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『年末はこたつに入りながら暖をとって、みかんを食べて除夜の鐘が鳴るのを聞くんですよ』と、先日、彼女が教えてくれた、彼女流の年の越し方には俄然興味が湧いた。
こたつとはなんなのか、除夜の鐘とはなんなのかと根掘り葉掘り聞き返し、それらをオンボロ寮にセッティングさせたのは、ほんの一日前のことだ。
オセチリョウリやトシコシソバは、今後ラウンジのメニューとして使うためにも一通り試食させてもらったので腹もいい具合に膨れている。後はもう、年が変わるのを待つのみとなった。
グリムさんも『起きたまま年を越すんだゾ!』と張り切ってはいたが、ついに睡魔に敗北した様子。グゥグゥと大きな寝息を立てているので、彼女が自室へ連れて行った。
ゆえに今、談話室には僕と彼女の二人きり。
カウントダウンにはいささか早いが、ここで眠ってしまうのは勿体無い。
先程暖かい飲み物を淹れて彼女が戻ってきた際に、なぜか『お隣いいですか』と狭いところに入り込んできたので、ギクシャクしてしまったのは秘密にしておきたいのだが、バレているだろうか。
「アズール先輩、」
「…なんですか?」
「あの、今年はありがとうございました。先輩と出会って、こういう節目に近くにいることができて、幸せでした」
「それはこちらこそ、ですよ」
「来年も、できたらそれから先も、よろしくお願いしますね」
突然そんなことを言うものだから、素直な疑問が漏れてしまった。
「貴女、年を越したら僕の隣からいなくなるおつもりなんですか?」
「へ!?そんなわけないでしょう!」
「…それなら、いいんですけれど、『できたらそれから先も』なんていうから…」
「だって、アズール先輩がいつ私に愛想をつかすかもわからないのに…」
「はい?僕は貴女を番としたって言ったでしょう?一生添い遂げるつもりですが?」
質問を投げかけると存外近くにあった彼女の顔は耳まで真っ赤になっていた。今のセリフの何が恥ずかしかったのかよくわからないが、俯いてしまったためにその髪がサラリと表情を隠してしまっている。こんなに近くにいるのに、顔が見れないなんて。
「あの…?」
「い、っしょう…一緒にって、」
「え?」
「番って、一緒に、なって…もし…子ができたとして…」
「なんだ。貴女、子供が欲しいんですか?」
「っ、ちが…!今はそういう話じゃないです!」
「僕は欲しいですけどね」
「もう!!そうじゃなくて!!」
勢いこちらに向き直ってぷりぷりするところが可愛くてふふと笑いが漏れる。今度は表情が見えたので、少し安心した。
ここで彼女の機嫌を損ねては本心が聞けなくなってしまうと、視線で続きを促せば、む、と唇を突き出しながらも『…家族ができたら、』と彼女は小さく声を出した。
「私はもちろんその子を愛するけれど、恋をするのはアズール先輩にだけなんだろうって…一生ドキドキするんだろうって、そう思います」
「…!」
「そんな一生が、あったらいいな…って、あはっ!なに言ってるんでしょうね私!恥ずかしいですね!聞かなかったことにしてくだ、わ!?」
「っだから貴女は!」
恥ずかしいのはこちらだと、勢い、彼女を押し倒す。
こたつにはいっていてよかった。
ぽかんと僕を見つめる顔がいつもより幼く見えて、この空気とのアンバランスさにこちらの体温がぐわっと上がった。
「…なんで、アズール先輩が、真っ赤なんですか?」
「っ、」
「今のは、何に恥ずかしくなっちゃったんです?押し倒したのはそっちなのに」
「貴女だって、さっき何に真っ赤になってたんですか」
「わ、私はっ、その…、っていうか先輩もういろんなことに慣れちゃって、いつも恥ずかしいのは私だけなんだから、先輩から教えてくださいよ!」
「恥ずかしいのは私だけ?そんなことあるわけないでしょう!慣れることなんて一つもない!いつだって僕は貴女に翻弄されっぱなしだ!」
貴女の瞳が同級生に向くだけでモヤモヤさせられて。
貴女目当てにラウンジにくる輩にはイライラして。
貴女の笑顔がお客に向くのすら、やめろと叫びたくなるのに。
なんと伝えたらわかってもらえるのかがわからなくて胸が苦しい。
番っても恋煩いなどバカにされること間違いなしなのだから口には出せない。
伸ばした手が貴女に触れられなくなったらと考えてしまう自分はいつもそこにいる。
手に入れたものを失う怖さは、もう嫌という程この身に染み付いているのだ。
だから、二度と失わないように、その手を引き、身体を引き寄せて、何度だって強く抱きしめる。
火照った身体が冷める前に幾度も互いに熱を移して。今夜も貴女の深くへ誘ってほしい。
数秒か、数分か
見つめあったまま時が刻まれていく中、『アズール、せんぱい、』と、僕の名を呼ぶ小さな声が耳に届いて。
音もなく瞼が閉じられたのを合図に、唇を寄せたその時だった。
ボーン…ボーーン……
大きな音が突然談話室に鳴り響いて、二人してまん丸く目を開けてしまった。
「た、タイミング…っ…」
「もうそんな時間だったんですか…」
「っ、先輩!」
「は、ン!?」
初めての年越しは、あけましておめでとうございます、の言葉よりも先に、彼女からの甘い口づけから。
はにかんだ彼女にこちらからの深いキスのお返しをしたのは言うまでもない。
この先も永遠に、ハッピーニューイヤーと聴かせて。
代わりに僕は、愛を囁くから。
こたつとはなんなのか、除夜の鐘とはなんなのかと根掘り葉掘り聞き返し、それらをオンボロ寮にセッティングさせたのは、ほんの一日前のことだ。
オセチリョウリやトシコシソバは、今後ラウンジのメニューとして使うためにも一通り試食させてもらったので腹もいい具合に膨れている。後はもう、年が変わるのを待つのみとなった。
グリムさんも『起きたまま年を越すんだゾ!』と張り切ってはいたが、ついに睡魔に敗北した様子。グゥグゥと大きな寝息を立てているので、彼女が自室へ連れて行った。
ゆえに今、談話室には僕と彼女の二人きり。
カウントダウンにはいささか早いが、ここで眠ってしまうのは勿体無い。
先程暖かい飲み物を淹れて彼女が戻ってきた際に、なぜか『お隣いいですか』と狭いところに入り込んできたので、ギクシャクしてしまったのは秘密にしておきたいのだが、バレているだろうか。
「アズール先輩、」
「…なんですか?」
「あの、今年はありがとうございました。先輩と出会って、こういう節目に近くにいることができて、幸せでした」
「それはこちらこそ、ですよ」
「来年も、できたらそれから先も、よろしくお願いしますね」
突然そんなことを言うものだから、素直な疑問が漏れてしまった。
「貴女、年を越したら僕の隣からいなくなるおつもりなんですか?」
「へ!?そんなわけないでしょう!」
「…それなら、いいんですけれど、『できたらそれから先も』なんていうから…」
「だって、アズール先輩がいつ私に愛想をつかすかもわからないのに…」
「はい?僕は貴女を番としたって言ったでしょう?一生添い遂げるつもりですが?」
質問を投げかけると存外近くにあった彼女の顔は耳まで真っ赤になっていた。今のセリフの何が恥ずかしかったのかよくわからないが、俯いてしまったためにその髪がサラリと表情を隠してしまっている。こんなに近くにいるのに、顔が見れないなんて。
「あの…?」
「い、っしょう…一緒にって、」
「え?」
「番って、一緒に、なって…もし…子ができたとして…」
「なんだ。貴女、子供が欲しいんですか?」
「っ、ちが…!今はそういう話じゃないです!」
「僕は欲しいですけどね」
「もう!!そうじゃなくて!!」
勢いこちらに向き直ってぷりぷりするところが可愛くてふふと笑いが漏れる。今度は表情が見えたので、少し安心した。
ここで彼女の機嫌を損ねては本心が聞けなくなってしまうと、視線で続きを促せば、む、と唇を突き出しながらも『…家族ができたら、』と彼女は小さく声を出した。
「私はもちろんその子を愛するけれど、恋をするのはアズール先輩にだけなんだろうって…一生ドキドキするんだろうって、そう思います」
「…!」
「そんな一生が、あったらいいな…って、あはっ!なに言ってるんでしょうね私!恥ずかしいですね!聞かなかったことにしてくだ、わ!?」
「っだから貴女は!」
恥ずかしいのはこちらだと、勢い、彼女を押し倒す。
こたつにはいっていてよかった。
ぽかんと僕を見つめる顔がいつもより幼く見えて、この空気とのアンバランスさにこちらの体温がぐわっと上がった。
「…なんで、アズール先輩が、真っ赤なんですか?」
「っ、」
「今のは、何に恥ずかしくなっちゃったんです?押し倒したのはそっちなのに」
「貴女だって、さっき何に真っ赤になってたんですか」
「わ、私はっ、その…、っていうか先輩もういろんなことに慣れちゃって、いつも恥ずかしいのは私だけなんだから、先輩から教えてくださいよ!」
「恥ずかしいのは私だけ?そんなことあるわけないでしょう!慣れることなんて一つもない!いつだって僕は貴女に翻弄されっぱなしだ!」
貴女の瞳が同級生に向くだけでモヤモヤさせられて。
貴女目当てにラウンジにくる輩にはイライラして。
貴女の笑顔がお客に向くのすら、やめろと叫びたくなるのに。
なんと伝えたらわかってもらえるのかがわからなくて胸が苦しい。
番っても恋煩いなどバカにされること間違いなしなのだから口には出せない。
伸ばした手が貴女に触れられなくなったらと考えてしまう自分はいつもそこにいる。
手に入れたものを失う怖さは、もう嫌という程この身に染み付いているのだ。
だから、二度と失わないように、その手を引き、身体を引き寄せて、何度だって強く抱きしめる。
火照った身体が冷める前に幾度も互いに熱を移して。今夜も貴女の深くへ誘ってほしい。
数秒か、数分か
見つめあったまま時が刻まれていく中、『アズール、せんぱい、』と、僕の名を呼ぶ小さな声が耳に届いて。
音もなく瞼が閉じられたのを合図に、唇を寄せたその時だった。
ボーン…ボーーン……
大きな音が突然談話室に鳴り響いて、二人してまん丸く目を開けてしまった。
「た、タイミング…っ…」
「もうそんな時間だったんですか…」
「っ、先輩!」
「は、ン!?」
初めての年越しは、あけましておめでとうございます、の言葉よりも先に、彼女からの甘い口づけから。
はにかんだ彼女にこちらからの深いキスのお返しをしたのは言うまでもない。
この先も永遠に、ハッピーニューイヤーと聴かせて。
代わりに僕は、愛を囁くから。