SS
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ナイトレイブンカレッジ。そこはどこにでもありふれた、それでいて、一風変わった学園だった。
最初に教育委員会から人事異動を命じられたときはどうしようかとも思ったが、どうせ逆らうこともできないのだと、特に未練もなく元の勤め先に別れを告げた。
新しく養護教員として勤務する先となったその学園は、魔法士養成学校で男子校だ。
これまでずっと共学にいたためか、少しの緊張と、それから教師としてもってはいけない「期待」が私の心を躍らせる。
今日は先生方への挨拶と、それから荷物整理のためだけに足を踏み入れたのだが。
「あれ?」
迷った。
たかが学校とタカをくくっていたのがいけない。思った以上に広く、わかりにくい内装をしているここで「たかが」は通じそうになかった。
入口に貼ってあった校舎図を必至で思い出そうとするも、すでに朧気なその記憶は私の気持ちを焦らせるだけだ。先に進もうにも、戻ろうにも、現在地がわからないのでどうにもしようがない。
「とにかく一旦、職員室に戻らないと」
元来た道、らしきものを、踵を返して歩いていく。ふらふらしていればきっと見つかるだろう。こういうときだけ楽観的な私は、しん、と静かな校舎を、さながら学生気分で歩いていく。
夏の匂いを含んだ風が、頬をかすめて気持ちがいい。
ふ、と中庭に目を向けると、そこにはグレーの髪をサラリとゆらす、一人の男の子がいた。
あまりにも美しいその横顔に、一瞬、時が止まる。
(絵画、みたい...)
どこか別の世界が切り取られて存在するような。そんな。
思わず止まっていた足。そらせない目線。
見つめる先にいた彼が、ツ、と視線をこちらにやった刹那、止まった時はパチンとはじけて動き出した。
「…、どなたですか?」
「あ…」
「カレッジではみない顔ですね」
「あ、え、と、今度この学園に異動してきた、養護教員、です」
「こんな時期に、珍しいですね」
「そうだ…ですね。私も突然こんなことになるなんて、思ってなかったから」
「僕はこの学園のオクタヴィネル寮に所属する、2年のアズール・アーシェングロットです。何か不便なことがありましたら、ぜひご相談ください。今後ともよろしくお願いします」
「え?あ、はい、よろしく...」
年齢にそぐわないその言葉遣いは、それでも、その容貌にひどくマッチしていて「ご相談」という言葉が、なんだかストンと胸に落ちて、頷いてしまった。
それが私と彼のファーストコンタクト。
のちに彼とあのような関係になろうとは、誰が想像しただろうか。
最初に教育委員会から人事異動を命じられたときはどうしようかとも思ったが、どうせ逆らうこともできないのだと、特に未練もなく元の勤め先に別れを告げた。
新しく養護教員として勤務する先となったその学園は、魔法士養成学校で男子校だ。
これまでずっと共学にいたためか、少しの緊張と、それから教師としてもってはいけない「期待」が私の心を躍らせる。
今日は先生方への挨拶と、それから荷物整理のためだけに足を踏み入れたのだが。
「あれ?」
迷った。
たかが学校とタカをくくっていたのがいけない。思った以上に広く、わかりにくい内装をしているここで「たかが」は通じそうになかった。
入口に貼ってあった校舎図を必至で思い出そうとするも、すでに朧気なその記憶は私の気持ちを焦らせるだけだ。先に進もうにも、戻ろうにも、現在地がわからないのでどうにもしようがない。
「とにかく一旦、職員室に戻らないと」
元来た道、らしきものを、踵を返して歩いていく。ふらふらしていればきっと見つかるだろう。こういうときだけ楽観的な私は、しん、と静かな校舎を、さながら学生気分で歩いていく。
夏の匂いを含んだ風が、頬をかすめて気持ちがいい。
ふ、と中庭に目を向けると、そこにはグレーの髪をサラリとゆらす、一人の男の子がいた。
あまりにも美しいその横顔に、一瞬、時が止まる。
(絵画、みたい...)
どこか別の世界が切り取られて存在するような。そんな。
思わず止まっていた足。そらせない目線。
見つめる先にいた彼が、ツ、と視線をこちらにやった刹那、止まった時はパチンとはじけて動き出した。
「…、どなたですか?」
「あ…」
「カレッジではみない顔ですね」
「あ、え、と、今度この学園に異動してきた、養護教員、です」
「こんな時期に、珍しいですね」
「そうだ…ですね。私も突然こんなことになるなんて、思ってなかったから」
「僕はこの学園のオクタヴィネル寮に所属する、2年のアズール・アーシェングロットです。何か不便なことがありましたら、ぜひご相談ください。今後ともよろしくお願いします」
「え?あ、はい、よろしく...」
年齢にそぐわないその言葉遣いは、それでも、その容貌にひどくマッチしていて「ご相談」という言葉が、なんだかストンと胸に落ちて、頷いてしまった。
それが私と彼のファーストコンタクト。
のちに彼とあのような関係になろうとは、誰が想像しただろうか。