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彼女と過ごす時間に起こることは全て好きなのだけれど「これ」が特別好きなのは、外気でヒンヤリと冷たくなったはずの互いの身体が、合わさったところから暖かくなるところを一段と感じられるからだ。
今日も東雲には波のように真っ白な雲が流れる。
朝もまだ早いこの時間に僕らが外にいるのは夜を共に過ごしたせいで、こういう時、僕は一度寮に戻ってから教室に向かうようにしていた。
そのせいでまだひんやりとしたこの季節特有の肌寒さを感じているわけだ。
交わした唇からは熱が伝わり、僕と彼女の心をじんわり温める。ゆっくりと離れていく互いの身体に寂しさを覚えると、ふと、彼女がこんなことを口にした。
「数ならで なにはのことも かひなきに などみをつくし 思ひそめけむ」
「え?」
「取るにも足らない私が貴方を思っても意味がないのに。どうしてこの身を尽くすほどに思い始めてしまったの」
「なにを、」
「私の故郷に伝わる…うーん、短い…手紙みたいなものです。綺麗な表現でしょう?先輩はこんなふうに言われたらどう答えますか?」
彼女は僕を試すように一歩、距離を取った。
「それは、…恋をした証でしょう」
「!」
「それ程に深く思っているなら、きっと伝わるのでは?だから…それを書いた方は、想い人と番うことができるのではないですか」
「…そっか…」
ほわりと浮かべた笑顔は、何か抜け落ちたように透明で。今にもここからいなくなるんじゃないか、そう思うほどだった。
思わず引き寄せて存在を確かめるように二本の腕で囲って抱くと、わぁ!と子どもが発するような声を上げた後、くすくす笑った。
「どうしたんですか、先輩」
「貴女は、ここにいますよね」
「いますよ。います。…この世界が許す限り、ずっとアズール先輩の隣にいます。だって、身を尽くすほど、先輩のこと好きだから」
「僕だって…同じ気持ちですよ」
「先輩、光の君ですね」
「?」
「色男!ってことです!」
その言葉に、心外だと顔を上げた瞬間、唇を掠め取られた。
のちに知ることになるのだ。この時の僕の応えが、その光るの君とやらと同じだと。
『みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな』
ーそれは、身を尽くして恋する印でしょう。このような場所でもめぐりあったのです。だから、私と貴女の縁は深いのだよ。ー
出逢うはずのなかった僕らがこの世界で出逢ったのだから、きっとこの出逢いは必然なのだと。
今日も東雲には波のように真っ白な雲が流れる。
朝もまだ早いこの時間に僕らが外にいるのは夜を共に過ごしたせいで、こういう時、僕は一度寮に戻ってから教室に向かうようにしていた。
そのせいでまだひんやりとしたこの季節特有の肌寒さを感じているわけだ。
交わした唇からは熱が伝わり、僕と彼女の心をじんわり温める。ゆっくりと離れていく互いの身体に寂しさを覚えると、ふと、彼女がこんなことを口にした。
「数ならで なにはのことも かひなきに などみをつくし 思ひそめけむ」
「え?」
「取るにも足らない私が貴方を思っても意味がないのに。どうしてこの身を尽くすほどに思い始めてしまったの」
「なにを、」
「私の故郷に伝わる…うーん、短い…手紙みたいなものです。綺麗な表現でしょう?先輩はこんなふうに言われたらどう答えますか?」
彼女は僕を試すように一歩、距離を取った。
「それは、…恋をした証でしょう」
「!」
「それ程に深く思っているなら、きっと伝わるのでは?だから…それを書いた方は、想い人と番うことができるのではないですか」
「…そっか…」
ほわりと浮かべた笑顔は、何か抜け落ちたように透明で。今にもここからいなくなるんじゃないか、そう思うほどだった。
思わず引き寄せて存在を確かめるように二本の腕で囲って抱くと、わぁ!と子どもが発するような声を上げた後、くすくす笑った。
「どうしたんですか、先輩」
「貴女は、ここにいますよね」
「いますよ。います。…この世界が許す限り、ずっとアズール先輩の隣にいます。だって、身を尽くすほど、先輩のこと好きだから」
「僕だって…同じ気持ちですよ」
「先輩、光の君ですね」
「?」
「色男!ってことです!」
その言葉に、心外だと顔を上げた瞬間、唇を掠め取られた。
のちに知ることになるのだ。この時の僕の応えが、その光るの君とやらと同じだと。
『みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな』
ーそれは、身を尽くして恋する印でしょう。このような場所でもめぐりあったのです。だから、私と貴女の縁は深いのだよ。ー
出逢うはずのなかった僕らがこの世界で出逢ったのだから、きっとこの出逢いは必然なのだと。