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記念日などはだいたいお休みをとってくれるアズールさんだったが、今年の誕生日は何やら大事な用事があるとかで、一人家に残されてしまった。
別にどうということもないし、普通に考えたら逐一休みを取るなんてことしてくれる夫の方が少ないと思われるわけだが、毎年そうだったので寂しい気持ちはぬぐえない。
「何しようかな…食べ物とワインは準備したけど、うーん、お祝いだからもう少しパッとしたものも用意しようかな?でもカロリーがなぁ…」
一通り家事を済ませてしまったら、暇になってしまい、こてんとベッドに横たわる。
品の良いデコラティブピローが並んだ大きめのベッド。
その中でもいつも眠るときに使っている枕を選んでうにうに顔を埋める。
「はぁ、いい香り」
学園にいたころから変らない、アズールさんのコロンの香り。何時嗅いでも大好きな香り。
あの頃は知らなかったけれど、どうやら自分で調香した特注品らしい。
どおりで探しても同じコロンが見つからないわけである。
そういえば昔一度、クルーウェル先生に注意されたことがあったなぁと、そんな思い出にくすりと笑みが漏れた。
「だまされるなよ、って言われたけど、結局堕ちちゃって。私がちょろいのか、それとも運命だったのか…なんてね」
後者だったらいいなと思いながら、本人がいないのをいいことに、思う存分その香りを胸に吸い込むと、愛しい人が近くにいないことが寂しくなった。
その気持ちを振り払うように枕を抱きしめて、それから私は夢の中へと旅立った。
暫く。
微かな物音にぽわりと意識が覚醒したら、私の髪に何かが触れた。
「全く。本当に、僕の妻は大物ですね」
さらり。さらり。
丁寧に指の間で弄ばれては枕の溝へと落ちてゆく髪。隠れていた耳と頬が空気に晒されると、ふわりと薫ったのは枕と同じコロンの匂い。
「僕、昔から誕生日は好きなものを食べると決めているんですよね」
ついで耳元で囁かれた言葉に返事をしようとしたらり耳をかぷりと食まれた。
声を出す間もなく、そこから、流れるように耳たぶ、頬、目尻へと暖かい感触が移動してきて、優しく転がされた私の身体。
うっすらと目を開けると、至極楽しそうに、幸せそうに、瞳を細めるアズールさんが私を見下ろしていた。
「おかえりなンンッ」
「んっ、はぁ、…ただいま戻りましたよ」
熱烈なキスで迎えられた私は頬を染めながらアズールさんを引き寄せた。
「貴女と過ごす時間がほしくて、必要最低限だけして帰ってきました。そうしたら枕に顔を埋めているものだから」
「アズールさんの香りがするのに、本物がいないから寂しいなって思って…いたら、寝ちゃってました」
「ふふ、そんなことだろうと思いましたよ。寂しい思いをさせたことは謝ります。が、そのまま寝てしまうなんて、さすがですよ」
「お咎めはなしですよ?」
クスクスと笑って強請るように熱い視線を送ると、もう一度触れるだけのキスが降ってきた。
「こうなっては仕方ありません。できたてのメインディッシュからいただきましょうか」
「お誕生日は食べたいものを食べるって決まりでしたよね」
「おや、かなり昔に話したのに覚えていましたか」
「だってあの頃からずーっとアズール『先輩』だけ見てたから」
「…!」
久しぶりに真っ赤に染まったアズールさんを見つめれば、熱烈ですねとはにかまれた。
一日、また一日と過ごすうちに刻まれた愛する気持ちが伝わって、こうやって長い時間を一緒にいられるようになったことに感謝しなくっちゃ。
「お誕生日おめでとうございます、アズールさんに目一杯の祝福を!」
メインディッシュから、たくさんの愛を捧げます。
別にどうということもないし、普通に考えたら逐一休みを取るなんてことしてくれる夫の方が少ないと思われるわけだが、毎年そうだったので寂しい気持ちはぬぐえない。
「何しようかな…食べ物とワインは準備したけど、うーん、お祝いだからもう少しパッとしたものも用意しようかな?でもカロリーがなぁ…」
一通り家事を済ませてしまったら、暇になってしまい、こてんとベッドに横たわる。
品の良いデコラティブピローが並んだ大きめのベッド。
その中でもいつも眠るときに使っている枕を選んでうにうに顔を埋める。
「はぁ、いい香り」
学園にいたころから変らない、アズールさんのコロンの香り。何時嗅いでも大好きな香り。
あの頃は知らなかったけれど、どうやら自分で調香した特注品らしい。
どおりで探しても同じコロンが見つからないわけである。
そういえば昔一度、クルーウェル先生に注意されたことがあったなぁと、そんな思い出にくすりと笑みが漏れた。
「だまされるなよ、って言われたけど、結局堕ちちゃって。私がちょろいのか、それとも運命だったのか…なんてね」
後者だったらいいなと思いながら、本人がいないのをいいことに、思う存分その香りを胸に吸い込むと、愛しい人が近くにいないことが寂しくなった。
その気持ちを振り払うように枕を抱きしめて、それから私は夢の中へと旅立った。
暫く。
微かな物音にぽわりと意識が覚醒したら、私の髪に何かが触れた。
「全く。本当に、僕の妻は大物ですね」
さらり。さらり。
丁寧に指の間で弄ばれては枕の溝へと落ちてゆく髪。隠れていた耳と頬が空気に晒されると、ふわりと薫ったのは枕と同じコロンの匂い。
「僕、昔から誕生日は好きなものを食べると決めているんですよね」
ついで耳元で囁かれた言葉に返事をしようとしたらり耳をかぷりと食まれた。
声を出す間もなく、そこから、流れるように耳たぶ、頬、目尻へと暖かい感触が移動してきて、優しく転がされた私の身体。
うっすらと目を開けると、至極楽しそうに、幸せそうに、瞳を細めるアズールさんが私を見下ろしていた。
「おかえりなンンッ」
「んっ、はぁ、…ただいま戻りましたよ」
熱烈なキスで迎えられた私は頬を染めながらアズールさんを引き寄せた。
「貴女と過ごす時間がほしくて、必要最低限だけして帰ってきました。そうしたら枕に顔を埋めているものだから」
「アズールさんの香りがするのに、本物がいないから寂しいなって思って…いたら、寝ちゃってました」
「ふふ、そんなことだろうと思いましたよ。寂しい思いをさせたことは謝ります。が、そのまま寝てしまうなんて、さすがですよ」
「お咎めはなしですよ?」
クスクスと笑って強請るように熱い視線を送ると、もう一度触れるだけのキスが降ってきた。
「こうなっては仕方ありません。できたてのメインディッシュからいただきましょうか」
「お誕生日は食べたいものを食べるって決まりでしたよね」
「おや、かなり昔に話したのに覚えていましたか」
「だってあの頃からずーっとアズール『先輩』だけ見てたから」
「…!」
久しぶりに真っ赤に染まったアズールさんを見つめれば、熱烈ですねとはにかまれた。
一日、また一日と過ごすうちに刻まれた愛する気持ちが伝わって、こうやって長い時間を一緒にいられるようになったことに感謝しなくっちゃ。
「お誕生日おめでとうございます、アズールさんに目一杯の祝福を!」
メインディッシュから、たくさんの愛を捧げます。