっくさん、日頃のお礼をこめて、愛情、かけますから」
きょとんと一瞬呆けて、それから少し赤く染まった頬。こういう反応は学生の頃から変わらず、なんだか懐かしい気分になり、そのまま額にちゅっと口付けを落とした。
「だから、私の愛情を、子どものそれと比較しないでくださいね」
「僕が貴女を愛しているこの気持ちと、子どもたちを大切に思う気持ちは、ベクトルが違いますから。比較なんてしませんし、できませんよ」
「!わ、」
そのまま腰を引かれたと思えば、私はすっぽりとアズールさんの腕の中に収められた。
「父の日だけと言わず、毎日愛情かけてもらえません?」
「ええ〜?愛情、これでもたっくさんかけているつもりでいたんですが、不足してました?」
「貴女からもらえるなら、いくらでもほしいので。ご存知の通り、貪欲なんです、僕」
その言葉を聞いて思わず笑い声がもれた。ああ、幸せだなと。この気持ちがそのまま丸っと伝わればいいのに。
そんなことを想いながら、私の方からも腕を回してぎゅっと抱き締める。あの頃から変わらない優しい抱擁に、見かけによらず逞しい胸。それから以前とは変わったコロンの香りは、二人お揃いのもの。
「わかりました。じゃあもっともっと、誠心誠意、愛してるって伝えていきますね」
「お願いしますよ」
おやすみなさいと言葉を交わし、二人揺蕩う夢の中。
これだけ近くにいたならば、夢でも一緒にいられるよね、と、静かな夜を愛する貴方とともに。