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今日も今日とて、デュースは眠気眼を擦りながら一限目が開かれる教室へと足を踏み入れようとしていた。が、扉を開ける直前、聞こえてきたセリフに耳を疑う。
「そう、同棲初日だからすっごく気を使っちゃった…お陰で寝不足だよ…」
声の主はこの学園で唯一の女子で、デュースのマブで間違いない。咄嗟にドアを背に隠れたデュースは、「決してやましい気持ちがあったわけでは。盗み聞きしているわけではないんだが、同棲、という言葉が意味することくらい、僕でも知ってるぞ」とグルグルと考え、そのまま頭を抱えていた。
「グリムとは仲良くしてんの?」
同じクラスの奴が彼女に無邪気な質問を投げかける。デュースは、「違う、僕が気になってるのはそうじゃなくて!」と勢いよく立ち上がって扉に耳をくっつける。
「ふな!オレ様もオンボロ寮所属だからな!新人とは仲良くしてやってるんだぞ!」
「へぇー?喧嘩もしなかったのか。偉いぞグリムくん!」
「バカにするなー!でもな、夜中にコイツの上で大声出すから、そこは注意してやったぞ!先輩としてな!」
「それは仕方ないでしょ?可愛いもんじゃない。でも、そのせいで寝不足なんだけどね」
脳内に衝撃が走った。
ああ、アイツは僕たちマブを差し置いて、違う奴とよろしくやっていたのか…と、デュースの心に落胆や寂しさ、それから嫉妬のような気持ちがフツフツと湧いてくる。
(一緒に住んで、一緒に眠るくらい仲のいい奴が、いたんだな…)
どんな顔をして教室に入ればいいやらわからず呆然としていると、『何やってんだお前』とエースが肩を引っ掴みデュースを無理矢理中に連れ込んだ。
「っはよー監督生…って何してんの?」
「待てエース!そんな単刀直入にデリケートな話題は…!」
アワアワと顔を隠したり慌てたりしているデュースを、クラスの皆が不思議な表情で見つめるも、そんなことよりとスマホの画面をズイ!、と目の前に出されて数秒。
「ね、猫?」
「そう!可愛いでしょー?昨日ね、オンボロ寮の影で隠れて鳴いていたから保護したの。今日学園長にどうしたらいいか聞いてみようと思って」
ずっと私の膝の上から離れなくてね、と相貌を崩してハートを飛ばす彼女を見ながら、デュースはほっと胸を撫で下ろしたのだった。
(ん?ホッと?なんで僕がホッとしてるんだ?)
デュースが自分の気持ちに気づくのは、まだ少し、先の話。