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グリムが見て見ぬふりをしてくれるのと、アズール先輩の魔法のアロマのおかげで、たまの逢瀬をオンボロ寮でも夜を共に過ごすことが増えてきた、とある冬の日。
夜明けとともに目を開ける私は、起き抜けに、そのアロマが燻っていることを確認するのが癖になっていた。
***
『あろま?』
『そうです。このアロマを燻らせておけば、防音効果も幻覚効果も部屋に蔓延させることができるんです。それに空気に霧散してしまうので痕跡が残らない。つまり誰にも、ばれません。』
『すごい!アズール先輩が作ったんですか?』
『ええ!称賛していいですよ!』
『本当にすごいです…!それにとってもいい香り…』
『…ほかには?』
『ふぇ?』
『…僕は…貴女と、一緒にいられる場所が増やしたい、その一心で、研究開発したのですが。』
『…!っ、そ、れは、あの』
『その点を踏まえると、どうです?』
***
過去にされたやり取りが思い出され、自然と頬が熱くなる。
アズール先輩の手腕は信じているけれど、その日は気が気じゃなかった。
普段は淡泊そうに見えるアズール先輩なのに、たまに盛ると骨の髄まで愛されつくしてしまうから、嬉しい反面、恥ずかしくて。
それからグリムに聞こえたらどうしようと。
察しているとは思うけど、グリムがこういうことをどこまで理解しているのかも怪しくて、もしもわかっていないのなら、知られるのもちょっとどうかなと考えてのことだ。
「ほーんと、すごいんだなぁ…」
こんなものが元の世界にもあったら、ラブホ業界は崩壊待ったなしだなぁ、と苦笑が漏れた。
上体を起こしたまま、隣で眠るアズール先輩の指にちょいと触れる。
「告白するとね、こうしてアズール先輩に触れられるのは、心から幸せです。それから、触れてもらえるのも。だから、このアロマを見せられたとき、とっても嬉しかったです。」
急ぎ足で過行く一日、一週間、一か月、そして一年。その一瞬一瞬を大切に思えることは、好きな人と過ごせることは、なんと素晴らしいんだろう。
いつか迎える終わりまで、ずっと一緒にいたいと願うことは、もしかしたら。
「…欲深すぎるかもしれませんね。」
その言葉を呟いた途端、弄んでいた指が柔く絡めとられて驚き、身体を隠していたシーツをハラリと落としてしまった。
「もっと、欲深くなってもらわないといけません。」
「…!起きてたんですか!?」
「さすがに触れられたら起きますよ。」
「ごめんなさい、眠っているところを、私、」
「謝る必要はありません。いつか言ったでしょう?もっと触れてほしい。あれは本心なので。…でないと僕だけ欲しがりみたいで、嫌なのかと勘繰ってしまう。」
「!?」
「今だって、不安ですよ?…無理矢理抱いたとは、思いたくありません。」
私に絡められていた指が、ツ、と手の甲から腕へ、それから腰へ。辿り着いた先は腹。
そこで何かを見つけたようで、ぐっと指が肌に沈んだ。
「ンッ…!」
「僕がつけた、痕。」
「あず、せんぱい、」
「…はぁ、…目は口ほどにものをいう…っですね!」
「ひぁ!?」
そのまま腰に巻き付いてきた腕に引き寄せられて、バランスを崩した私は、アズール先輩の真上に倒れこんでしまう。
瞬間、胸の当たりで空気が擦れた。
「わ!わ!ごめんなさっ…ァ!」
「ン、ッ、」
「ゃ…、ン、せんぱ、」
そのままそこに口付けられたと気付いて身体が疼いた。
唇を外したらペロリと肌を舐めて、ふふっと笑った先輩は、私の下からひょこりと顔を出して目を細めた。
「欲しがったのは、貴女です。」
「そんなっ…!だ、だめっ、だって、アロマが、」
「僕が作ったものが、そんな短時間で消えるわけないでしょう?」
「で、でも、」
「全く…。貴女が信じなくても、消えないのは本当のことなので、このままシますからね。」
「なっ!?ど、どうして、」
「どうして?そんなの単純明快。貴女が寂しがりだから。」
そう言って、先輩はひどく優しい手つきで私の頬を撫でた。驚いて見開いた目には、きっと涙が膜を張ってしまっているから、もう嘘はつけない。
「…いつも、もらって、ばっかりです…」
「そうですか?それなら、これから対価をたくさん頂かなければいけませんね。」
「私に、何ができますか…?」
「そうですねぇ、」
考える素振りをする先輩だけど、それはきっとパフォーマンスだ。
ふ、と口角をあげて、先輩は私の耳に囁いた。
「僕の手を、離さないこと。一生、ね。」
それは。
なんて幸せな対価。
そうして再び絡められた指は、解かれないままシーツの上に落ちた。
夜明けとともに目を開ける私は、起き抜けに、そのアロマが燻っていることを確認するのが癖になっていた。
***
『あろま?』
『そうです。このアロマを燻らせておけば、防音効果も幻覚効果も部屋に蔓延させることができるんです。それに空気に霧散してしまうので痕跡が残らない。つまり誰にも、ばれません。』
『すごい!アズール先輩が作ったんですか?』
『ええ!称賛していいですよ!』
『本当にすごいです…!それにとってもいい香り…』
『…ほかには?』
『ふぇ?』
『…僕は…貴女と、一緒にいられる場所が増やしたい、その一心で、研究開発したのですが。』
『…!っ、そ、れは、あの』
『その点を踏まえると、どうです?』
***
過去にされたやり取りが思い出され、自然と頬が熱くなる。
アズール先輩の手腕は信じているけれど、その日は気が気じゃなかった。
普段は淡泊そうに見えるアズール先輩なのに、たまに盛ると骨の髄まで愛されつくしてしまうから、嬉しい反面、恥ずかしくて。
それからグリムに聞こえたらどうしようと。
察しているとは思うけど、グリムがこういうことをどこまで理解しているのかも怪しくて、もしもわかっていないのなら、知られるのもちょっとどうかなと考えてのことだ。
「ほーんと、すごいんだなぁ…」
こんなものが元の世界にもあったら、ラブホ業界は崩壊待ったなしだなぁ、と苦笑が漏れた。
上体を起こしたまま、隣で眠るアズール先輩の指にちょいと触れる。
「告白するとね、こうしてアズール先輩に触れられるのは、心から幸せです。それから、触れてもらえるのも。だから、このアロマを見せられたとき、とっても嬉しかったです。」
急ぎ足で過行く一日、一週間、一か月、そして一年。その一瞬一瞬を大切に思えることは、好きな人と過ごせることは、なんと素晴らしいんだろう。
いつか迎える終わりまで、ずっと一緒にいたいと願うことは、もしかしたら。
「…欲深すぎるかもしれませんね。」
その言葉を呟いた途端、弄んでいた指が柔く絡めとられて驚き、身体を隠していたシーツをハラリと落としてしまった。
「もっと、欲深くなってもらわないといけません。」
「…!起きてたんですか!?」
「さすがに触れられたら起きますよ。」
「ごめんなさい、眠っているところを、私、」
「謝る必要はありません。いつか言ったでしょう?もっと触れてほしい。あれは本心なので。…でないと僕だけ欲しがりみたいで、嫌なのかと勘繰ってしまう。」
「!?」
「今だって、不安ですよ?…無理矢理抱いたとは、思いたくありません。」
私に絡められていた指が、ツ、と手の甲から腕へ、それから腰へ。辿り着いた先は腹。
そこで何かを見つけたようで、ぐっと指が肌に沈んだ。
「ンッ…!」
「僕がつけた、痕。」
「あず、せんぱい、」
「…はぁ、…目は口ほどにものをいう…っですね!」
「ひぁ!?」
そのまま腰に巻き付いてきた腕に引き寄せられて、バランスを崩した私は、アズール先輩の真上に倒れこんでしまう。
瞬間、胸の当たりで空気が擦れた。
「わ!わ!ごめんなさっ…ァ!」
「ン、ッ、」
「ゃ…、ン、せんぱ、」
そのままそこに口付けられたと気付いて身体が疼いた。
唇を外したらペロリと肌を舐めて、ふふっと笑った先輩は、私の下からひょこりと顔を出して目を細めた。
「欲しがったのは、貴女です。」
「そんなっ…!だ、だめっ、だって、アロマが、」
「僕が作ったものが、そんな短時間で消えるわけないでしょう?」
「で、でも、」
「全く…。貴女が信じなくても、消えないのは本当のことなので、このままシますからね。」
「なっ!?ど、どうして、」
「どうして?そんなの単純明快。貴女が寂しがりだから。」
そう言って、先輩はひどく優しい手つきで私の頬を撫でた。驚いて見開いた目には、きっと涙が膜を張ってしまっているから、もう嘘はつけない。
「…いつも、もらって、ばっかりです…」
「そうですか?それなら、これから対価をたくさん頂かなければいけませんね。」
「私に、何ができますか…?」
「そうですねぇ、」
考える素振りをする先輩だけど、それはきっとパフォーマンスだ。
ふ、と口角をあげて、先輩は私の耳に囁いた。
「僕の手を、離さないこと。一生、ね。」
それは。
なんて幸せな対価。
そうして再び絡められた指は、解かれないままシーツの上に落ちた。