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ラウンジのお仕事の帰り道。アズール先輩と見上げた空には、冬のダイヤモンドが綺麗に出ていた。
その言葉を知ったのは、だいぶ昔のことだったように思う。こちらの世界にギリシア神話があるとは思えないけど、牡牛座をみると、ゼウスとエウロペは身分もろもろを忘れて仲良く暮らしているのかな、などと考えてしまって、私の思考は現実世界から遠ざかる。
星の話をすると白昼夢でも見ているかのようになるよな、とは、いつ誰に言われた言葉だったろうか。
「…すか?ねぇ…か?聞こえてますか?!」
「…っぁ、」
「貴女、大丈夫ですか?体調が悪いとか…」
心の奥底にある記憶に浸っていたせいで、一緒に星を眺めていたアズール先輩を置き去りにしてしまっていた。
ごめんなさい、大丈夫です
そう返事をすると、腕を引かれてすっぽりとその胸に抱き留められた。瞬間鼻腔を満たすのは、アズール先輩の香り。ああ、ここが今の私の、現実だ。
「あんまり、遠くへ行かないでください…」
「すみません、蓋をしていた記憶が、ふと」
「居なくなってしまうかと」
「アズール先輩を置いて、私がどこへ行けるっていうんですか…大丈夫です。ここにいます」
「潜在的な記憶は貴女を従えて、どこか僕の知らない場所へ、貴女を連れて行く」
「でも、記憶は自分の意思ではなくせない…アズール先輩もよく知っているでしょう?」
忘れたい記憶こそなくならず、忘れたくない記憶はほろほろとこぼれ落ちていく。ヒトはなんて難儀な生き物なんだろう。でも。
「アズール先輩、私は、こうして抱きしめてもらうと、ああ、私の現実はここだって…そう思えるんです」
「…」
「だから、何度でもこうしてください。その度に記憶を上書きして、ここにとどまらせて」
記憶という目に見えない鎖を断ち切ってでも、あなたとここに在りたいんです。
「…もう少し、貴女を抱きしめていたいと言ったら、その時間を僕にくれますか…?」
「もちろんです」
私をここに繋ぎ止めてくれるなら、どれだけでも。あなたと時間を共有させて。
その言葉を知ったのは、だいぶ昔のことだったように思う。こちらの世界にギリシア神話があるとは思えないけど、牡牛座をみると、ゼウスとエウロペは身分もろもろを忘れて仲良く暮らしているのかな、などと考えてしまって、私の思考は現実世界から遠ざかる。
星の話をすると白昼夢でも見ているかのようになるよな、とは、いつ誰に言われた言葉だったろうか。
「…すか?ねぇ…か?聞こえてますか?!」
「…っぁ、」
「貴女、大丈夫ですか?体調が悪いとか…」
心の奥底にある記憶に浸っていたせいで、一緒に星を眺めていたアズール先輩を置き去りにしてしまっていた。
ごめんなさい、大丈夫です
そう返事をすると、腕を引かれてすっぽりとその胸に抱き留められた。瞬間鼻腔を満たすのは、アズール先輩の香り。ああ、ここが今の私の、現実だ。
「あんまり、遠くへ行かないでください…」
「すみません、蓋をしていた記憶が、ふと」
「居なくなってしまうかと」
「アズール先輩を置いて、私がどこへ行けるっていうんですか…大丈夫です。ここにいます」
「潜在的な記憶は貴女を従えて、どこか僕の知らない場所へ、貴女を連れて行く」
「でも、記憶は自分の意思ではなくせない…アズール先輩もよく知っているでしょう?」
忘れたい記憶こそなくならず、忘れたくない記憶はほろほろとこぼれ落ちていく。ヒトはなんて難儀な生き物なんだろう。でも。
「アズール先輩、私は、こうして抱きしめてもらうと、ああ、私の現実はここだって…そう思えるんです」
「…」
「だから、何度でもこうしてください。その度に記憶を上書きして、ここにとどまらせて」
記憶という目に見えない鎖を断ち切ってでも、あなたとここに在りたいんです。
「…もう少し、貴女を抱きしめていたいと言ったら、その時間を僕にくれますか…?」
「もちろんです」
私をここに繋ぎ止めてくれるなら、どれだけでも。あなたと時間を共有させて。