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これは、陸に来たばかり、オクタヴィネル寮に入ったばかりの頃のバースデーの話。
ジェイドとフロイドは相変わらずサプライズをするための構想を練るのに忙しかった。
「ねぇジェイド、今年は何する?」
「そうですねぇ。毎年サプライズしていると新鮮味がなくなってきますから」
「アズールも構えてるもんねぇ」
「ふふ、最近は驚かせられるか、驚いてしまうかの戦いのようになってますしね」
出会った頃から続くアズール生誕サプライズ対決は、今のところリーチ兄弟のサプライズが優勢なものの、何度か気づかれてやり返されることも経験済みであった。
しかし、『陸にきて初めて』となるこの記念日は、後にも先にも一度きり。今回だけは、なんとしてでもあのアズールの驚かせたいと、二人は思っていた。
「えーっと、今まで何したっけぇ?誕生日になると同時に祝う、油断させといて終わる間際に祝う、面白グッズではじける、アズールの母ちゃんに化けて近づく…」
「もはややっていないことを探す方が難しいなんて、本当に楽しいことです」
「あは。たしかに!オレたち飽きっぽいけどさ、ほんと、アズールには楽しませてもらってんねぇー」
楽しい事が好き。
予想外ならもっと好き。
二人だけの世界にアズールという異分子が入り込むだけで、こんなにも世界が広がるなんて、思ってもいなかった。
仲間?同級生?友達?家族?
そんなありきたりの言葉では表せない絆は、たしかにあるのだ。
「とはいえ誕生日はすぐそこに迫っていますからね…いい加減に腹を括らなくては」
「うーん…珊瑚の海ではできねぇことがい……アーッ!!ジェイドジェイド!良い事思いついた!耳貸して!」
「?フロイド、ここには僕らだけしかいませんよ?」
「いーからいーから!」
なぜかコソコソとされたサプライズ案は、これ以上ないほどに素敵と思われた。それを聞いたジェイドもニヤリと不敵に笑って、今年は僕らの勝ちですね、と呟いたのだった。
それから数日後。
アズールの誕生日当日になる。
アズールはずっとその時に備えて身構えていたが、朝も昼も何事もなく時を過ごした。寮服に着替えて、ラウンジ開店時間を待つ。
「接客中に何かが起こるとは思えない…今年は夜か」
そうひとりごちて、いいでしょう受けて立ちます!と鏡の前でニッと笑って部屋を出る。
コツコツと磨き上げられた靴を鳴らし、ハットの位置を調整しながら、談話室の扉を開け、その先のラウンジへーーー
パンパンパンパパン!!
一歩談話室へ足を踏み入れた途端、入り乱れるようなクラッカーが鳴り響いた。ポカンと呆けたアズールの目には、弾けたクラッカーを持つたくさんの寮生たちと、談話室の中心でニコニコと笑うジェイドとフロイドの姿が映る。
そしてその前には。
「は…?ケーキ…?」
「せーの!」
「「「ハッピーバースデー!!アズール・アーシェングロットおめでとうっ!!」」」
真後ろに控えていた寮生が徐にアズールのハットを奪い、もう一人がケーキ型のバースデー帽子を被せた。サッと腕に通されたのは、『本日の主役』と書かれた腕章。
間違いない、これはつまり。
「はぁい!サプライズ成功に一枚撮りまぁす!」
「アズール、こちらを向いてください」
「は…」
パシャリ。
思考停止したアズールが声に釣られて上を向くとシャッターが切られてポラロイド写真がすぐに出来上がる。
そこでやっと、「してやられた」ことに気づいたアズールがワナワナと震え始めた。
「おーまーえーたーちー…!」
「今年は僕らの勝ち、ですかね?」
「サプライズだーいせいこーう!」
「っく……ふふっ…あははっ!!完敗ですよ!お前たちは本当にっ…!」
心底楽しそうに笑うアズールの手を引き、真ん中に連れ出したジェイドとフロイドに小さな声で告げられた「ありがとうございます」という言葉は、何よりの宝物になる。
「誕生日だけは好きなものを食べると仰っていたので、皆で新メニューをいくつか考案してみましたよ」
「ぜーんぶアズールの好きなもんで作ってあるからレポート頼むねぇ!」
「いいでしょう!!舌が唸りますよ、生半可なものだったら作った者を呼び出しです!」
初めての陸のバースデーは、こうしてサプライズ大成功をおさめた。
皆で撮影した写真が実家にも送られていて、その次の年には負けじとリストランテの従業員一堂の写真が送られてくるのは、また先のお話。
ジェイドとフロイドは相変わらずサプライズをするための構想を練るのに忙しかった。
「ねぇジェイド、今年は何する?」
「そうですねぇ。毎年サプライズしていると新鮮味がなくなってきますから」
「アズールも構えてるもんねぇ」
「ふふ、最近は驚かせられるか、驚いてしまうかの戦いのようになってますしね」
出会った頃から続くアズール生誕サプライズ対決は、今のところリーチ兄弟のサプライズが優勢なものの、何度か気づかれてやり返されることも経験済みであった。
しかし、『陸にきて初めて』となるこの記念日は、後にも先にも一度きり。今回だけは、なんとしてでもあのアズールの驚かせたいと、二人は思っていた。
「えーっと、今まで何したっけぇ?誕生日になると同時に祝う、油断させといて終わる間際に祝う、面白グッズではじける、アズールの母ちゃんに化けて近づく…」
「もはややっていないことを探す方が難しいなんて、本当に楽しいことです」
「あは。たしかに!オレたち飽きっぽいけどさ、ほんと、アズールには楽しませてもらってんねぇー」
楽しい事が好き。
予想外ならもっと好き。
二人だけの世界にアズールという異分子が入り込むだけで、こんなにも世界が広がるなんて、思ってもいなかった。
仲間?同級生?友達?家族?
そんなありきたりの言葉では表せない絆は、たしかにあるのだ。
「とはいえ誕生日はすぐそこに迫っていますからね…いい加減に腹を括らなくては」
「うーん…珊瑚の海ではできねぇことがい……アーッ!!ジェイドジェイド!良い事思いついた!耳貸して!」
「?フロイド、ここには僕らだけしかいませんよ?」
「いーからいーから!」
なぜかコソコソとされたサプライズ案は、これ以上ないほどに素敵と思われた。それを聞いたジェイドもニヤリと不敵に笑って、今年は僕らの勝ちですね、と呟いたのだった。
それから数日後。
アズールの誕生日当日になる。
アズールはずっとその時に備えて身構えていたが、朝も昼も何事もなく時を過ごした。寮服に着替えて、ラウンジ開店時間を待つ。
「接客中に何かが起こるとは思えない…今年は夜か」
そうひとりごちて、いいでしょう受けて立ちます!と鏡の前でニッと笑って部屋を出る。
コツコツと磨き上げられた靴を鳴らし、ハットの位置を調整しながら、談話室の扉を開け、その先のラウンジへーーー
パンパンパンパパン!!
一歩談話室へ足を踏み入れた途端、入り乱れるようなクラッカーが鳴り響いた。ポカンと呆けたアズールの目には、弾けたクラッカーを持つたくさんの寮生たちと、談話室の中心でニコニコと笑うジェイドとフロイドの姿が映る。
そしてその前には。
「は…?ケーキ…?」
「せーの!」
「「「ハッピーバースデー!!アズール・アーシェングロットおめでとうっ!!」」」
真後ろに控えていた寮生が徐にアズールのハットを奪い、もう一人がケーキ型のバースデー帽子を被せた。サッと腕に通されたのは、『本日の主役』と書かれた腕章。
間違いない、これはつまり。
「はぁい!サプライズ成功に一枚撮りまぁす!」
「アズール、こちらを向いてください」
「は…」
パシャリ。
思考停止したアズールが声に釣られて上を向くとシャッターが切られてポラロイド写真がすぐに出来上がる。
そこでやっと、「してやられた」ことに気づいたアズールがワナワナと震え始めた。
「おーまーえーたーちー…!」
「今年は僕らの勝ち、ですかね?」
「サプライズだーいせいこーう!」
「っく……ふふっ…あははっ!!完敗ですよ!お前たちは本当にっ…!」
心底楽しそうに笑うアズールの手を引き、真ん中に連れ出したジェイドとフロイドに小さな声で告げられた「ありがとうございます」という言葉は、何よりの宝物になる。
「誕生日だけは好きなものを食べると仰っていたので、皆で新メニューをいくつか考案してみましたよ」
「ぜーんぶアズールの好きなもんで作ってあるからレポート頼むねぇ!」
「いいでしょう!!舌が唸りますよ、生半可なものだったら作った者を呼び出しです!」
初めての陸のバースデーは、こうしてサプライズ大成功をおさめた。
皆で撮影した写真が実家にも送られていて、その次の年には負けじとリストランテの従業員一堂の写真が送られてくるのは、また先のお話。