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ジェイド先輩とは山に出かけることが多い。
山には川も沢もあり、キラキラと光を反射して流れていく水で遊んだりもする。
今日はそんな水遊びに相応しい、陽射しが気持ちの良い日だった。
「自然は美しいなぁー…」
「興味を持っていただけて嬉しいですよ。」
「ふふっ、もともと好きなんですよ。だから私からしても、ジェイド先輩が自然を愛してくれる人でとっても嬉しいです。」
「世界が変わろうともその本質は変わりませんからね。何かしら、共通点があってよかったです…ただ、」
ぱしゃぱしゃと川に手を。
指先だけで遊んでも冷たいのに、ジェイド先輩は躊躇いなく手首まで差し入れて水流を楽しんでいる様子だ。寒冷地出身の人魚は冷たさに強いのかな?と思ったけれど、よく考えたら自分の元いた世界の寒い国の人たちが寒さに強いわけではなかったので、そんなわけはないかと思い直す。
『貴女…』と発された言葉に意識を引き戻されて、はひ?、と頓狂な声が溢れた。
「ふふ、貴女はわかりやすいですね。思考が明後日の方向へいっていたでしょう?」
「あ…すみません…」
ぱしゃ、と手を引き上げて、キラキラする水滴を払ったジェイド先輩は、相変わらず眉毛をハの字にしてこう言った。
「貴女は、自分の世界のことを思い返すとき、すぐに心此処に在らずの表情になります。正直に申し上げて、僕はそれが好きではありません。」
「へ、」
「貴女の記憶が全て無くなればいいのに、とすら思ってしまう。…けれどそれは…そんなことをすれば、貴女が貴女でなくなってしまうから…それすらも、」
すっかり水気がなくなった、ひんやりとしたその手で、先輩は私の頬を撫でて弄ぶ。
「僕が、塗り替えてしまいたい。」
「…故郷の体験の記憶は忘れられないけれど、私の中のほとんどは、もうこちらの世界で…ジェイド先輩で、いっぱいです。」
「そうだと、いいのですが。」
「先輩と見たい景色も、やりたいことも、たくさんあります。でもそれは多分、私の記憶があるからこそだから。…未来を見るために、必要なものです。」
先輩の手が私の頬で温められて。
私の頬が冷たくなる。
こんな些細なことでも、二人でしか出来ないのだ。
「二人いるからできることは、沢山あります。」
「…ふ…貴女には教えられてばかりです。」
「逆です。もらってばかりなのは、私。」
「なるほど、お互い様であればこれ以上のことはありませんね。」
「随分前から、ジェイド先輩がいるこの世界が、私の世界で、現実ですから。」
そこまで言うと、先輩はやっとの事で満足したように笑った。
「では貴女は、この現実で何がしたいですか?」
「先輩と二人なら何をしても楽しいから…あっでも、」
頭に浮かんだ景色を。
陸の生き物の私と、海で育ったジェイド先輩にぴったりかもしれないと声に乗せた。
「先輩と、オーロラを見たいです。」
「オーロラ?理由を伺っても?」
「オーロラは、天上の波みたいなんですよ。」
「ああ、確かに…」
「キラキラして…色が変わって…寄せては返す白波。陸で、海を味わうの。いつか、ここで、見たいです。ジェイド先輩と。」
未来をたくさん。ジェイド先輩と。
今はまだ見えぬ星に、願いを。
あなたとふたり、いつまでも。
山には川も沢もあり、キラキラと光を反射して流れていく水で遊んだりもする。
今日はそんな水遊びに相応しい、陽射しが気持ちの良い日だった。
「自然は美しいなぁー…」
「興味を持っていただけて嬉しいですよ。」
「ふふっ、もともと好きなんですよ。だから私からしても、ジェイド先輩が自然を愛してくれる人でとっても嬉しいです。」
「世界が変わろうともその本質は変わりませんからね。何かしら、共通点があってよかったです…ただ、」
ぱしゃぱしゃと川に手を。
指先だけで遊んでも冷たいのに、ジェイド先輩は躊躇いなく手首まで差し入れて水流を楽しんでいる様子だ。寒冷地出身の人魚は冷たさに強いのかな?と思ったけれど、よく考えたら自分の元いた世界の寒い国の人たちが寒さに強いわけではなかったので、そんなわけはないかと思い直す。
『貴女…』と発された言葉に意識を引き戻されて、はひ?、と頓狂な声が溢れた。
「ふふ、貴女はわかりやすいですね。思考が明後日の方向へいっていたでしょう?」
「あ…すみません…」
ぱしゃ、と手を引き上げて、キラキラする水滴を払ったジェイド先輩は、相変わらず眉毛をハの字にしてこう言った。
「貴女は、自分の世界のことを思い返すとき、すぐに心此処に在らずの表情になります。正直に申し上げて、僕はそれが好きではありません。」
「へ、」
「貴女の記憶が全て無くなればいいのに、とすら思ってしまう。…けれどそれは…そんなことをすれば、貴女が貴女でなくなってしまうから…それすらも、」
すっかり水気がなくなった、ひんやりとしたその手で、先輩は私の頬を撫でて弄ぶ。
「僕が、塗り替えてしまいたい。」
「…故郷の体験の記憶は忘れられないけれど、私の中のほとんどは、もうこちらの世界で…ジェイド先輩で、いっぱいです。」
「そうだと、いいのですが。」
「先輩と見たい景色も、やりたいことも、たくさんあります。でもそれは多分、私の記憶があるからこそだから。…未来を見るために、必要なものです。」
先輩の手が私の頬で温められて。
私の頬が冷たくなる。
こんな些細なことでも、二人でしか出来ないのだ。
「二人いるからできることは、沢山あります。」
「…ふ…貴女には教えられてばかりです。」
「逆です。もらってばかりなのは、私。」
「なるほど、お互い様であればこれ以上のことはありませんね。」
「随分前から、ジェイド先輩がいるこの世界が、私の世界で、現実ですから。」
そこまで言うと、先輩はやっとの事で満足したように笑った。
「では貴女は、この現実で何がしたいですか?」
「先輩と二人なら何をしても楽しいから…あっでも、」
頭に浮かんだ景色を。
陸の生き物の私と、海で育ったジェイド先輩にぴったりかもしれないと声に乗せた。
「先輩と、オーロラを見たいです。」
「オーロラ?理由を伺っても?」
「オーロラは、天上の波みたいなんですよ。」
「ああ、確かに…」
「キラキラして…色が変わって…寄せては返す白波。陸で、海を味わうの。いつか、ここで、見たいです。ジェイド先輩と。」
未来をたくさん。ジェイド先輩と。
今はまだ見えぬ星に、願いを。
あなたとふたり、いつまでも。